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僕の作品を使って、知らない誰かが受賞していた件

小説・エッセイ・詩をはじめ、俳句・川柳・短歌などを対象に行われている文学賞。
芥川賞や直木賞のように財団や出版社が主催しているものの他に、協会、都道府県、さらには市町村が主催しているものを含めれば、大小さまざま、膨大な数の文学コンテストが全国各地で行われていますよね。

その中のひとつ、とある地方の、とある文化施設が昨年行った、とある文学賞に、誰かが僕の作品を使って応募し、しかも受賞していたことが発覚!
エライこっちゃ。
※該当の賞の名前は非公表とします。

文学コンテストの主催者のみなさん、審査員のみなさん、応募者のみなさん、今後そのどれかになるかもしれないみなさんに、こういう事態が起こりうるということをぜひ覚えておいてほしいので、このテキストを執筆しています。
ぜひ最後までご覧ください。

一字一句違わず、僕の短歌だった

もともとは、こういう事態が既に起こっているかもしれないという僕の嗅覚が働いて、事は発覚しました。

僕は、5・7・5・7・7の短歌の作家として、単行本や雑誌連載、企業広告などを通じて作品を発表してきましたが、この夏、これまでの作品をまとめた新刊を出版予定。

それにあたって、鈴掛真の短歌だと明記している引用なら良いのだけど、誰かが自分の作品であるかのように盗用してブログなんかに掲載していないかを、Google検索でチェックすることに。

仮に盗用があったとして、盗用されたのは僕の方なのに第三者が勘違いして「鈴掛が盗用してる!」と騒いだらたまったもんじゃないので、新刊の出版前に可能性の芽を摘んでおこうと思ったのです。
今って、そういう勘違いやデマがインターネットですぐ広まっちゃうから、後から対処するのも面倒でしょ?

そしたら、言わんこっちゃない。見つけてしまった。
芽どころか、しっかり花開して、受賞までしてた。
マジかよ。

それは、とある県にある、高等学校のブログ。
昨年の日付の記事に「我が校から応募した生徒の短歌が受賞しました!」という内容が、受賞作と共に記載されていました。
※該当の学校名、作品は非公表とします。該当のブログ記事は既に削除されています。

どこをどう見ても、僕が数年前に某雑誌で発表した短歌でした。
盗作って、漢字・ひらがな・カタカナをアレンジして表記を変えたり、単語を変えたり、なにかしら手が加えられているものだけど、一字一句違わず、僕の作品。
もはやコピペ。ここまでくると潔いぜ。

まずは冷静に、真偽を確かめよう

該当のコンテストについて調べてみたところ、とある地方の、とある文化施設が毎年開催していること、昨年分の賞の表彰式は既に行われたことが、運営側のWEBサイトに記載されていました。

応募には1,000円くらいの料金がかかる代わりに、受賞作と応募作が掲載された作品集の冊子が後日郵送されてくるのだそう。これ、公募型の文学コンテストにはよくある形式です。
運営側のWEBサイトでは、どんな作品で誰が受賞したかまでは記載されていなかったので、作品集を見てみないことには、盗用の事実確認ができない状況。

運営事務局に問い合わせようかとも思ったのだけど、できるだけ事を荒立てたくなかった僕は、まず該当の高校に連絡することに。

こういうときは、冷静沈着が大切。
「盗作だー!どうなっとんじゃコラーッ!!」って窓口の人に怒っても仕方ないし、なにより、僕の作品だってことをきちんと証明しないとね。

僕は以下の内容をまとめて、高校にメールを送りました。
(ここではあえてラフにしていますが、実際は正式な語調で書きました)

・初めまして。ブログ見ました!
・そちらの生徒さんの短歌が受賞したってことは間違いないすか?
・この短歌、僕が書いたものなんすよね……
・証拠として、発表時の雑誌の画像を添付
・残念ながら、盗作ってことになっちゃいますね……
・運営側にはまだ言ってないんで、学校内で確認してもらってもいいすか?

さて、真相やいかに。

盗用の謎が今、明かされる

とにかく、この学校の対応が早かった!
ものの1時間後には、教頭先生から「すぐに調べます!」とお返事をいただきました。

次の日には、学校内での調査によって、真偽がスッキリ明らかに。
教頭先生が懇切丁寧にご対応くださったおかげです。

メールに記載されていた事の真相は、こうです。

 この学校では、授業の一環として、短歌の講師を呼んで生徒が創作に挑戦し、作品を件の文学賞に応募するのが恒例となっている。
 ひとりの生徒が、創作のアイディアが浮かばず、手が進まない状況だった為、インターネットを利用したらしい。
 その際に、鈴掛さんの作品にたどり着き、そのまま書き写して提出してしまった。

ああ、やっぱりね。

もし本当に、盗作で自分の手柄にしようと思ったら、できるだけバレない工夫をするだろうけど、なんてことはない、自分の手柄にしようどころか、盗用した本人はサッパリなんにも考えてなかったわけだ。

創作の課題をとっとと終わらせたいけど、なんにも言葉が浮かばない。
でも、何か書かなきゃ課題は終わらない。
それで、WEB検索でたまたま出てきた僕の短歌をササッと書き写した。
まさか受賞するとは思わなかったんだろうね。
いや待て、それはそれで僕に失礼だけどな!

それから、きっと本人が盗用したことすら忘れていただろう頃、思いがけず受賞の知らせが。
(えっへん!ドヤッ)
さすがに焦っただろうね。でも、今更自分が書いたんじゃないって白状すると、ややこしいことになる。
最も波風立たせずに済ませちゃう方法、それは、シレッと受賞しちゃうこと。

だいたいこんな流れだったんじゃないかな。
教頭先生いわく、本人は素直に盗用を認めて、深く反省しているとのこと。

実はなんとなく、そんなようなことなんじゃないかと予想できていました。

僕も講師として、中学校の生徒に短歌を教える仕事をしていて、いつも創作の宿題を出します。
ほとんどの生徒は真面目に書いてくれるのだけど、以前、テキストのプリントに記載しておいた僕の短歌をそのまま書き写して提出してきた子がいました。
きっと今回みたいに、手っ取り早く課題を済ませたかったんでしょう。
でも、普段は温和な僕が、さすがに叱りました。
「下手くそでもいいから、自分の言葉で書きなさい」って。
そうやって、その場しのぎで色んなことから逃げる癖をつけたまま、大人になってほしくないから。

その後、教頭先生からコンテストの運営事務局に事情を説明してもらい、双方の代表から謝罪のご挨拶をいただきました。
そして双方には
・生徒に授与した賞状と楯の回収
・該当の賞が盗作のため取り消しになった旨の発表

をご対応いただきました。

その際、僕がお願いしたのが、鈴掛真の名前と、どんな短歌が盗作だったかを記載しないこと。
厳密に言えば僕の作品が評価されたってことではあるんだけど、短歌に対して「盗用された作品」っていうイメージを付けたくないし、そんなことで作品に注目が集まるのは本意じゃないからね。

文学賞の運営・応募で気をつけてほしいこと

5・7・5の俳句や川柳、5・7・5・7・7の短歌のコンテストは、全国各地で開催されています。
文字数が少ないため、応募者が取り組みやすいし、審査も短い時間で済むので、町を盛り上げるイベントとして実施しやすいことと思います。

ただ、取り組みやすいから、それだけ盗用もしやすい。
今回のような問題が、規模の大小を問わずどんな文学賞にも起こりうるのです。

しかも今回の文学賞は、表彰や応募作品集の発行があるだけで、インターネット上にはコンテストの結果が公表されていませんでした。
同じように、結果が内々でひっそりと発表されるタイプのコンテストって、意外と多いんじゃないかな。
今回はたまたま学校側がブログで表彰について書いていたので気づけたわけだけど、あのブログ記事が無かったら発覚しなかったんだなと思うと、世の中って実はもっとたくさんの盗用であふれているのかもね。

文学賞の運営事務局は、遅くとも受賞を決定する前までに、応募作に対して盗用のチェックを徹底するべきだと思います。
もちろん、悪いのは盗用した応募者であることに変わりはありませんが、盗用を見抜けないのは運営側にとって損失にしかならないからです。
例えば今回の場合、作品集を発送した全ての宛先に対して、受賞が取り消しになった旨をハガキなどで通知する必要があり、そのための配送料や人件費をドブに捨てることになります。
また、「盗作に対して賞を与えた」と、コンテストのイメージや運営事務局の信頼度を下げることになるのは言うまでもありません。

皮肉なことに、盗用のチェックにこそインターネットが活用できます。
もしもインターネットから盗用されている場合、インターネット検索でその盗用元にたどり着ける可能性もあるからです。
ちなみに、Googleなどのインターネット検索は通常、語句が完全に一致していなくても候補が表示される『部分一致』になっていますが、検索したい語句を半角の引用符で"◯◯◯"のように囲うと『完全一致』で検索できるのでおすすめです。

そして、学習の一環として生徒に創作させて文学賞に応募しようとお考えの学校も多いことと思います。
素晴らしい取り組みではありますが、そこにも盗用が発生する可能性があることをお忘れなく。
悲しいかな、コンテストへの応募に熱心な子どもたちだけではないからです。
大人なら罪悪感に苛まれそうなことでも、まだ罪悪感を知らない子どもたちなら平気でやってのけます。罪悪感が無いんじゃないんです。まだ知らないんです。
子どもたちを疑うのはしのびないけれど、盗用のチェックは文学賞への応募前の必須工程だと考えた方が良いでしょう。
盗用という概念を子どもたちに学習させることも含めて、我々大人の責任だと思うから。

最後に、もうひとつ悔やまれることがあるとすれば。
「これ、鈴掛さんの作品の盗用じゃない?」って誰かが気づいてくれるくらい、僕がもっと売れっ子の作家だったなら良かったのにね。

この盗用された作品も載っている鈴掛真の歌集『愛を歌え』は、7月23日に青土社から全国出版です。
みなさんぜひ読んでくださいね。
おあとがよろしいようで。


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