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アフリカ・タンザニアから”教育”を探る【実態編】

タンザニア滞在もあっという間に終わりが迫ってきています。
今まであまりタンザニアのことを発信してこれませんでしたので、この三ヶ月のまとめとして記事を書いていきたいと思います。
正直三ヶ月の学べたことは微々たるもので、まだまだこれから深く学びたいことが多くあるのが現実です。それでも、この期間で学べたことから少しでも伝えられることを書いていきます。

今回はまず少しでもタンザニアの教育現場をイメージしてもらえるように、その教育現場の実態や様子について、網羅的にではありますが書いていきます。

目次

1.タンザニアの教育ってどんなものか?

2.タンザニアの学校の一日


1.タンザニアの教育ってどんなものか?

ここからまずはタンザニアの教育について、項目ごとに紹介していきます。

<教育基礎データ>

・識字率※若者(15歳〜24歳)に限る

 約70%強

・就学率

 初等教育 約96% 中等教育 約30% 高等教育 約5%

(「世界子ども白書2015」より)

近年めざましく教育改善の進むタンザニアでは、初等教育においてはほぼすべての子どもが学校に通い、そのほとんどが卒業をすることができるようになってきていて、それに伴い識字率も向上してきています。しかし、中等教育段階へと進学できている子どもの数は未だかなり低く、また入学できてもその多くが家庭の事情や女の子の多くは妊娠を原因に中退してしまう現状があります。高等教育(大学)への進学もしかりです。

<教育システム>

タンザニアがそれぞれの教育段階は以下のように設定されていています。

①Primary Education(初等教育)-7年

②Secondary Education(中等教育)-[O(ordinary) level]4年→[A(advance) level]2年<大学進学コース>            or[Diploma/Certificate]2年<職業訓練コース>

③University Education(高等教育)-3年〜

日本が小中高の6-3-3制と言われますが、タンザニアは7-4-2制で13年間で基礎教育が整備されています。このうち、義務教育に該当するのがPrimaryの7年間となっています。中等教育においては、日本でいう中学校に当たるのがO(ordinary) Levelとして、高校に当たるのがA(advance) Levelとして設定されています。高校は、A Levelの学校が大学進学へと繋がっていき、その他に日本でいう高卒認定取得・就職を目指すためのDiplma/Certificateと言われる、いわば職業訓練校や専門学校のような学校もあるようです。

そして、この教育システムと切っても切り離せないのが、進級・進学のために全生徒が受けるNational Exam(国家試験)と呼ばれる学力テストです。

National Exam(国家試験)

・政府の教育省が行う学力試験。

・Primaryでは現在Standard4,7で、SecondaryではForm2,4,6で各一回ずつ実施。それぞれの試験で実施する目的が実質的に異なる。(タンザニアでは学年について、Primaryでは”Standard”、Secondaryでは”Form”と呼ばれています。)

ex. Secondary Schoolの場合(4年間で3回実施。)

Form2 進級試験(Form3での文理選択ための参考資料ともなる。)

Form4 卒業・高校試験(Form5つまりはA levelへ進学できるか、どこの高校に行くかの判断材料ともなる。)

Form6 卒業・大学試験(このテストで判定Devision3以上であれば大学へ進学が可能となる)

・該当学年で毎年10月頃実施される。・試験は全て英語表記。

子どもたちは、このテストの結果で進級できるか、進学できるかのほとんどが決まります。そのため、このテストで点数を取ることが生徒の目標であり、点数を取らせることが先生の務めとなっています。今では進級に必要な点数の合格ラインが緩和されたことなどもあり、本当にやる気のない生徒でなければ進級できないということはないみたいです。

<学校設置>

タンザニアの学校には大きく二つの種類があります。

・Public School
・Private School

もちろん、私立学校の中には、インターナショナルスクールのような外国人児童が多く通う学校があったり、宗教特にキリスト教の教会をバックに運営される学校があったり、自分の活動先である学校のように、他国の支援により建設→運営が行われる学校などがあるように、その分類の中にも様々な形態の学校があります。また、両者の大きな違いとしてあるのが、授業料に関する費用の部分です。公立の学校では、授業料については完全無償化されている一方で、私立の方は授業料がぞれぞれの学校で決められた額があり有償となっています。(その一方で、公立学校でも給食費や制服代の支払い、文房具買い揃えるとなると、多くの費用が家計の負担となります。)

また、この公私の違いとは別に、特にPrimaryでの学校選択の上で重要なポイントとなってくるものに、学校で扱われる指導言語の違いがあります。タンザニアのPtimaryには、先生が指導の際に英語を使う(English medium)かスワヒリ語を使う(Swahili medium)かが学校によって異なり、明確でないにしろそれぞれ学校がどちらかの方針で生徒への指導を行っています。この選択に関しては、形式的には英語による指導へと移行されるSecondaryでの学校の授業への対応や接続について、後々子供たちに与える影響を考えると、私立・公立の選択以上に重要なものとなっています。(田舎の地域にはそもそもEnglish mediumの学校がないことがありますが、タンザニア人は通わせたいと思えば、親戚の家に預けるなどして遠くの学校まで通わせようとしたりもします。)

<学習カリキュラム・指導方法>

ここでは、自分が活動しているSecondary School(O Level)のカリキュラムについて紹介していきたいと思います。

まずは授業が行われる教科について、実際に設定されているものには以下のようなものがあります。

Civics, English, Kiswahili, History, Geography, Physics, Chemistry, Biology, Mathematics

特に珍しい教科などがあるわけではなく、日本の中学校にもあるような授業が並んでいます。学校によって違いがあり、Religionとして授業内で設けられたお祈りの時間があったり、また通常授業とは別枠で、上でも紹介したNational Examに向けた補習授業が組まれていたりする学校もあります。

それ以外で、タンザニアの授業や指導について、特徴的な点を幾つか紹介したいと思います。

・教科書も指導言語も基本的にすべて英語

これも上でも少し触れましたが、Primaryではバラバラだった学習言語について、Secondaryからは基本的に全教科英語で授業が行われるようになります。それに伴い教科書や黒板に書かれる文字はすべて基本的に英語になるということです。ここで度々「基本的」にという言葉を使う真意は、実際の学校現場ではスワヒリ語を使って授業での指導が行われているからです。(なんでこのようなことが起こっているのかは次回で。)

・学習内容が盛りだくさんの”超詰め込みカリキュラム”

タンザニアの教科書を見ると、日本の詰め込み教育当初の比にならぐらいの学習内容の多さとレベルに驚かされます。例えば、中学一年生の数学の教科書を見てみると、日本であれば高校生で習うようなベクトルや二次関数といった学習項目があり、またそのような学習スピードに比例して、単純な学習内容の多さも際立っています。もちろん、このような学習内容に沿ってNational Examでの出題内容が設定されていますので、テストで点数取るためには、それらを全て学習しなければいけませんし、教師側としても決まったタームの中で全ての学習内容を教えなければいけません。このようなカリキュラム編成は、当時タンザニアがイギリスの植民地支配を受けていた頃の教育方針が、未だに残っているからだとも言われています。

・テストのための勉強が第一優先

タンザニアの教育現場において、現実的な学ぶ目的は「National Examで一点でも多く点数を取ること」です。そのため授業は、テストに出題される一問一答や記述問題への暗記を中心としたものになっています。また、元々カリキュラムとして設定されていないのもありますが、そんな教育現場には音楽や体育、図工といった科目を学ぶ機会は、活動先の私立の学校でもない限りほぼないです。教師側としても、学ぶ楽しさを伝えるためにアクティビティを取りれた授業などを行いたいという思いはあります。しかし、教師は自分の生徒のテストの成績で評価されることもあり、どうしてもテストに向けて、子どもたちに詰め込むことで精一杯となってしまっています。もちろん、学ぶことに対して目の前に取り組むべきものがあることは、とても重要ではありますが、子どもたちの意欲にはかなりの差が生まれてきてしまっているのが事実でもあります。

2.タンザニアの学校の一日

ここからはテイストを変えて、活動先であるSakura Girls Secondary Schoolでの生徒の一日を紹介します。公立の学校でも少しのタイムスケジュールの違いはあるものの、基本的に行われることはほとんどが同じなので、タンザニアの学校の一日として捉えてもらっていいと思います。

〜7:30 起床・身支度・朝食

活動先の女子中学校は全寮制で、生徒はみんな学校の敷地にあるドミトリーで生活を送っています。(私立でなくても公立でも寮制の学校はあったりします。)朝起きて、各自身支度を済ませます。タンザニアの学校にはおそらく全ての学校に制服があり、セーターやネクタイの色が学校や学年によって異なります。
そんな彼女らの朝食は、このUji(ウジ)と呼ばれるいくつかの穀物やトウモロコシの粉末を砂糖とともに温めたアフリカ版のおかゆような飲み物です。自分も毎朝ちゃっかりこのウジをいただいて、これを飲みながら学校の敷地から綺麗に見えるメルー山(アフリカで5番目の高峰)を拝んで一日が始まります。

7:30〜 Morning Ceremony(朝礼)

学校のはじまりは、必ず全校での朝礼から始まります。ここでは、毎朝国歌・校歌を歌い、その後各先生からのアナウンスメントがあります。タンザニアの生徒の歌声は、朝の冷えた空気の中を響き渡る、とても綺麗なものです。本当に毎日聞いていても飽きません。
ちなみに、うちの学校では日本が支援していることもあり、毎朝きまってラジオ体操第一を全校生徒で行っています。某国営放送局からの支援で、あの聞き慣れた音声もスワヒリ語バージョンとなっています。

8:00〜 レッスン開始

授業は一コマ40分で行われます。授業のコマとコマの間には基本的に休憩はありません。1コマ8:00〜8:40、2コマ8:40〜9:20といった感じです。一コマが短いため、多くの授業が二コマ連続で行われ、実質80分授業のようなものになっています。

10:40〜 Break Time

ここでようやく休憩です。この午前中唯一の休み時間に、生徒たちにはチャイと食パン(一枚分)が支給されます。いうところのティーブレイクってやつですね。先生たちにもチャイと食パンが支給され、つかの間の休憩となります。

11:10〜 レッスン再開

そして休憩を挟んで授業再開。授業の多くは講義型ですが、例えばPhysicsの授業では日本のように実験器具を扱いながら行われる授業もあります。実際このような実験器具の扱い方や実験の実演がNational Examの出題項目にもなっていたりするので、テストに向けて勉強しなければいけないこと・指導しなければいけないことは多くあります。

13:10〜 Lunch Time

日本だったら午後の授業が開始するような時間に、タンザニアではここで昼食となります。基本的にタンザニア人が昼食をとるのが遅いです。多くのタンザニアの学校では給食が支給されます。(もちろん給食費は授業料とは別にかかります。)メニューは三種類ほどありますが、どれも豆を中心とした豆料理です。費用面からもいたしかたない部分はありますが、もう少し栄養面にも気を配れるといいのですが。。

自分の一番好きなメニュー、Walimaharage(ご飯の上に豆のったもの)

14:10〜 午後のレッスン開始

一時間の昼休みを終え、いざ午後の授業へ。そんな午後の授業には、意識して取り入れられている主要教科外の授業が多く並びます。(これは私立特有。)例えば、自分が受け持つ授業の一つであるSports&Gamesのクラス、日本でいう体育のような授業です。とは言っても、日本のように体育科のための指導書はないです。ですので自分の場合は、運動器具がなくてもできる日本でも学期の最初の体育の授業で行われる「体つくり運動」のようなものを取り入れて授業をしてきました。教室では見られない生徒の楽しそうな笑顔を見れるのが、教える立場としてとても嬉しいです。

16:10〜 授業終了、放課

そして16時過ぎに一日の授業が終了。この後曜日によっては掃除の時間もあります。タンザニア人はかなりの綺麗好きということもあり、生徒たちも掃除は比較的一生懸命に取り組んでいます。

こんな感じでタンザニアの学校での一日は終わります。


少しはタンザニアの教育現場をイメージしていただけたでしょうか?
こんなタンザニアの教育現場も着実に発展していますが、まだまだ多くの課題を抱えています。次回はそんな課題について今回あまり触れなかった部分に触れていきたいと思います。


◎最後まで読んでいただきありがとうございます。