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宝塚で学ぶ世界史〜雪組公演「ライラックの夢路」編〜

こんにちは!!!
絶賛公演中の雪組公演「ライラックの夢路」
ツッコミどころはありつつも、世界史好きとしては、刺さるワードが多くて面白かった作品。
…なんて偉そうに言いつつ実際は

「さきあやコンビ最高にお似合い!美!
ドロイゼン家の兄弟たちのキャラ付け最高!
ツークンフト製鉄所ってアイドル事務所?
かっこいいかわいいかっこいいかわいい…」

とかなんとか言いながら頭からっぽで楽しんでる部分が大きいし、それが正解な気はしつつ。
作品世界とその背景にある歴史まで、真面目に深く掘り下げるタカラジェンヌの心を知った方が楽しめるんじゃないかとも思うので(?)
今回も宝塚で学ぶ歴史、まとめてみまーす!

「ドロイゼン家は、プロイセン王国のユンカー(騎士領所有の貴族)」
世界史やってなかったらもうこの時点で多分、頭ハテナなんじゃ、と思います。
私は歴史好きなヅカオタってだけでプロでもなんでもないので、間違ってたらごめんなさい!ですが、つらつら書いてみまーす!

国ってどうやって発展するの?

今のドイツがある場所は、18世紀くらいまで小さい国が沢山ありました。その中で力を持ってたのが1701年に建国されたプロイセン王国。
国の近代化はどの国も大体、下に書いたような感じで進みます。(同時進行で進んでいる国とかももちろんありますが。)

絶対王政(王様が1番偉い!)

市民革命(国民が国を作るんだ!)

産業革命(鉄だ!機械だ!大量生産だ!)
女性運動(女性にも自由を!権利を!)

帝国主義(大量生産した物を売る人がいないなぁ…よし植民地取りに行こう!戦争だ!)


なので、やはり早くに市民革命終わらせた国は、その後の世界史において、強いです。
ここからは「ライラックの夢路」に関係してそうな年号に沿ってヨーロッパの歴史を辿っていきましょう!

1760年代 イギリスで産業革命が始まる
17世紀に既に、絶対王政を終わらせ市民革命を完了させたイギリスが、18世紀後半、世界に先駆けてトップバッターで産業革命!「世界の工場・イギリス」の登場です。
工場制手工業(マニュファクチュア)から工場制機械工業への転換。
つまり、今まで手でやってた仕事を、鉄で作った機械でやるぞ!石炭使って蒸気機関車走らせるぞ!って革命です。
♪人の手から〜機械へ〜
♪物を作り〜運ぶ〜
♪てーーーーーつーーーーー
これによって、大量生産が可能になりますね。

1789年 フランス革命
お隣の国・フランスで、ヅカオタならみんな知ってる市民革命が起こります。
自由・平等・友愛を旗印に雄々しくも立ち上がり、国王ではなく国民が治める国を作ります。
そしてこのフランス革命を横目に、ヨーロッパ各国も影響を受けていくのです。

1804年 ナポレオンが皇帝になる
フランス革命の後、ナポレオンが強大な力を持ち、もの凄いスピードでヨーロッパを征服していきます。多くの国がナポレオンの手に落ち、ナポレオン帝国(フランス)の物になってしまったので、元々あった国境も民族もぐちゃぐちゃです。
これじゃマズイ!!!これまでのように、のほほんと暮らしていたら他の国にやられてしまうぞ!!!我ら団結するのだ!
劇中でもハインドリヒ(彩風咲奈)が言ってるように、ナポレオンの出現は、ヨーロッパの各国に民族意識を目覚めさせます。

1814年 ウィーン会議
これは、ナポレオン失脚後に、ぐちゃぐちゃになった国境を引き直しましょう!という、ナポレオン戦争の後始末会議です。
小さな国ばかりが集まっていた現ドイツの場所も「ここからここまでが1つだよ、ドイツ連邦って名前にしようね」と決まります。
ここで決まった体制をウィーン体制といいます。 

上の地図、ちょっと情報が多くて見にくいんですが…こんな感じで、ナポレオン失脚後のヨーロッパは分割されました。
地図の真ん中あたり、黄緑色のところがプロイセン王国です。首都はベルリン。(だから、官僚秘書の四男ランドルフ(一禾あお)はベルリンにいる。)

ちなみにプロイセン王国の少し南にある青い©️マークの所がザクセンです。
エリーゼ(夢白あや)が「父はザクセンから移り住んできたから大変だった。幼馴染のアントン(縣千)も未だに職にありつけない。」と言ってましたよね。プロイセンに比べたらかなり小さな国出身…苦労しただろうなぁ。

主人公たちの年齢はわからないけど、このくらいで産まれてそう。
まだ子どもだけど、長男ハインドリヒ(彩風咲奈)次男フランツ(朝美絢)三男ゲオルグ(和希そら)あたりは、世界が動いてるのを肌で感じてたかも?
小さい3人を想像したら…可愛すぎる。

1815年 ドイツ連邦が成立
ドイツがついに1つになった…ように思えますが、実際は全然違います。
35の君主国と4の自由都市に分かれていて、それぞれに「国」を作っていました。言語も物の考え方も単位もさまざまです。
イメージ的には江戸時代かな。日本も薩摩藩やら会津藩っていう小さな国があってそれぞれに国を作ってたけど、あんな感じです!

ドロイゼン家のあるプロイセン王国は、その中でもかなり大きくて力のある王国でした。
ただ、王様はあんまり何もしません。ドロイゼン家のような、ユンカー(騎士領所有の貴族)と呼ばれる支配階級たちが、それぞれの土地にいて、自分のやり方で治めています。
沢山の土地を持ち、そこで大農場を経営し、そこに住む人々を管理するのです。
言わば、田舎を支配してブイブイ言わせてる田舎貴族ですが、自分の領地内での権力はめちゃくちゃでかい。誰も逆らえません。それを利用して悪事を働くユンカーもいたようですが、、、
ハインドリヒ(彩風咲奈)たちはドロイゼン家の誇りを胸に、自分の治める土地や国民を守ろうとしたわけです。
それは、農民たち(霧乃あさと、莉奈くるみ、麻花すわん)がクルト(聖海由侑)に連れられ、「冷害で作物がとれなかったから、冬の仕事がなければ飢え死にです」と訴える場面でもわかりますね。
鉄道産業を興すことは、ハインドリヒたちの夢でもあるけれど、それは冬の間の仕事を与えることで、国や民を守り豊かにするユンカーとしての誇りある使命でもあるのです。

もうちょっとシンプルな地図で見てみるとこんな感じ。

©︎世界の歴史まっぷ

プロイセン王国の領土がかなり広いことと、領土が西と東で分かれていること、そしてライン川の場所がポイントです!!
ユンカーと呼ばれる支配階級がいたのはエルベ川より東側なので、ドロイゼン家があるのは、多分ベルリンより少し東側…下の地図の「★」の所あたりかなぁ?なんて思ってますがどうでしょう。

1834年 ドイツ関税同盟成立

未来の道しるべ、関税同盟がついに成立したぞ!
新しい夜明けだ!!!はじまりの一歩だ!
♪関税同盟、今、結ばれた〜!!!
めでたしめでたしの、この同盟については次項でまとめさせてくださいませ!
ジャーナリストのアイヒタール(諏訪さき)シンケル(桜路薫)たちは何を言ってるの?と思ってた皆さん!ここからですよ!!

ドイツ関税同盟の必要性

舞台終盤、超お祝いムード満載の関税同盟成立。
この関税同盟のお話が最初に出てくるのは、ジャーナリストのアイヒタール(諏訪さき)シンケル(桜路薫)が、フリードリッヒ・リスト先生(柚香光さんが演じた音楽家フランツ・リストとはもちろん別人で、実在の偉い人!)のお手紙を持ってくるところです。
ここで言われてる自由貿易と保護貿易の違いはこんな感じ。

ドイツ連邦では、小さな王国それぞれが関税をかけた、保護貿易をしていました。
プロイセン王国は東西に分かれていたので厄介でした。
プロイセンが所有する「ライン川」というのはドイツにとってかなり大事な川です。船で物を運べるから物流の中心でもあるし、ルール炭田という石炭がとれる場所があるし、鉄鉱石までとれる最強の川なのです。

特に石炭は鉄道業を興す上で絶対に必要な物!
それがせっかくプロイセン国内のルール炭田(下の地図の青い渦巻き)でとれるのに、首都ベルリンやドロイゼン家のあたりまで船で持ってくるのに、かなりの国を経由しないといけないのがわかりますか?

これが何で問題かというと、それぞれ異なる関税がかかっちゃうのです。シンケル(桜路薫)が洋服を例に出してどうのこうの言ってるのは、下の図のようなことが起こるってことです。

これでは、せっかくとれた石炭などの材料も、洋服も、国を経由するごとに高くなってしまう!
せっかく鉄道を完成させたとしても、運ぶ物が全部高くなってしまう上に、関税をかける手続きによって時間もかかる!
国内関税があるままだと、いくら頑張って鉄道産業を興しても、ハインドリヒ(彩風咲奈)が重要視する「スピードが大切!」も、目指している「ドイツ国民の生活向上」も叶わないわけです。
だから、「関税同盟と鉄道産業は双子」なのです。両方いっぺんにやらなきゃ意味がない!

しかも、この状態から更に悪くなる。ハインドリヒ(彩風咲奈)が言っているように、産業革命を達成したイギリスから、大量生産された「中品質低価格な商品」がやってきてしまうのです。

貧しいドイツ国民は、そりゃあ安いイギリスの物を買いますよね?
これではプロイセンもザクセンもバイエルンも…共倒れです。ドイツ国内で争っている場合ではない!ドイツ国内の関税をやめましょう!というのが関税同盟です。
関税同盟が達成するとこうなります↓

保護貿易にするとみんな「安めで品質の良い」自国の物を買うようになるので、自分の国の産業を守れるわけです。自国の産業を守れると、自分の国がどんどん豊かになります。
ハインドリヒ(彩風咲奈)が目指していた「人々の心の幸せ」が実現に近づくのです。
この関税同盟を足がかりにドイツは成長していったわけですね!!!
そして、ドロイゼン家のようなユンカーたちがお金を出し、鉄道を完成させたのです!
関税同盟と鉄道産業によって、人が繋がり、ドイツの人々の心はひとつになっていく。

そう考えると、アントン(縣千)を中心とした鉄職人たちの歌の高揚感!めちゃくちゃ良いよね!
ものづくりに命かける人たちが、物を通して豊かな人を作り、豊かな国を作っていく感じ!時代を変えるワクワク!!!
♪完成したものは自分を映す
♪だからものづくりは人を作るのさ

そして、エリーゼ(夢白あや)が手に職を持ち、女性ながらに自己実現しようとする側面を見せているのも、この時代ならではなのかも。
産業革命と共に、女性の社会進出も進んでいくことを表しているんだろうなぁと思います!

しかしその先の歴史を追うと、戦争の足音もあり…。
(ランドルフ(一禾あお)のセリフの中に少しこのあたりが示唆されていますね。)
ドイツは1914年の第一次世界大戦にボロ負けし、やがてはナチスやヒトラーの出現、第二次世界大戦へと進んでいきます。
その中でドロイゼン家がどのように誇りを持って生きていったのか…。
1914年というと、1番若い18歳のアントン(縣千)でさえ100歳近くなってるから、劇中出てきた人たちは生きてないだろうけど、ハインドリヒ(彩風咲奈)とエリーゼ(夢白あや)の子どもとか…。
ふと(誰もそんなことまで考えてほしいと思っていないだろうことに)思いを馳せる歴史オタクでした。

ここまでお付き合いくださった物好きな方々!ありがとうございました!笑
それではみなさんご一緒に。
てーーーーーつーーーーー!!!!!


以下、地図を引用させて頂いたサイト。
ありがとうございました!

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