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短歌 新作7首 『シャツを羽織れば』

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夏が終わりますね。
海や花火大会をどんなに楽しんでも、いいえ、大いに楽しめば楽しむほど、夏の終わりに吹く風は、やけに涼しく、切なく感じるものです。

けれど、決してビーチや観光地に赴かずとも、楽しみは部屋の中にも無数に転がっています。
例えば、テーブルの上に。例えば、クローゼットの中に。

それは、他人が見ればありふれたこと、そして昨日までの自分ですら何とも思わなかったことかもしれません。
幸福は、ありふれた日常の中からも、ある日突然に輪郭を持って現れるのです。

そんな日々の暮らしの発見を、7つの短歌で表現してみました。

第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。
もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。
あの俵万智さんが帯文で「今を生きる愛の名言が、ここにある。」と太鼓判を押してくださった、295の短歌で綴った物語です。

『シャツを羽織れば』 鈴掛真

カフェインは取りたくないと味の無い水ばかり飲む君の吐く息

まだそれを出会いと呼べるのか、顔の思い出せない名刺を捨てた

常識に逆らってみる納豆とパンは意外と相性が良い

シルエットまで君になる肩幅の少し余ったシャツを羽織れば

お互いの暮らしがあって銘柄の違う柔軟剤を使ってる

付き合ってもやっぱり君がわからない。だけどそれで良いんだと思う。

雨脚が強くなったらすぐここへ帰っておいで(屋根はないけど)

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