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韓国の剣道大会に参加して感じたこと。

ソウルで開催された剣道大会に参加するため、先月半ばに韓国に行ってきた。今回、この大会に出場するきっかけをくれたのは、アメリカ留学中に剣道部で出会った韓国人の友達。「韓国で剣道をしてみたい」と伝えたら、「7月に韓国で大きな大会があるから参加してみる?」と言ってくれて、二つ返事で出ることを決めた。

僕が韓国の剣道に関心を持ったのは、去年のアメリカ留学のときだった。小学2年生からずっと剣道を続けてきた僕は、アメリカでも剣道をやりたいと思った。留学先の大学に連絡をしてみると、返ってきたメールには"kendo club"ではなく"kumdo club"の文字。韓国では「剣道」を「コムド」と呼んでいることを知ったのはそのときだった。

以前から世界大会での韓国チームの剣道に対して、批判的な意見が挙がっていることは気になっていた。僕自身も、映像で彼らの試合中のマナーを見て「それはどうなの…」と思ったことがあった。とは言っても、どこかで自分とは関係のないこととして、特に深くは考えていなかった。

留学先に"kumdo club"があることを知ったとき、韓国の剣道が急に身近なものになった。コムドについて全く知らなかった僕は「剣道とは違う何か変なものなんじゃないか…」と不信感を抱いていた。最初の稽古に参加したとき、コムドで使われる韓国語の掛け声を教えてもらった。僕は13年間「剣道」を続けてきたから、今までとは違う掛け声には違和感があって、韓国語の掛け声はすぐに諦めた。

最初に抱いていた不信感と違和感はすぐにはなくならなかったけど、kumdo clubのメンバーと稽古を積み重ねていくうちに、その感覚はなくなっていった。それはシンプルに、彼らと剣道ができる楽しさを感じていたからだった。掛け声などの違いはあるけれど、違う競技という感じは全くしない。彼らと一緒に剣道に打ち込むことができて、うれしかった。

このときに、僕たちが韓国の剣道に対して持っているイメージが、実際のものとは少しズレているのではないかと思った。韓国のコムドとは一体どういうものなのか。韓国人の剣士たちは日本の剣道についてどう思っているのか。韓国の剣道についてもっと知りたいと思い、部活で出会った友人を介して、韓国の剣道事情に詳しい方に話を聞くことにした。

YouTubeにアップした「剣道の韓国起源説について韓国人剣士にインタビューしてみた話。」という動画は、まさに僕のこういった疑問から作ったものだった。たった一人の韓国人に話を聞いただけだから、全員の韓国人が彼と同じ考えを持っているわけではない。でも彼は「日本の剣道に対してリスペクトの気持ちを持っている」と言っていた。

この動画は今のところ18万回以上再生され、1000件以上のさまざまなコメントが僕のもとに届いた。僕が伝えたかったメッセージを素直に受け取ってくれて「勉強になりました」と言ってくれた人もいれば、「韓国人の言うことなんて信じるな」と批判的に捉えた人も多くいた。

沢山いただいたコメントの中で僕が違和感を感じたものがある。それは「一部の韓国人の意見だけを見て、全体の意見を見れていない」というものだ。確かに僕が取り上げた意見は、一部の韓国人の意見なのかもしれない。でも僕はそれでいいと思っている。僕がアメリカ留学中にkumdo clubで剣道をして、彼らと一緒に剣道ができる楽しさを感じたことは事実だし、僕が話を聞いた韓国人剣士が「日本の剣道をリスペクトしている」と言ってくれたことも事実だ。韓国の剣道に対してネガティブな印象を持つ人のことを否定しようとは思わないけれど、少なくとも僕は自分が経験したこと、自分が肌で感じたことを大事にして「韓国の剣士たちとも楽しく剣道ができるんだ」ということを言い続けたい。

そんな思いがあったからこそ、一人でも多くの人に韓国の剣道について知ってもらいたいと思っているし、一人でも多くの人が韓国の剣道と触れる機会を作りたいと思っている。僕が出会った韓国人の友達に「韓国で剣道をしてみたい」と言ったのは、本当に韓国で剣道をしてみたいという気持ちより、その経験を一人でも多くの人と共有したいという気持ちの方が強かった。

ソウルでの剣道大会には、日本人の選手はあまり出場していなかったけれど、僕の予想していた通り、大会を運営している方々、大会スタッフの方々、韓国人の選手たちの、僕に対する姿勢は温かいものばかりだった。会場に入って試合の順番を待っていると「YouTube観てるよ!」と握手を求めてきてくれた人もいた。自分の発信が国境を越えて、韓国の方々に届いていることを実感できて、僕も温かい気持ちになった。

僕はこれからも一部の声を大切にしていきたいと思う。全体の意見を捉えることはたしかに大切だけど、全体の意見を表現することは、別に僕がやらなくてもいいことだ。僕が実際に経験したこと、僕が実際にその場で感じたことを言うべきだし、たとえそれが一部であっても、そういった思いの「行き場」を作るべきだと思っている。

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