奪われた光 #2

光を奪われたことを理解するのに、少し時間を要した。

どれくらい経ったかはわからない。ただひたすら、ぼくは一点を見つめていたのだろう。ジリジリ、朝聞こえてきた蝉の鳴き声とまた違った、蝉の鳴き声が頭の中をいっぱいにする。

そして、この感覚。

なんだろう、経験したことがある気もする。何かが僕の中から消えた感覚。はっきりとは思い出せないが、胸が締め付けられる。

汗が止まらない。

思い出せ自分。大切な何かが抜けている。胸はざわざわするし、頭はジリジリうるさい。さっきまで、シーシャのことを考えていた自分が嘘のようだ。自転車のライトがあった場所を触れてみる。

自転車のライト。

ライト。

光。

奪われた光。

ぼくの光。

頭の中の蝉の鳴き声がだんだん静かになって、思考がクリアになってくる。あぁ、なんで今まで忘れていたのだろう。

あの夏休みのことを。


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