「ハッピーバースデー任意」鈴木鹿(56枚)
〈文芸同人誌『突き抜け12』(2016年11月発行)収録〉
悟りきっているかのような顔をした赤ん坊というのは意外と少なくない。ぴんと来なければ、気をつけて観察してみるとよい。週末のショッピングセンターに足を運べば世の中の少子化を疑いたくなるほど赤ん坊が大漁だ。地域の赤ん坊のすべてがそこに集まっているかのようだ。ベビーカーに横たわる表情、抱っこ紐の隙間からのぞく表情には、なんの迷いもなく、なんのやましいこともなく、彼または彼女自身を限りなく純粋にまっとうしているのがわかる。