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ブエルタ・ア・エスパーニャ2022 第11ステージ

第3ステージ以来、集団スプリントが期待できるフラットレイアウト。ほぼ邪魔するもののないステージの中で、しかし思わぬアクシデントもあり・・・。


さすがに逃げ切りが許されることはないレイアウトということもあり、プロチームのみで構成された3名の逃げが形成される。

イェツ・ボル(ブルゴスBH)
ヴォイチェッヒ・レパ(エキッポ・ケルンファルマ)
ジョアン・ボウ(エウスカルテル・エウスカディ)

プロトンも2~3分程度しかタイム差を許さず、万が一にでも逃げ切りがないようによくコントロールされていた。

そのまま、何事もなくフィニッシュにまで辿り着くのか? と思っていた中で、残り63.8㎞。集団の中でジュリアン・アラフィリップが落車。そして右肩を抑えたまま動けず、痛みを訴える。

右肩の脱臼。これで、アラフィリップは即時リタイア。3連覇のかかる世界選手権に向けて不透明な状況に。そして、総合優勝を目指すレムコ・エヴェネプールにとっても、ピーター・セリーに続く2人目のチームメートの離脱。とくにアラフィリップはここまでの山岳ステージで重要なお膳立てをしてくれていただけに、その喪失は大きな影響を残さざるを得ないだろう。

その後、残り51.8㎞地点で先頭3名のうちボルだけが単独で抜け出す。残り26㎞でこのボルも吸収され、残りは逃げの生まれないまま集団でフィニッシュへと向かうこととなった。

残り9.8㎞地点の中間スプリントポイントではマイヨ・プントスを着るマッス・ピーダスンがほぼ争うことなく先頭通過。この日のレース終了時点でのポイントは184ポイントとなり、2位のレムコ・エヴェネプール(85ポイント)に対し100ポイント近い大差をつけることとなった。

そして、大集団スプリント。

残り3.7㎞地点から集団先頭を支配し続けていたバイクエクスチェンジトレイン。先頭はローソン・クラドック、そして彼から残り2.2㎞?1.3㎞?あたりから先頭バトンタッチしたネオプロのケランド・オブライエンがひたすら先頭牽引を続けており、そのまま残り500m手前くらいまでは単独で先頭牽引を担い続けた。そしてしっかりと重要なポイントまで最終発射台のマイケル・ヘップバーンを守り続けていた。

残り300mを切って過去ブエルタ・ア・エスパーニャ通算10勝を成し遂げているジョン・デゲンコルプ(チームDSM)が不意打ち気味の早駆けを開始。一気に抜け出すが、残り175mで飛び出してきたフアン・モラノ(UAEチーム・エミレーツ)に並びたてられる。その背後にダニエル・マクレー(アルケア・サムシック)。

モラノは後ろを振り返る。どうやら、エーススプリンターのパスカル・アッカーマンを率いるつもりだったようだが、残念ながらそこにはエースの姿はない。ここにアッカーマンが食らいついていれば、確かに完璧なリードアウトになっていただろうが。

そしてこの残り175m時点でヘップバーンは仕事を終え、単独となったカーデン・グローヴスがマクレーの背後。その後ろにマッス・ピーダスン。その右隣にベルギーチャンピオンジャージのティム・メルリールがついている。

残り100m。早駆けしたデゲンコルブは失速。先頭はモラノに。だが彼も、算段が狂っており落ちるのは時間の問題。その背後にいるマクレーが最大のチャンス。

だが、この時点でグローヴスはマクレーの背後から右に飛び出してスプリントを開始。ピーダスンは失速し始めており、マクレーも最後まで足が持たず、残り75mで先頭はグローヴス、その背後にティム・メルリールと、メルリールとマクレーの間の狭い位置に体を滑り込ませたダニー・ファンポッペルが先頭に躍り出てくる。

だが、ファンポッペルもメルリールも、残り距離が足りな過ぎた。

グローヴスは先頭を譲らぬまま、自身初のグランツール勝利へのフィニッシュラインを貫いた。

年齢表記はすべて2022/12/31時点のものとなります。


チーム力が、特にラスト4㎞からのクラドック、オブライエン、ヘップバーンと続くアシストたちの尽力が、この勝利を掴み取った。同日、Covid-19陽性によりDNSとなってしまったサイモン・イェーツの無念を晴らすかのような、鮮烈な勝利であった。

ファンポッペルもエースを失ったが、元々彼自身が十分に勝利を狙えるだけのポテンシャルを持つ男。今回も、実に見事なコース取りでメルリールを最後追い抜き、2位につける素晴らしい走りを発揮してみせた。

まだまだ、「最強スプリンター対決」の行方はどうなるかわからない。

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