外資セキュリティ事情、Job Hunt具体例その一

 外資セキュリティの職探しについて、具体的な例を挙げてみよう。

 例えば、今では日本人の誰もが知っているであろう某小売り外資。税金対策のため本社を他国へ移してしまった話は置いておくとして、福利厚生など社員保護に厚い企業としても知られている、と思う。

 この外資企業では、セキュリティ&セーフティマネージャーという名称でフィジカルセキュリティの担当者を置いている。セキュリティのみならずセーフティも同じ担当業務に含めるのは世間一般でもしばしば見られるケースだと思うが、この外資の場合は倉庫のように広くて天井の高い店内が特徴でもあるからか、地震や火災などの防災面が強調されている印象を受ける。

 しかし、この会社ほどの大企業と言えど、セキュリティ&セーフティマネージャーというポジションは社内に多くない。本社のある倉庫店には常駐しているものの、日本国内にあるすべての店舗に最低1名が常駐している、というイメージではない。

 基本的に、募集をかけるのは現在の担当者が何らかの理由で仕事を辞めるときだけのようである。つまり、定期的に募集をかけるわけではない。そして、順序としては社内公募が優先だ。社員の中からそのポジションに就いてみたい、その仕事にトライしてみたい、と言う人材を募るのである。この時点で立候補する人物がいれば、新しいセキュリティ&セーフティマネージャーはその人物に決定する。立候補者がいる場合、社外に向けて人材を募集する広告を流すことは、たぶん無い。

 社内公募では立候補者がおらず、どうしても候補者が見つからないという場合は、ここで初めて社外に向けて人材を募る。まずは自社Webの採用情報ページに掲載する。人材紹介会社に依頼してヘッドハンターを使って人を探したりもするが、ヘッドハンターを介して採用に至った場合は成功報酬を当然支払わなければならないので、自社Webに応募してきた候補者の中から採用する方がコストを抑えられるだろう。また、この外資は、ヘッドハンターを積極的に使って採用する他の外資系企業とはやや一線を画しているところがあり、社外公募を実施して選考を開始した後であっても、途中で社員の中から立候補するものが現れればその社員の希望を優先し、社外公募については打ち切る可能性がある。

 以上のような事情があることを考慮すると、この外資におけるフィジカルセキュリティの仕事はあまりプロフェッショナルなものとは言えないということになる。社内から立候補者が出れば、経験はともかくその社員の登用が優先され、外部の人間がセキュリティやセーフティの知識経験を武器にトライしても採用を見送られる可能性があるわけだ。

 そう考えると、とりあえず何らかの職種でアルバイトとして入社してしまう方が有利かもしれない。アルバイトから始めている人は少なくないようなので、いわば身内になってしまってからセキュリティ&セーフティの仕事にトライする方が近道、ということも言えるかもしれない。なので、やはりプロフェッショナルとは言えない。というか、そのようなやり方をしてまでセキュリティ&セーフティマネージャーになろうとする人はいないだろう。

 前述の通り、このセキュリティ&セーフティマネージャーのポジションはもともと少ない(本当に1名だけかもしれない)上に空きが出ることが少ないので、公式ウェブサイトにセキュリティ&セーフティマネージャーの求人が出ることは(おそらく)稀である。社外公募までいくこともあまりないらしいのだ。

 裏を返せば、社外公募になっているのを運よく見かけたならば、ともかくもとりあえず応募してみたほうがいい、と言えるかもしれない。百聞は一見に如かず。どの程度のプロフェッショナリズムが求められているのか、面接の際に人事担当者に確認してみると良いだろう。

 ただし、彼らの人当たりの良さに気持ちが高揚し、「もしかしたら採用されるかも」という期待を持ってしまうかも知れないので、不採用の通知が来たときにショックを受けないよう注意が必要である。

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