『Shakespeare's R&J ~シェイクスピアのロミオとジュリエット~』について

20180119〜0204 シアタートラム

シアタートラムは、同じ三軒茶屋にあるお隣のパブリックシアターの1/3くらいのキャパの劇場です。客席の作り方をだいぶ自由にできる様子で、基本はふつうの劇場型なんですけど1回だけ座席を全て取っ払った形式のものを見た記憶があります(観客は入り口で箱をもらってそれに座る)
そんな感じで、かつサイズがあまり大きくもないため、トラムで観る作品はわりと客席通路を使う演出が多い気がします。あと、休憩を入れるものがあんまりない。外観やロビーも含めすべてが劇場という雰囲気があるので空間にぎゅっと押し込めて体感させられます。もちろんそうでない演目もたくさんあるんでしょうが、わりと観に行くものにそういう感じが多いです。矢崎さん出演で言ったら「女中たち」もですね。見せるための舞台というより、覗き見をさせる舞台という方がしっくりきます。

劇場の思い出になったのは、内容もクオリティもたいへんトラムっぽい公演だったと感じたからです。これくらい小さい劇場なら、どこに座っても演者の仕草が分かる。気づき、緊張感を共有できる。

*以下、観てないときっと何のことか分からないであろう雑感。ところどころ敬称略(どころか表記ぶれ)

矢崎広の演じるところの学生1の主人公ヅラが板についている。これはロミオ役しか出来ないなと思わせられる。ハムレットならハムレット役、マクベスならマクベス役しかできない。

役者じゃなくあくまで学生が演じるので、感情から台詞が出てくる訳ではない。台詞を読んでいるうちに、感情の方がついてくる。これをさせるにはシェイクスピアくらいの言葉に力がある演目でないといけなかった。言ってるうちに気持ちよくなってきちゃったんだね〜ていうのが分かります。

ロミオとジュリエットなのに、そこはかとなく性のにおいがするのも演じるのが学生だから。ただ美しくきれいにやる気がない(あるんだろうけど、エネルギーが滲み出てしまう)
あとは多分柳下大のせい。トモをここに配役するのが分かりすぎててちょっとやだ。ありがとうございました。トモは矢崎さんと見つめ合う時にいつも泣きそう。震えて目が潤んでいる。おかげで矢崎さんのじんわり強者感が強まるよね。ここで矢崎さんに含むものが感じられたら話は変わってくるんだろうけど、矢崎学生にはそれがない。真っ直ぐに迷いがない。だから、何を考えているのかが分からなくてちょっと怖いんです。矢崎さんのマジ顔がちょいちょい出てくるんですけど、結構怖いからな……。

なんにせよ、ロミオに優しい世界。邪魔者だったマキュ(学生3)とティボルト(学生4)はいなくなった。でもまだ乳母も母親も神父もいて世界を2人きりにすることは出来なかったので、最終的にはジュリエットを道連れ。「良かれと思って」ぜんぶこれ。これが通用するのが主人公。トモ学生の、友愛も恋愛も全て矢崎学生へ。ロミオに選ばれたなら、応えるしか道はない(ジュリエット登場前に、赤い布をトモの足元に放るのも矢崎さん)
ジュリエットとキャピュレット夫人のシーンで下手に矢崎、上手に佐野で舞台中央を見てるんですけど、ロミオの顔をしている矢崎と学生4の顔をしている佐野さんが対照的。学生1とロミオの境目が曖昧すぎる。べつに、トモに完全なる恋心を抱いて思い悩んでた訳ではないと思うんですよね。あっても「そばにいてくれたらいいな」くらいじゃない? むしろ、「そばにいてくれ〝ても〟いいな」かも。無自覚の傲慢さが垣間見える。

お話が進むほどに、トモの感情が増幅させられていくのと反して感情が落ち着いてくるのは小川さん。ピークは結婚式で、終盤のモップシーンは学生1へ対しての感情からとは(つまり嫉妬とは)別のところから来ているような気もします。

「ジュリエット」だったら仮死状態なので知らないけど、学生2は仮死状態の振りだから、死んでないから、学生1の嘆きや独白を全部すぐそばで聞いている。ロミオなら服毒自殺したけど、矢崎さんは死んでいる振りだから彼女(彼?)が後追いするまでの流れを全て把握してる。この辺りのズレが醍醐味。

たとえばこれが2日くらいの出来事ではなく、1週間かそれ以上に渡って少しずつ進められたお芝居だとしたら? 「よかった、朝だ!」が学生3と4のものに思えます。続けるうちに朝が待ち遠しくなったか、終われるか心配になったか。
「カーテンコールで拍手を受けたら舞台を終演させなければいけない」と柿喰う客で観た『天邪鬼』でいってましたけど、『俺を縛れ!』でも「お辞儀をして、顔を上げたら(キャラクターは)死んでいる」とありましたけど、それを言うならこの場合は読み合わせている本が終わっても簡単には終われないよね。まあでも、結局のところ、一番引きずっているようで最終的に「きのう、夢を見た」とさっさと片付けるのは学生1だと思います。なんと勝手な話だ。

劇中劇や見立てなど舞台のお約束がたくさんなので、あるていど観劇慣れをしている方がより楽しめるかなという気はします。なきゃダメというより、あるに越したことはない、くらいですけど。

#2018観劇 #シェイクスピアのロミオとジュリエット #シアタートラム #矢崎広

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?