『シェイプ・オブ・ウォーター』。

ラヴクラフト的かつ異類婚姻譚的で興味があり公開後すぐ映画館へ(以下若干ネタバレもあり)。
1962年のボルチモア、冷戦時代が舞台ということで、緊張感のある背景とレトロな空気が、非現実的な設定とマッチしていて雰囲気がいい。ちょっとディストピアぽくもある。物語は設定から何からとても少女漫画的!(秋田書店系ね。プリンセスGOLDでこういうマンガ読んだことあるぞ、っていうかそのマンガの記憶から見に行ったとも言える。)いい人は誰も死なないし。私は「オペラ座の怪人」でヒロインは怪人について行くべき、と思うタイプなので、満足。
そして絶え間なく現れる「水」のモチーフ。水がエロいと言ったのは誰だったか。
ファンタジーとスリルとエロスとユーモア、そして人情のバランスがいい。
ヒロイン・サリー・ホーキンス はあまり美しくも若くもないのだけれど、不思議なリアリティがあって力強く、なんとも印象的で心に残る。妄想女子だしね。服装とかが徐々に赤の色彩を帯びていくのもいい。異形の存在は・・・異形ではあるものの、実は結構美しいのが、ちょっと残念。
本質的に異形の存在の肯定が、日常の異質さをも肯定する(つまり否定する人々も多く出て来る)。そもそも異質を誰が定義するのか、その境い目はどこにあるのか、「まとも」とは何なのか。「夜の夢こそまこと」な世界で、仄暗い水に沈む二人は天に昇っていくようでもある。
深読みしていろいろ解釈は出来るけれど、変に人権、とか女性性、とか語られたくないなぁと思う。私は美女と野獣も好きだ。
いかんせん閉所恐怖症気味のため、呼吸が苦しくなっちゃったりはしたw
そしてR15対策?はさすがにマヌケなのと、ラスト近くのヒロイン妄想はアメリカ的というかなんというかだったけれど。

とはいえかなり好みで、本も買いました。500p越えで、登場人物の背景や心情が書き込まれていて、良ノベライズかと。
この作品に惹かれるのはなんとなく、心の中に秘めた思いというか、趣味嗜好の世界への耽溺(ラヴクラフト的な。閉じられた世界)……という気がしていたのと、あまりにもマンガ的だなと思っていたのだけど、私が思う以上に世の中にそういう趣味の人が多いのか、そしてマンガ的分かりやすさがよかったのか。……なにはともあれすごい。

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