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手話通訳者全国統一試験2023を終えて。

今日、2023(令和5)年12月2日(土)は手話通訳者全国統一試験でした。

受験されたみなさん、お疲れさまでした。
わたしも今日、受験してきました。がんばった自分を労いたい気持ちです。

試験の余韻が残るうちに感想などをつらつらと記したいと思います。

試験は、午前の筆記試験<手話通訳者に必要な基礎知識・国語>と午後の実技試験である<場面通訳>でした。

手話通訳者に必要な基礎知識

こちらは例年通りの難易度だったように感じます。

noteで予想した頻出問題からもでていたので、例年と同じ傾向だったかと感じます。

ざっと思い出せる範囲でこのあたりは出題されていたと思います。

・四本柱の運動(民法11条改正、聴覚言語障害者総合センター設置、道路交通法改正、手話通訳の国家認定制度)
・京都盲唖院の開講による特殊教育の始まり
・手話通訳士倫理綱領
・手話通訳場面の留意事項、確認、守秘義務
・2011年、障害者基本法第3条に手話を言語として規定
・障害者自立支援法
・障害者総合支援法
・地域生活支援事業、意思疎通支援、日常生活用具の給付又は貸与
・耳の役割
・感音性難聴、伝音性難聴、混合性難聴

民法11条改正

四本柱の運動(民法11条改正、聴覚言語障害者総合センター設置、道路交通法改正、手話通訳の国家認定制度)のうち、民法11条改正について出題されました。

1986年に制定された民法第11条には「心神耗弱者、聾者、唖者、盲者及び浪費者は準禁治産者として、これに保佐人を付すことを得」とあることから、金融機関からろうあ者は住宅ローンを拒否された。ろうあ連盟の改正の運動により、1979年に民法の一部が改正され「聾者、唖者、盲者」の6文字が削除された。

手話通訳ⅡP17

京都盲唖院の開講による特殊教育の始まり

ろう教育のはじまりについて出題されました。

1878年、京都盲唖院が発足する。ろう教育はろう者と手話の歴史を前進させる大きな分岐点であった。①教育の場ができ、②ろう者同士が集まる場、コミニティもでき、③共通言語として手話が発達したことによりろう者の礎がこれにより築かれた。

手話奉仕員養成テキストp122-123

手話通訳場面の留意事項、確認、守秘義務

手話通訳業務報告書の提出内容について出題されました。

報告書は、電話や面談で先に報告した内容も簡潔にまとめ、派遣された手話通訳書が気づいたことは意見、所感として付記しておくことが大切である。これは業務報告のためであり守秘義務違反にはあたらない。

講義テキストP82

手話通訳士倫理綱領

手話通訳士倫理綱領について出題されました。

1. 手話通訳士は、すべての人々の基本的人権を尊重し、これを擁護する。
2. 手話通訳士は、専門的な技術と知識を駆使して、聴覚障害者が社会のあらゆる場面で主体的に参加できるように努める。
3. 手話通訳士は、良好な状態で業務が行えることを求め、所属する機関や団体の責任者に本綱領の遵守と理解を促し、業務の改善・向上に努める。
4. 手話通訳士は、職務上知りえた聴覚障害者及び関係者についての情報を、その意に反して第三者に提供しない。
5. 手話通訳士は、その技術と知識の向上に努める。
6. 手話通訳士は、自らの技術や知識が人権の侵害や反社会的な目的に利用される結果とならないよう、常に検証する。
7. 手話通訳士は、手話通訳制度の充実・発展及び手話通訳士養成について、その研究・実践に積極的に参加する。

講義テキストp70

障害者基本法

障害者基本法について出題されました。

・全ての障害者は、可能な限り、言語(手話を含む)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段について選択の機会の拡大が図られること
・国民の間に広く障害者の福祉についての関心と理解を深めるために、12月9日を「障害者の日」として規定した。2004年の改正で、12月3日から9日までを「障害者週間」とした。
・政府は障害者の福祉等に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者基本計画を策定しなければならないとした。

講義テキストp19

障害者自立支援法、障害者総合支援法

障害分野の新たな潮流について出題されました。

・閉塞感に満ちていた日本の障害分野にあって、新たな時代の到来を実感させたのが、2009年12月25日の閣議決定で設置された障がい者制度改革推進会議である。
・障害者自立支援法に関する違憲訴訟に伴って政府と原告団との間で交わした「基本合意文書」の存在である。

手話奉仕員養成テキストp116-117

耳の役割

耳の働きと耳の役割について出題されました。

耳で聞くことの役割はこのようになる。
①音声言語によるコミュニケーション
②様々な音により周囲の状況を把握できる
③危機を感知する
④情緒を豊かにする
⑤行動を調整する

手話奉仕員養成テキストp89

感音性難聴、伝音性難聴

感音性難聴、伝音性難聴について出題されました。

・伝音性難聴の場合は、音を内耳に伝える部分の障害のため音が小さくなってしまうが、内耳に異常がない場合は、補聴器で充分に大きな音に増幅すれば聞き取りは改善され、補聴器の装用効果がかなり高い。
・感音性難聴の場合、①小さな音が聞こえない、②話しことばの聞き取り(聞き分け)が難しい、③大きい音はうるさく感じてしまう、④聞きたい音が選び出せないの特色がある。感音性難聴では、補聴器を装用する場合、音を大きくして音として聞くことができてもことばの聞き取りが充分にできないため、補聴器の効果に限界がある。

手話奉仕員養成テキストp91-92

思い出せる範囲ではこのあたりは出題されていたと感じます。他にも、放課後等デイサービスやセカンドオピニオンについても出題されていました。

4肢択一でしたが、確実にこれはちがう選択肢だというように消去法で消していくことができても、残りの2つで迷う問題が多かった印象もあります。
また、過去問で出題されていた分野といっても過去問通りの言い回しではないのできちんと知識を習得していないと難しい問題も多かったです。
法律制定の年号や改正の年号など細かな知識を求められる難問も多かったと感じます。

国語

文章問題

「やさしい日本語」についての文章問題でした。国語は漢字や慣用句、部首、四字熟語、尊敬語、丁寧語、言葉の仕組み、恣意性などについて出題されました。

国語の要約問題については、例年の要約とかなり異なった形式で出されていたため最初は戸惑いましたが、良問だったと思います。

こちらの書籍からの出題でしょうか?(確かではないのですが・・・試験に集中していて著者まで記憶にない)

【追記】「やさしい日本語(著 庵功雄)」を図書館で借りて読んでみたのですが、今回の試験問題に記載されていた内容とは違う気もします。ただ、伝えたい内容としてはこちらの著書にも通じるところが多分にあり、こちらの本も大変参考になりました。本の中に「障害をもつ人と<やさしい日本語>」の章があり、自然言語としての日本手話/ろう児の日本語教育と<やさしい日本語>等深く考えさせられるところがありましたので、また別の機会にまとめてみたいと思います。

やさしい日本語,庵 功雄 著

文章の中身は、阪神淡路大震災にからめて、日本に滞在する外国の方にもわかりやすい「やさしい日本語」が求められるという内容でした。

要約問題は問題文ママではないのですが、このような問題でした。

<原文>今朝5時46分ごろ,兵庫県の淡路島付近を震源とするマグニチュード7.2の直下型の大きな地震があり,神戸と洲本で震度6を記録するなど,近畿地方を中心 に広い範囲で,強い揺れに見舞われました。

やさしい日本語,庵功雄 著,p37

上記の原文では、難解な回りくどい言い回しの日本語が使われており、日本に滞在している外国の方にはわかりにくい表記です。このため、「容易で」「具体的で」「簡潔な」わかりやすい文章が求められるとし、上記の原文を「やさしい日本語」に言い換えて、70〜90文字で作成するというものでした。
やさしい日本語の一例は次の通りです。

今日、朝、5時46分ごろ、兵庫、大阪、などで、とても大きい、強い地震がありました。地震の中心は、兵庫県の淡路島の近くです。地震の強さは、神戸市、 洲本市で、震度が6でした。

やさしい日本語,庵功雄 著,p37

今回の試験問題には、「余震」や「震源」をどのようにわかりやすく、優しい(易しい)日本語にするかといった日本語力が問われた良問でした。
試験の作成者に乾杯!

部首

部首は過去問ではなかった印象がありますが、今回の試験では「国籍」の「籍」の部首が問われました。

統一試験の国語の筆記試験対策に漢字検定3級の勉強をしていたときに、部首の問題に苦戦したのを思い出しました。

例えば・・・

の部首→月(肉)
の部首→
の部首→
の部首→
の部首→
の部首→
の部首→
寿
の部首→
の部首→
の部首→
の部首→

のように漢字の部首って難解です。

単純に「籍」の部首は「竹かんむり」とわかったものの、こんな簡単な問題がでるはずないと一瞬、これは引っ掛け問題ではなかろうか?と勘ぐってしまったのも事実です。

四字熟語と慣用句

四字熟語と慣用句の組み合わせで意味が逆ではない選択肢を選ぶという問題も出題されました。

「一石二鳥」ー「虻蜂取らず」
これは意味が逆の組み合わせとわかりました。

「旅の恥はかき捨て」ー「立つ鳥跡を濁さず」
これは意味が逆の組み合わせとわかりました。

「呉越同舟」ー「船頭多くして船山に登る」
これは悩んでしまった。
「呉越同舟」と「船頭多くして船山に登る」の意味は同じなのか逆の組み合わせなのか、「呉越同舟」の意味を正しく理解していないと解けない問題でした。

呉越同舟
仲の悪い者同士が一所にいる、または共通の目標で協力すること

岩波国語辞典

船頭多くして船山に登る
指図する人が多くて、統一がとれず、とんでもない方に物事が進んで行くことのたとえ

岩波国語辞典

場面通訳

午後の山場である場面通訳。
今回のテーマは、(うろ覚えですが)「消防署での防災訓練についての打ち合わせ」でした。

場面通訳はまさかまさかの2対1でした。
ここ数年、1対1での場面通訳でしたので、複数になったことで導入場面で構えてしまいました。

ストーリーを思い出せる範囲でまとめてみます。
もちろん、全部読み取れたわけでもなく、抜けや読み間違いがあると思いますのでご了承ください。

<登場人物>
聾者2人:ろう協会の防災担当者の男性(名前を忘れてしまった・・・)と女性(めぐろさん←指文字表現)
聴者1人:消防署職員の男性(まかべさん←指文字表現)

<内容>
消防署にて協会の防災担当が防災訓練の相談を行う。
協会とサークル合同で防災訓練を行いたい。
内容や日時、人数について確認したい。
◯月◯日(読み取ったはずだけどまったく記憶がない)土曜日の午後1時〜3時を予定。
30人くらい参加予定である。
時間は2時間くらいを予定しているがどうか。
時間が短い場合には1時間延長もできる。

当日はどのような訓練の内容にするかを話し合う。
AEDを使った講習はどうか提案する。
心臓マッサージを体験してもらうのはどうかと提案する。
DVDをみてもらうのはどうかと提案する。DVDには字幕がついているのか確認がある。
DVDの字幕だけでは理解しにくいろう者もいるかもしれない。
グループにわかれて、DVDをみるグループと心臓マッサージの体験をするグループの2つのグループにわかれて、交互にやるのはどうか提案する。
その方法は良いと合意する。
消防署の担当者は増やせるので対応可能である。
場所は消防署の前でよいか確認がある。
最後はよろしくお願いしますのあいさつで終わる。

私が読み取って記憶にあるのは、上記のような内容です。
体感的にはすごく長く感じました。まだ続くの??と思いながら必死で読み取っていました。
とにかく、日本語として文章になるように、読み取れた単語に集中して変換していきました。

わたしは読み取りよりも手話表現が苦手で、今更ながら反省材料が多く、まだまだ改善の余地ありまくりです。

個人的感想

とりあえず、試験終了した直後は、「やりきった」「やっと終わった」というスッキリ感と達成感がありました。
こうして改めて振り返ってみると、ミスした箇所もたくさんあって、ああこうしていればと後悔もたくさん湧いてくるのですが、とりあえず今できる精一杯を出し切ったので、結果については受け止めることにします。

結果がわかる3月まで長すぎて待たされてしまいますが、録画した動画を一人一人確認することを考えれば、そのくらいの時間がかかると思います。

手話通訳者全国統一試験の合格率は20%前後で推移していることを考えると、今年も同程度の合格率だと思います。自信があるとは到底いえませんが、たぶん、これまでの自分史上、今が最高に勉強してきたMAXだと思うので、結果は結果として粛々と受け止めたいと思います。

同じ目標に向かって、学びを深めてきた手話仲間には感謝の気持ちでいっぱいです。また、手話を指導してくださった地域のろう者の先生方、聴者の先生には厳しくも温かいご指導に感謝します。

今回の手話通訳者全国統一試験を受けるかどうか真剣に悩んだあの日、試験を諦めようと1度は思ったのも事実です。ですが、きっと縁あってここまで進んだ道。
最後にわたしの好きな名言を。

どちらを選んでも正解にできるし
どちらを選んでも不正解にもなり得るということです

成功することを目指すのではなく

後悔しないことを目指すこと
後悔しない道は勇気が必要な道

迷ったら勇気が必要な方へ

DJあおい

この道をゆけばどうなるものか、危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし、踏み出せばその一足が道となり、その一足が道となる。迷わず行けよ 行けばわかるさ。

アントニオ猪木「道」






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