「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ

映画化もされてますが、先日舞台で観たのでおっかけで読んでみた(ネタバレします)
どこか村上春樹を思わせると思ったら、この二人仲良し・・・というかお互いに好感を持ってるらしいですね。道理でこちらも苦手だよ。

カズオ・イシグロといえば「日の名残り」という私、この作品にはびっくり。ノスタルジックな英国的イメージの方が、近未来SF書かれているんですもん。だからなのか、先に舞台を観たからなのか、かなりすんなり読めました。ただ、どこか初秋を思わせる筆致と世界観は変わらず。この人の作品には秋冬に読んだら唐突に寒い海に一人で行きたくなるだろうなという虚無感があります。
もっのすごく簡単にいえば臓器提供のためのクローン人間の技術が一般的になっている世界での、クローン人間たちの側の、また、クローン人間を守ろうとする側の世界を描いている。「提供」は当然として育てられるクローン、クローンには「感情」などもないものと思いたい世界。結局世界は大きなうねりのもとに変わることはなく、ただ粛々と「その日」がくるまで生きるしかない。もしかしたら私達の生きる世界も、人生もそうなのかもしれない、それでも、と。この諦観はどこか私の生き方にも似て、好きにはなれないけど心には残る作品なのでした。←ちょっと文体を意識してみた

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