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2029年のある日:朝

7:00起床
目覚めは枕のかすかな振動と、流れる音楽で。
ベッド全体で睡眠の状況がウォッチされていて、もっとも設定した目覚めの時間にもっとも気持ちよく目覚めることができるよう、微妙な刺激が寝ている間にも調整されている…らしい。

ベッドから出ながら、サイドテーブルに置いてあったイヤーポッドを右耳に入れる。
「おはようございます」
イヤーポッドから<電子アシスタント>の声。
妻と子供たちはもう起きて、下で食事をしているとのこと。
今日のスケジュールを確認すると、海外との会議が一つ、その事前打ち合わせの依頼が現地メンバーから入っている。
今日はオフィスに出る予定ではなかったが、予定を変えてサテライトオフィスに出ることとする。
アシスタントに空いているサテライトオフィスの予約と、自動運転車(オートモービル)の予約を依頼。

着替えのためにクローゼットに入る。
イヤーポッドから小さなアラームがなり、クローゼット内の全身鏡がオンとなる。
鏡に「オススメ」のコーディネートが僕の鏡に映った姿に重なって映る。僕が持っている洋服から選ばれたコーディネートだ。
「シャツはもう少し明るい方がいいな」
全身鏡が反応して、新しいコーディネートが表示される。
OKと言うと、クローゼットの奥のレーンに、コーディネートで選ばれた服一式が出てきた。

パジャマから着替えている間に、予約確認の報告がイヤーポッドからあった。
機能の点で少し遠目のサテライトオフィスに行く必要があるので、駅から鉄道で都心に出ることになる。
駅までのオートモービルが家に来る時刻と、電車の運行時間を確認。

妻は30分前に起きている。
1階に下りると、子供たち(娘と息子)が朝食を終えようとしている。
課外活動で少し早めに出るとのこと。
下りてきた僕を見て、キッチンカウンターから妻が朝食をダイニングテーブルに運ぶ。
ほとんどの調理は自動調理システムが前夜の設定に基づいて、調理している(はず)。
どこまでが自動調理で、どれが自分の用意なのか妻は明らかにしない。
僕が当番の時は95%以上が自動調理システムだけどw。
いずれにせよ、「盛り付け」は自分でやらなきゃいけないんだけどね。

子供たちが家を出る時間に。
「学校エリア」は家から車で5分のところにあるが、今日は課外活動なので、近くの「学校エリア」ではなく、それぞれのリアルな「校舎」に向かうので、早めのスタート。
駅までは二人一緒にオートモービルに乗っていくとのこと。
ダイニングテーブルの上にホログラムで、予約していたオートモービルが近づいてくることが表示される。
自分たちのイヤーポッドからの案内でオートモービルの位置は把握していたので、慌てることもなく、子供たちは家を出て行った。

食事が終わるころ、コーヒーの香りがしてくる。
食事の進み具合をチェックした自動調理システムが用意したものだ。
挽きたてのコーヒーがキッチンカウンターに、カップに入って上がってくる。
ロボットを使って給仕をさせることもできるのだが、妻は食事に関してはロボットを使うことを嫌っている。
妻と自分のカップをカウンターから取り上げ、ダイニングテーブルに運び、出勤時間までしばらく雑談。

妻は今日は自宅でワークをするとのこと。
始業時間になったら、2階のワークスペースを「職場」(と行ってもバーチャル空間だけど)に接続して、朝一会議に出席するらしい。
僕は急遽サテライトに出ることにしたことを妻に告げ、現状のスケジュール変更をざっくり話をした。
話した内容と、アシスタントが把握しているスケジュールが、カレンダーのホログラムになってダイニングテーブルの上に表示される。
少し訂正をアシスタントに指示。
家族のスケジュールを指示すると、妻と子供たちのカレンダーも現れる。
子供たちの放課後の予定が曖昧なのは、プライバシー指定をしたからだろう。

子供たちの前日までの成績や課外活動の内容が入ってきているので、ホログラムで表示させて妻とチェック。
お互いニュースは自分たちでチェックするのが好きなので、ニュースをダイニングで流すようなことはしない。
ホログラムをオフにして、お互いの仕事や、週末の予定等を軽く話しをした。

イヤーポッドからオートモービルが10分後に到着する旨の案内。
ここら辺のオートモービルは駅前公園の地下の駐車場に収納されていて、オーダーに応じて各場所に配送される。
時間によっては「相乗り」設定のケースもあるが、ホームワークが主流となっている現状、「出勤渋滞」のようなものもなく、経験上、8、9割は「一人乗り」が配送される。

少し大きめのアラームがイヤーポッドからなり、オートモービルが2分後に到着するとの案内。
テーブルの上にホログラムが浮かび上がり、近辺の3D地図が表示され、オートモービルの現在位置が赤で表示される。

通勤中に確認するようにタブレットを手にして、玄関に出る。
朝のコーディネート時に選ばれていた靴が玄関に出ている。
妻に挨拶をして、扉を出ると、ちょうど前庭の芝生の自動芝刈り機が動き始めたところだった。
その向こう、門扉のところにオートモービルが静かに停止した。

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