見出し画像

力入ってました。:立川談春独演会 三ヶ月連続人情噺その二「文七元結」

2023.11.27森ノ宮ピロティホール

三ヶ月連続人情噺のそのニは「文七元結」。
「子別れ」は通しで、それだけの独演会でしたが、今回は前に二つ噺が入っています。

今回のテーマは、
「これからの時代に<落語>は残っていくだろうか?」
かな?
ポリティカル・コレクトや、キャンセルカルチャーの流れがある中で、<
落語>が次の世代(いや、次の次の世代かな)に受け入れられるだろうか…って問題意識です。
まあ、そんなことを言いながら、「小言幸兵衛」では偏見バリバリで行って、最後は宗教ネタのオチだったりもしたんですがw。


まあでもそういう懸念は本気なのかもね。
「Z世代」なんて言葉も談春さんの口から出てきたし。
「古典だから仕方ない」
なんだけど、それを受け入れるかどうかは聞き手次第。
その層が薄くなると、結局はジャンルが細って行きますからね。


「子別れ」でも、妻子を追い出すまでの「熊」の言動を<酷い男>と何度もコメントしたり、彼の行動の底にある<理由>を解き明かしてみたり…としてたけど、談春さんとしては
「不合理に見えるけど、そこにはそれなりの理(ことわり)がある」
というところで、時代に耐えうるアップデートをしてるのかもしれないな、とは思いました。
煎じ詰めればそこにあるのは<業>なのかもしれないけど、そう言って放り出すんじゃなくて、ギリギリのところまで詰めてみちゃどうか、と。
その理屈っぽい話で如何に聴かせるか、笑わせるか…ってところが、談春さんなのかな。


博打にはまって借金を抱えた左官の長兵衛。
その娘のお久は父の借金を返すために吉原の女郎屋に身を売ろうとするが、女将の情けで五十両を貸してもらう。
長兵衛はその金を持って帰る途中で、店の金をなくしたため自殺しようとする鼈甲問屋の奉公人の文七に出会い、助けるためにその金を渡してしまう。
文七が店に戻ると、そこには落とした金が届いていて…・



「文七元結」についていえば、まずは女郎屋の女将の説教。
いや、これはマジで怖かったw。
人の裏も表も知り抜いた女将が、長兵衛の心底を覗き込み、解き明かし、その生き様を晒し出す。
見てる自分自身にも突きつけられたようなところがあって、ここは聞き入ってしまいました。


そして長兵衛が文七に50両を渡すシーン。
娘のお久が身を売って作ってくれた金を、なぜ見ず知らずの…と言うところ。
一言で言えば、
「それが江戸っ子だから」
なのかもしれませんが、談春さんはそこに逃げずに一歩踏み込みます。
長兵衛自身の生き方、価値観、人生哲学…
正直言って、僕自身は納得できる判断ではありません。
納得はできないんだけど、長兵衛ならそうするかも、そうせざるを得ないかも…
そう思わせたところが談春さんの凄さだと思います。

そっからのハッピーエンドへの流れはまあ、ちょっとホロッとしつつ、大笑いもさせてもらって、大満足の展開。
気がつけば6時開演で、15分の休憩を挟んで3時間。
談春さんが疲れ切るのも分かりますw。


落語がZ世代にも受け入れられるようになるのか?

正直分かりませんし、ズルいけど、僕にはどうしようもない。
でもまあ、「良いものは良い」と思うし、それを繋げていこうとする人がいれば、ちゃんと繋がっていくんじゃないですかね。
それでもダメなら…
う〜ん、それはそれで仕方がない。
いずれにしても僕がこの世にいなくなった後の話ではあるでしょう。(そうあって欲しい)


来月はいよいよ「芝浜」。
談春さんも気合い入ってます。
楽しみ、楽しみ。
(会の最後に「写真タイム」が設けられるようになりました。新しいことを取り入れるのは良いことです)

#立川談春
#三ヶ月連続人情噺
#文七元結
#森ノ宮ピロティホール

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?