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みんな音楽が好きだとおもってた。鈴木心を偲ぶ会レポート

「音楽は誰かが作っている」
僕は子供のころからエレクトーンとピアノを中学1年生まで習っていました。それだけやってもろくに楽譜も読めなかったのですが、音楽は自分と同じように誰かが何かを考えて演奏しているものだと知りました。

「誰かと何かで作っている」
ピアノならまだしも電子音楽、当時はファミコンの音楽だと、何でどうやって演奏しているんだろう。音楽を奏でる道具のしくみや、録音する環境に興味を持ちました。高校生の時にバイト代で購入した中古のローランドのMC-500が到着して愕然としました。数字で入力されていただなんて、、、と。

「父のこだわり」
中学生の時に流行ったウォークマン。ジャズドラムが趣味の父の好意で付属のイヤフォンではなくって、レコーディングスタジオ標準のソニーMDR-CD900をつけて学校に通い、テープの再生はデンスケ。家では木製の装飾が美しいサンスイのSP-LE8Tでジャズが流れていました。

「一関ベイシーの原体験」
ある日父に連れられて、一関のベイシーというジャズ喫茶に連れて行かれました。エルヴィンジョーンズ一団がライブを間近で見れるということでした。座った席はエルヴィンジョーンズの真ん前。寝ぼけ眼で当時はまだジャズの聞き方がわからなくって、とにかく、難しいなぁと思い眺めた記憶があります。

「記録の原体験」
ベイシーへは車での移動だったのですが、その帰り道、父がかけたテープはなんとそのライブを録音したものだったのです。バッグに忍ばせたマイクとデンスケで、勝手に録音していた。マイク一本だけなのに、とても臨場感のある音で、記録することの面白さを感じた夜でした。ちなみに父は車で音楽を聞くことが一番心地が良い環境である、と教えてくれました。何をどこで聞くか、その組み合わせも重要なのです。

「定禅寺ジャズフェスティバル」
おとなり仙台で行われていた巨大な路上のジャズフェスでは何百という数え切れないミュージシャンがライブを繰り広げるイベントが当時から行われていました。世界中の色々な音楽、色々な演奏方法、それが洪水のように流れてきて、いつかここで自分も演奏してみたい。だなんて、演者を志すようになったのでした。

「小室哲哉の衝撃」
とはいえ鍵盤を多少触れる程度の自分には、と思ってた矢先に小室哲哉さんの音楽に出会いました。1枚1枚のアルバムにはコンセプトがあり、それに沿った楽曲を製作とライブを行う。さらにミュージシャンとしての文脈があり、テクノの次はハードロック、そのつぎはハウスなど、1人のミュージシャンでありながら、様々な音楽に流れていく。世界中で流行っている最先端の音楽を小室さんを通じて通訳され輸入する姿に感動したのでした。

「鍵盤を押してから音がでるまでにできるだけ早いほうがいい」
という言葉は小室さんが当時の雑誌に話していたことですが、演奏者であっても先端のテクノロジーに触れることが、同時に過去の物の価値も見いだせる。そんな道具に対する関心の高さも、演奏者、作り手には必要なものだと知りました。

「音楽の向こう側を想像すること」
高校大学は音楽に明け暮れました。これは楽しくも辛い思い出。自分が志す姿に全く追いつかない。練習にも気が向かない。バンドをやってもうまく行かない。そんな悶々とした毎日でした。ただ、音楽を聞くことだけはたのしかった。音の向こうで演奏、録音している風景、その人たちの表情を想像するのがたのしかった。それは今でも変わりありません。

「ゲームは音楽を聞くために」
この歳になって自分が大好きなゲームの音楽をつくっている方々と出会って、お仕事のお願いをできるようになりました。その製作する現場を拝見しながら、打ち合わせ、デモ、レコーディング、そしてリリースまで一緒にあゆむ。またの機会にご紹介しますが、そんな仕事が完成した日は、あまりの興奮で家にかえれませんでした。そう、この歳でまたあの頃のゲームをやってみて思うのは、ゲームをやりたかったのはゲームの音楽をききたかったからなんです。だから僕はゲームは好きだけど、うまくないんです。

「当たり前だと思ってた」
こうやって音楽に触れながら、想像力を働かせるのは当たり前のことだと思っていました。でも先日の偲ぶ会ではそうではないことを知りました。写真が好きな人は、写真のことだけを知れればいいと、自分の範疇で理解できる音楽の聞き方でいいと。それが普通だとしるのに38年もかかりました。でも僕にとって音楽はまだまだ大切なもの。そのために自分が力になれることがあれば、惜しまず協力したいと思います。

写真に音楽をぶつける方が、写真が広がるとおもっていたのですが、音楽に写真をぶつける方が広がるかもしれない。そんな一抹の期待を抱いて、もういっちょ、懲りずに企画したいと思います。とはいえ、お忙しい中ご来場くださったみなさまには感謝です!(偲ぶ会より、佐野信義さんのパフォーマンス 文、写真:鈴木心)

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