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海外の教育現場から考える日本の教育のあれこれ【アジア・フィリピン編#1 英語教育】

初回のテーマは、「英語教育」についてです。

英語教育については専門外ではあるが、フィリピンの教育実態・フィリピンでの教育現場で感じたことから書いてみたいと思います。

主な項目は以下の通りです。

1.フィリピンの「英語教育」
2.【再考】日本の「英語教育」

1.フィリピンの「英語教育」

1)フィリピンと英語

フィリピン、英語と連想すると多くの方が”フィリピン留学”という言葉を思い浮かべるかもしれない。

ここ数年でフィリピンのセブ島を中心に、多くの語学学校がつくられ、多くの日本の学生や社会人が英語を学びにフィリピンへ訪れている。ある種この”フィリピン留学”はムーブメントのように現在市場拡大を続けている。(参照:『10分で分かるフィリピン留学』http://souspeak.com/10min-shiryo/)

その一方で、このようなフィリピン留学が流行っている一番の要因に考えれるのが、そのフィリピンの英語力の高さにある。多くのフィリピン人が英語を話せるだけでなく、その英語にあまり訛りがなく聞き取りやすいとよく言われる。その英語力を表す一つの指標として、Global English社の2012年調査によると、フィリピン人のビジネス英語能力は米国を抜いて世界一位となっている。

フィリピンには多くの現地語が存在し、母国語としてタガログ語という言語を有する。そのため、日本人と同じくフィリピン人は英語を第二言語として大部分を学校で学ぶ。

しかし、それでも多くのフィリピン人が英語を話せるのかはなぜなのか、その要因をフィリピンの学校で行われる「英語教育」とフィリピン社会の関係性からみていきたいと思います。

2)フィリピン人はなぜ英語がこれだけ話せるのか?

フィリピン人がなぜ英語が話せるのか、それは社会的要請によるところが大きいと考えらる。

フィリピンでは国を挙げて、労働者の海外への出稼ぎを推奨していて、2013年当時で在外フィリピン労働者OFW(Overseas Filipino Worker)が1000万人を超え、この数が全人口の約10%を占めるとされている。

だがこれと同時に、フィリピンでは多くの優秀な人材が国外へ出て行くため、国内において「産業の空洞化→所得格差」が進み、国内の就労所得はとても低くなっていて、深刻な問題となっている。実際、フィリピン経済成長の大部分を支えてるのが、OFWが国外から送る送金であると言われる。

経済的な詳細はここでは割愛させて頂くが、フィリピン国内には良い仕事(給与の高い)がなく、あったとしても大卒・職業スキルが必須となることから、フィリピン人にとっては英語スキルがあるかないかは、将来を大きく分けるほどの重大事項となっている。

3)フィリピンの英語教育

ようやく本題のフィリピンの英語教育の実態についてだが、学校おけるその特徴を簡潔にまとめると以下のようになる

・小学校段階から教科として「英語」の授業がある。

・学年があがる段階ごとに他教科も英語で授業が行われるようになる。(もちろん教科書も全て英語。)

フィリピンでは何を学ぶにも、英語が理解できなければいけない。そのような環境がフィリピンの子どもたちの英語力向上につながっているのは確かである。(その一方で、英語ができないことで他の教科の勉強についていけなくなってしまう子が多々いるのも現状。「英語できない=勉強ができない」に。) 

その一方で、現地滞在しながら子どもたちと接する中で感じたのが、生活環境の至る所に英語があるということだ。

フィリピンの街を歩けば、看板や標識の多くが当たり前のように英語で描かれているし、歴史的に米国と関係性が強いフィリピンでは、スポーツや音楽を始めとするカルチャーの多くが米国由来であったりする。また、比較的フィリピン人は教育熱心な親が多く、そのような家庭では日常会話で英語を話されることもある。

そんなフィリピンで子供たちが英語を当たり前のように話せるのは、学校での英語教育とともに、その生活環境の中に英語が浸透してることが大きな要因としてあることを肌で感じた。

2.【再考】日本の「英語教育」

日本では英語教育において、現段階で以上のような変更点が想定されている。

しかし、私が思う日本の英語教育の根本的な問題は、英語教育をいつから始めるとか教員の指導力・指導方法がどうとかということよりかは、その英語教育に対するあいまいな目標設定とその目標にリンクした学びの環境づくりの欠如にあると、素人ながら思っている。

英語教育において考えるべきロジックは以下のようであると考える。

目標設定(”なぜ日本人が英語を学ぶのか?””どこを目標に学ぶのか?”)→環境づくり(目標に見合った学びの手段・その学びの量と質)

そもそも今の日本人が英語を学ぶ理由とは何なのだろうか?子どもたちに聞かれたら、あなただったら何と答えるだろうか?

「グローバル化が進んでいて、将来英語を話す機会が増えるから」「英語を活用できることで海外就職など可能性が広がるから」

もちろん”学ぶ理由”は様々に考えられるし、このご時世”英語が使える”で色々な可能性が広がることは確かであろう。(アバウトな説明ですいません…)

だが、学校教育において英語教育を行う以上、何を目標に子どもたちに授業をするのか明確な目標設定を行っていく必要がある。

外国語を通じて,言語や文化に対する理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,聞くこと,話すこと,読むこと,書くことなどのコミュニケーション能力の基礎を養う。(平成20年度改訂中学校学習指導要領外国語編、文部科学省)

以上の文面は、現在の中学校の指導要領で設定されている英語の教科目標である。この文面より、現在の英語教育が目標としているのは、あくまでも文法や英単語のような知識的理解をベースとした、基礎的なコミュニケーション能力や異文化理解力を養うところに目標が置かれていることが見て取れる。

だけれど、正直言って今の日本の英語教育は進学・受験のための勉強にしか私には思えない。なぜなら学校で学んだ英語は、その目標にある実際のコミュニケーションの場で活用できる要素を持ち合わせていないからだ。学校で英語学習しただけの日本人の英語のコミュニケーション能力(英会話力)は、(個人的な感覚で)現段階ほぼゼロに近い。

もちろん学校での英語教育だけで、英語を習得できるとは到底思ってはいない。だが、それならば学習段階に応じて何を目標に英語を学ぶかを再考し、それに見合った学習カリキュラムを選択、そのため学びの環境づくりをしていく必要があるのではないだろうか。

これがフィリピンの場合だと、このように言えるのではないかと思う。

英語はいい仕事に就くため、進学するために学ぶ必要不可欠(目標:実践的に活用できる英語力の習得)→小学校段階からの早期学習、英語での授業の実施(環境:英語学習の必要性に対する社会全体の共通理解)

果たしてどのような目標設定→環境づくりが、日本の英語教育のモデルとして考えられるのだろうか。

正直私自身その答えまでは持ち合わせていないので、こんな問題提起をしたままでこの場は閉めようと思います、、、笑


◎長文読んでいただきありがとうございます。


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