「​津波の​​霊たち 3・11 死と生の物語」

震災後の人々を取材したルポルタージュ。
タイトルの「霊」は直接的な意味でもあり、また、この本を通じて伝わる日本人の心理的特性に対するメタファでもあるだろう。そういう意味で「霊」という単語だけで嫌悪感を持たずぜひ読んでほしいと思う一冊。(私自身は霊を否定も肯定もしていない。そういうものもあるかもしれないし、
心理的な現象を霊という言葉で表現することもあるだろう、とも思う)
筆者は長年日本に暮らすイギリス人​記者。イギリス人​ということもあってか、「霊」や霊的なものにあまり抵抗がなく感じられ、そのことは未曾有の大災害に遭遇した後の日本人の心理状態を読み解くのに役立っている。
印象に残るのは末尾に出てくる日本人僧侶(除霊師でもある)の物語。表立っては語られないだろうがあの経験をした人が抱える人々の心の救いとなっただろう。
また、この本は霊的なことに終始しているわけでは決して無い。大川小での対応、そして保護者たちの心理状態についても詳細に読み解いている。
​そして読み終わると同時に、大川小津波訴訟 において
石巻市が上告というニュースを聞いた。まだ終わっていない。
※余談だがこの本の訳(濱野 大道氏)はかなりいいと思う。情緒的過ぎず、事務的すぎず。amazonで訳者検索したところどれも評価が高いのは訳者によるところも大きいのではないだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?