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人を育てるってのは難しいよね:40周年特別公演 立川談春独演会「よかちょろ」「百年目」

20240403森ノ宮ピロティホール

3月講演に引き続き、4月講演に参戦。
先月の「たちきり」に引き続き、今月も「百年目」で上方落語を取り上げています。


今回の2作は「大店もの」かな?
旦那がいて、若旦那がいて、番頭がいて、奉公人がいる。
封建時代におけるそれぞれの関係性は現代から見ると歪なところがあって、それを<今>どうやって演じるのか。
…まあ、談春さんですから、そういう切り口はもちろんあるんですが、今回はそこまで強くは感じなかったかな。
こっちが慣れちゃっただけかもしれないけどw。
その課題認識を、「人を育てる」ってところに集約させたことが良かったのかもしれません。


<よかちょろ>
大店の一人息子の若旦那は遊び人。
集金した200円をそのまま持って吉原にしけ込んでしまう。
帰ってきた若旦那を旦那は叱り、何に200円もの金を遣ったのか問い詰める。
若旦那は「無駄な金は使ってない」と言い張り、「よかちょろ」と言う珍しいものを格安(45円)で仕入れたのだと言う。
感心した旦那が、その「よかちょろ」を見せてみろと言うと…


明確なサゲもないクダんない話。
笑わせてもらいました。
まあ、<噺>としてはどうかってのがあるのかもしれないけど、<お笑い>としてはかなり純粋な話なんじゃないかな、これ。
演る人に力がいるのは確かだとは思いますが、もちろん談春さんはサラっと笑わせてくれます。



「よかちょろ」やって、休憩前に、この「よかちょろ」が展開する「山崎屋」って落語の簡単な紹介と、「百年目」の前振りというか解説というか。
ここで「人を育てる」というテーマを打ち出します。
封建制下における<丁稚制度>と、現代におけるコンプライアンス下での人材教育の難しさ。
そこらへんに落語の師匠弟子関係なんかを絡めつつ…。
まあ、「おっしゃる通り」。
特に「どうやって技術や知識を身につけるのか」という点での<新人教育>の位置付けの難しさは、現場でも実感するところです。
…がまあ、だからって「教える側」のアップデートをしなくていいって話でもないんですよね。
そこのところに目を瞑った<言い訳>っぽくなってるところが巷間のコンプラ批判のモヤモヤにもなるんだよな〜
などと思ったりもして。



<百年目>
大店の番頭・次兵衛は旦那の信頼も厚く、商売にも長けているが、一方で口うるさく、厳しく奉公人を鍛えている。
生真面目一本…と周りに思われている次兵衛だが、実は大変な遊び人。
客先周りと称して店を出て、船を仕立てて芸者たちと花見に出た日、酔って土手に上がったところ、偶然に花見をしていた旦那に遭遇してしまう。
醜態を旦那に見られてしまい、真っ青になる次兵衛。
翌日、旦那に呼び出された次兵衛に、旦那は穏やかに声をかける…




次兵衛は小僧の頃から旦那に目をかけられており、一人前の商人に旦那に育て上げられている。
その関係性が、次兵衛の奉公人への教育に重ねられ、「人材育成」というテーマに引き寄せて、旦那と次兵衛の会話が重ねられる…という仕立て。
ここら辺が談春さんの改変ポイントかな。
ちゃんと「教える側のアップデート」にも踏み込んでるところが、さすがですな。
ま、小春志さんも聞いてるしw。
「百年目」は最近では志の輔さんで見てるけど(オンライン)、<見せる>芸だった志の輔さんに比べると、談春さんは<聴かせる><考えさせる>内容。
らしいっちゃあ、らしいですw。



今回もまた、贅沢な時間を過ごさせていただきました。
森ノ宮ピロティホールを出ると、小降りになってた雨が、また激しくなっていました。
さてさて、桜はどうなるかな…と思いつつの帰路でした。

#立川談春
#40周年特別企画立川談春独演会
#よかちょろ
#百年目

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