自作解説:「初恋」

 あまりしたことがないのですが、詞の話をします。「初恋」の詞はPuhyunecoさんの「アイドル」に触発されて書いたものです。

 より具体的にはアイドルの「初恋でとなり同士/一言もしゃべらないまま/卒業式、別々の窓/白色の空見上げるだけです」の部分です。まずはこの詞に解説を加えていきましょう。断っておきますが、詩作をまじめに勉強したことはないので適当です。
 音楽的には、上記のパートで一気に音数が減り、ベースもほとんど聞こえなくなって、不安定で空虚な印象が強くなります。一方、歌詞においては具体性が増します。歌の入りが「初恋でとなり同士」。この詞からはぼくときみの親密さ、距離の近さを感じさせますが、すぐさま「一言もしゃべらないまま」と二人の間にまったく交流がないこと、つまりは心理的な距離の遠さが明らかになり、リスナーの予想は裏切られます。さらに次の「卒業式、別々の窓」では「初恋」から「卒業式」へ、はじまりからおわりへと時間的に距離の離れた両極をジャンプをします。加えて「となり同士」から「別々の窓」への変化により空間的な距離が開いてしまったことも表しています。「別々の窓」というのは当然、初恋をしたとなり同士のときから、クラス替えを経て別々のクラスになってしまったという意味です。ここでクラスの意味で使われている「窓」という単語は、次の「白色の空見上げるだけです」が引き取ることで、卒業式の日の白色の空が映る実在の窓を表すことにもなり、みごとなダブルミーニングになっています。
 アイドルで見られる鮮やかな対比は、一方の極からもう一方の極へ、心理的、時間的、空間的な距離を一気に飛ばすことによって、聞き手の心情に揺さぶりをかけることに成功にしています。感動したぼくはすぐにパクろうと決め、詞をしたためました。それが「初恋」の原型になっています。
 「初恋」の基本的なコンセプトは「現在と回想とを行き来して、初恋とその終わりを描く」というもので、それをアイドルをパクりつつ具体的に書き下すとああなったわけです。例えば「十二のきみは言っていました/真実めいた格言はいつも/映画の中だけでホントウなんて/嘘でした、嘘でした/初恋は実らないものでした」の部分は真実と嘘、十二のきみとそれを受ける現在のぼくとを対比させつつ、回想から初恋の終わりへと時間的な距離を移動しています。アイドルをパクった成果です。それがうまくいったかどうかについては判断をお任せします。
 ぽつぽつと書いてきましたが、言いたいことはアイドルを聞きましょうということだけです。今すぐアイドルを聞いてください。そのあとひまがあったら初恋も聞けばいいと思います。

#vocanote

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