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『ラビット・ホール』について

20230409〜0425 PARCO劇場
他 秋田福岡大阪
0423マチネを観てきました。

最近舞台が見られてない……成河さんがPARCO劇場にいる。宮澤エマさんが主演?藤田さん演出だしシルビアさんもいる。期待できそう、と思い出掛けてきました。すごかった。
面白い話ではないのです。4歳の息子を事故で亡くしてしまった夫婦(宮澤さんと成河さん)・11年前に息子を失った母(シルビアさん)・新しい命を授かった妹(土井ケイトさん)・事故のいわゆる加害者の高校生(本日は山﨑光さん)という5人だけの会話劇。シンプルなんですが、レベルが高すぎる。

オープニングで青いボールが上からゆっくり降りてきて、途中で止まってぽとんと落ちます。転がって止まったところで階段を降りてくるベッカ宮澤さん。開演前はむき出しの二階建てセットが、冒頭では上半分がおおわれ隠されています。この辺りもとても面白い。
家族の会話劇なので、遠慮がなかったりシリアスな中にも笑いがあったり洒落にならない瞬間が垣間見えたりと。しかもクオリティが高く観ている側が引く瞬間がまるでない。なんだこれ。

悲しみによってすれ違ったり分かり合えなかったりした夫婦が、何とかなるかな……と思い始めるまでのお話ですが、悲しみって難しい。喜怒哀楽の中でこれほどに人によって表し方が違うものはないのかも。ベッカもハウイーも深く悲しんでいるのに、お互いの悲しみについては理解できないし理解してもらえないことに苛立ったり。お母さんも妹も悲しいはずなのに恐らく「もっと悲しい人がいる」から夫婦の前では出していない。代わりに母は自分の経験した悲しみを伝え、もっと娘を苛立たせる。うまくいかない。結局その時にはどうしようもなくて、耐えて耐えているうちに、ふっと少しだけ小さくなっていることに気づくものなのかなあ。決して軽くはならないけど、身動きできないくらいに重く大きかったものが、いつの日にか重いけれど(それこそレンガのように)持って歩けるようになっている。高校生と会えるようになり、友人に電話ができ、友人の娘さんに誕生日プレゼントを買いに行き、バーベキューが出来るようになる。それから?はまた考えていく。ラストシーンの夫婦が手を繋ぎ、その手を握り直しながらぎゅっと力を込める様子が静かで強くてでもまだ不安そうで本当によかったです。

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