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人生で一番長かった旅が、もうすぐおわる

今、メキシコのカンクンでこの文章を打ちこんでいる。年中真夏のこのリゾート地が、この旅の最終目的地。
青い宝石とも形容されるカリブ海は本日も快晴。ビーチはバカンスを楽しむ客でいっぱいだ。エメラルドグリーンの後ろにもくもくと広がる入道雲の姿に夏を感じながら、わたしは人生で一番長い旅のことを思い返している。

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二ヶ月と半分、正確に記すとすれば七十二日間。改めて文字にしてみるとなかなかに長い。

それでも、あっという間に過ぎ去ってしまったと思えるほどに、密度のある二ヶ月半だった。


メキシコシティでは、三年前に行けず仕舞いだったティオティワカン遺跡に、ようやく足を運ぶことができた。リアルで目にするマヤ文明の遺跡は、教科書やインターネットの写真よりも遥かに雄大で。ここまでわざわざ車を出してくれた友人のマリアにもビッグハグを。メキシコシティに戻ったとき、南米で購入したたっぷりのお土産を渡す予定だ。

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メキシコシティから出発してからが旅の本番。この旅の目的は南米で六つのマラソンに出場することだった。体調を崩すことは許されない。少しの緊張感を併せ持った旅がスタートした。


高度二千メートル以上のボゴタでは、呼吸をするにも息苦しさを感じた。そんな高地で駆け巡るハーフマラソン。呼吸困難で死を覚悟したけど(本気で)ラテンの明るい声援に背中を押されてフィニッシュラインを踏むことができた。

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カリブ海に面するカルタヘナは、毎日が常夏。カラフルな家々がわたしの中に残る少しの乙女心をくすぐる。ここで出会ったボゴタの大学教授のおじいちゃん。いろんな所に連れて行ってくれた。来年、学会で東京にくるみたいだから、次はわたしがガイドになる番。

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南米一の広大な国土を持つブラジル。アマゾン川に沈む夕日は途方もなく美しかったし、レンソイスで目にした白い砂漠と青の湖のコントラストは、一生忘れることがないだろう。

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リオデジャネイロのハーフマラソンは、ポストカードの中を走っているみたいな感覚がして。どこの写真を撮っても、いい写真にしかならなかった。

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そしてマラソンの後に向かったサンパウロ。去年知り合いになった、サンパウロに住むおじいちゃんとおばあちゃんにも、また会えた。次に会えるのはいつになるかなあ。

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何も見所がないと言われるパラグアイのアスンシオンでは、宿泊先のホストとトラブルになったし、空港で洗濯干し用ロープ(結構高かったので大事にしてた…)が没収されたりで踏んだり蹴ったり。だけれどもアスンシオンのマラソンでは、現地のランナーと仲良くなれたし、スタートと同時に打ち上がった沢山の花火も見ることができた。今年の夏は花火大会に行けなかったから、これは嬉しい誤算だった。

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細長い国土を持つチリ、その首都のサンチアゴはとても居心地の良い街だった。街の背後に連なるアンデス山脈の壮大さに何度心震わされたことだろうか。いつか。この街に住んでみたいなあ。

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シーズンオフのパタゴニアでは、この旅で一番の目玉イベントだったパタゴニアマラソンに出場した。幸いなことに年代別カテゴリーで一位を取ることが出来て、表彰台に立つことが出来た。表彰台の上からの景色は今でも鮮明に思い出せる。そして走りながら目に飛び込んできた絶景たちも、色鮮やかに私の記憶に刷り込まれている。

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アルゼンチンとウルグアイの国境の街で出場したサルトグランデマラソン。身体への負担を考えて出場自体を取り止めようとしたこともあったけど、あの時諦めなかった自分に今は拍手したい。運営者やランナー、みんながわざわざ日本から来たわたしを出迎えてくれて、面倒をみてくれた。ハードなコースだったけど、フルマラソン出場して良かったなあ。

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そして七日後には、この旅のラストランとなるブエノスアイレスマラソンのスタートラインを踏んでいた。スタート地点ですでに涙目になっていたわたし。今までのレースが頭の中をぐるぐる駆け巡って、いろんな人の顔が頭に浮かんで。それでも最後まで楽しく、笑顔で走りたい。涙をぐっと握って走るペースを上げた。さすが南米のパリとも呼称されるブエノスアイレス 、その町並みは美しかった。途中で膝の裏、おそらく靭帯を痛めてしまったけれど、ちゃんと笑顔でゴールできたと思う。少しだけ涙がこぼれたのはここだけの話。

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そして今、わたしはメキシコのカンクンにいる。明日にはメキシコシティまで飛んで、東京行きの飛行機を待つ。

旅の途中では何度も日本に帰りたいと願ったのに、今はまだこのまま旅を続けたいとさえ思うのだから、人間の心ってやっぱり難しい。
それでも時間は止まらないし、飛行機のチケットも変更が効かないところまでやって来てしまった。帰国してからの予定も山積みだ。

うん、多分これくらいがちょうどいい。腹八分目がちょうどいいっていう具合に、今はきっと旅八分目。これくらいの方が、出会った想い出たちをちゃんと持ち帰れるような気がする。

さあ、もう寝よう。目を閉じて朝になったら、メキシコシティまで飛んで。飛行機を待つ間にタコスを食べて、マテ茶で一息するんだ。
それで、わたしの旅はおわりを迎えるんだ。人生で一番長かった旅が、もうすぐおわるんだ。


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