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鈴木心の写真ノート

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写真家鈴木心の写真のこと、言いたい放題です。
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実と花、心。

2005年キヤノンの写真新世紀というコンペの公開審査会が終わり佳作の入選にとどまった僕と友人の二人で、審査員に一杯食わせてやろうと、声をかけてみたのが最初の出会いだった。ビデオカメラを片手に突撃インタビューをするも、嫌悪するどころか、現場の見学を取り付けてしまい、後日撮影にお邪魔することになった。(あの映像どこいったんだろう) スタッフが集まる前にお茶と水の用意を。慌ただしい現場で買いに行こうとすると、ちょっと待って!ペットボトルのお茶と水を買いに行こうと思わなかった?とい

写真がうまくなっちゃう7のこと。

写真に本当に必要なことは、写真を見なくても学べる。ツイッターで募った質問を全問解答し、編集した、自主製作の写真の問答集「しゃしんがうまくなっちゃう7のこと」。写真の作例が一切入っていない対話形式の本です。 スマホ、テレビを眺めている1時間だけ僕たちにいただければ、間違いなく、写真をうまくしてみせる、そんな一冊です。 みんなが写真を撮る時代にあなたは次のうちどれだろう。 カメラマン? フォトグラファー? それとも、オペレーター? 1、写真は誰のもの?もし世の中に自分一人しか

たらふく飲んで、食べたGW?今から食事を休んで得しまくる10のこと

僕は、2011年から毎年のゴールデンウィークは断食をしています。写真家らしくまずは、セルフポートレイトで、その効果を! 2011年の初回の断食はなんと15キロ痩せました。 このグラフは電子体重計に変えてから2016年以降の体重推移。毎年5月に減って、一年かけて戻ってを繰り返しています。 痩せるため、だから失敗する。じゃあ、なんで、するの?痩せるのは過程であって、結果じゃないんです。痩せてどうしたいのか?その具体的な目的がないのに道のりは立ちません。旅行をするとき、見たい

193人、1人93秒、スマホ撮影はここまでできる!鈴木心ポートレイト写真館レポート!

スマホカメラは、どこまで行ける?3月24日、鈴木心写真館初のスマホカメラによるプロフィール写真撮影会、無事に終了いたしました! 告知から2日間で160名の予約枠は満席に。楽しみであったのはもちろんながら、緊張感も漂う朝の風景から、嵐のように過ぎ去ったあの日を振り返り! 技術、機材よりコミュニケーションがいっちばん大切。まずはテーブルに座って、お客さま同士、そしてスタッフの自己紹介から。鈴木心写真館には、「仲居」と呼ばれる、お客さまが会場にいらっしゃってから、撮影を終え、帰ら

フイルム写真よ、さようなら 「あいみょんを、あいふぉんで、撮ること」

目ん玉がごろっと手のひらにのった感じ。スマホカメラはどの写真機よりも生ナマしい。風景に溶け込み、そこにカメラも写真もなかったことにしてしまう。データは電波に乗って、どこかへ飛んでいっちゃっうし。 写真と思想が前進していく。写真機は風景の異物だった。流れる時間をせき止める不自然なもの。カメラを構える人間は、見るだけ、では飽き足らず、それを持ち物にしたい、という欲張りな異物。 写真を撮られる事もまた異様だ。自然は循環するものだから。循環しないで、遺しておこう。いつも写真は人間

有村さんと、写真と、8年の。

写真の仕事は見つめること、伝えること写真の仕事を始めて12年。その間、変化する風景をじっと見つめてきました。良い写真は伝わる写真。 先日発売の週刊文春。巻頭連載の原色美女図鑑の撮影は、自分と写真にとって一つの節目になりました。今日はこの写真をめぐるお話をできればと思います。 2011年雑誌、若手の女優さんとデートする設定の連載。「趣味が読書」だからと半ば強引に段取られた開店前の池袋リブロ。朝早かった。冬のまっすぐな光に溶け込んでしまいそうな繊細さ。撮影中会話はなく「本を探

鈴木心のスマホ写真道場 「一眼レフよ、さようなら」

今回の旅ではiphoneXSしか持ってきていません。前回二回分ではTOKYO GRAPHER の外付けレンズを付けた写真をお見せしましたが、今回はiphoneのカメラのみ。ちなみにアプリも純正のカメラアプリしか使わない派です。その実力を通して思ったことです。 RAWデータって本当に必要なのか?映像でも写真でも撮影画像を加工しやすい状態で保存して(HDR)あとでプリセットやエフェクトをかけても画像が破綻しないようにする形式が広まっています。かなり柔軟。いままでRAWじゃなきゃ

鈴木心のスマホ写真道場 「iphoneXS+tokyo grapher WIDE Lens」の巻

広角レンズが嫌いでした。このレンズに出会うまでは。スマホについているカメラというのは誰もが使いやすいような広さなので、いざという時に意外と、たりない!となることも。そんなときにポケットにこの子を持っていれば、それは、もう、別次元。 いつもと違う、だから面白い写る範囲が広すぎる!だから、おもしろい。写る範囲を狭くするために、しっかり寄って撮る。被写体との距離で感じるお互いの息遣い。いつもズームで解決して、わすれてしまっていたあの感覚。 でも、どーんといきましょう。大丈夫

フイルム写真よ、さようなら#10「ミラーレスからスマホへ」

一眼レフから、ミラーレスへ。重いものも大きいものも大嫌い。面倒臭がりな僕はいつも小さくて軽い機材を求めてきました。流行りの重くて大きくて、やたらとデータ容量が大きいミラーレスは苦手です。燃費の悪い車みたいで。 カメラからスマホへ。iphoneってやつは、 ・ロック画面からカメラ起動でき ・二眼になって標準画角を得られ ・HDRでRAWデータのような柔らかさを得られ ・マナーモードで無音撮影ができる ・直感的に操作できるインターフェース ・PC、写真とのデータ共有が無線

フイルム写真よ、さようなら#9 「カメラは、もう、買わない、だってソニーA7Sがあるから」

写真が好きか、カメラが好きか「写真を撮ること」は「カメラを使うこと」と同義です。 「写真を撮ること」には3つの入り口があります。 いずれも写真が好き、ということになりますが、カメラはあくまで道具にしかすぎず、写真を撮る事が目的なのであれば、絶対にこのカメラでなければいけないということはありません。ところが新型のカメラが出ると、目新しい技術や機能に、「買わなきゃ!」と焦燥します。しかし! フィルムカメラはカメラを買うのではなく、フィルムを買う事でずうっと使い続けたい名機がた

写真であそび、写真でまなぶ。鈴木心写真館の今、すべて。

写真家よ、さようなら。鈴木心写真館は、写真家鈴木心を中心に活動しているチームです。写真を初めて17年、ぼくは、作家とかアーティストとか、コマーシャルフォトグラファーというかたっ苦しい区分けに飽きてしまって、個人ではなく、数名の組織活動をしています。(写真:鈴木心写真館のあゆみ より) 写真であそび、写真でまなぶ僕らの活動コンセプトは「共育」。遊びの中に学びがある。もっと考え、もっと豊かな時代へ進むこと。そのために写真ができること全てを試みるのが鈴木心写真館です。 写真を見

鈴木心の写真の読みかた#1

写真は見るものじゃない。目で読むものだ。1枚の写真を説明するには文章にすると20ページ分の分量が必要だ、と聞いたことがある。 僕の最初で最後の写真集「写真」。収録されている写真はそのほとんどが学生時代に撮影したものである。まずは手始めにこの1ページ目の写真は、なぜ1ページ目にあるのかを説明してみたいと思う。 大学の友人、写真家で白血病で急逝した遠藤俊介は2浪したぼくよりも3歳年上の面倒見。カンボジア好きが講じて在学中、一年の半分は現地で遺跡を巡る生活、もう半分は東京でアル

フイルム写真よ、さようなら#8「いままで一番撮りづらかった役者さんは?」

いままで一番撮りづらかった役者さんは? という質問をうけることがある。答えづらい。だからシラを切り通す。でも本当はすぐに思い出す撮影がある。奇しくもその写真が掲載された雑誌の印刷は2008年の9月22日。10年前の今日だった。 初めての仕事「hon・nin(本人)」という奇妙な文芸誌があった。編集部はわずか2人。僕が駆け出しのころに任された、吉田豪さんの連載honnin列伝のインタビューの撮影。宮藤官九郎さん、中川翔子さん、麻生久美子さん、など錚々たる方々の生い立ちを赤裸

フイルム写真よ、さようなら#7「フイルムという名の不便な時間」

写真を始めた2001年から2年間に撮影されたモノクロネガのうち、350本を全コマデータ化した。 廃墟deポン!2002年の冬僕は兵庫の廃墟、摩耶観光ホテルにいた。学生の時は廃墟をよく旅した。軍艦島、恵心病院、相模湖のペンション、東北の三大鉱山、いまでも新鮮にあの空気を覚えている。 写真は雄弁だ。溢れるように、その細部を克明に思い出させてくれる。16年モノのビンテージ。写真はいつも新しい、古くなるのはいつも人間のほうだ。 フイルム写真はもうやらない。でもフイルム写真をとこ