魔法探偵ホームズ#1

「フハハハ!さらばだホームズ君!魔法を使えぬ哀れな探偵よ!」「待てモリアーティ!くっそー!」怪盗は気球で空へ逃げ、少年は悔しがった。

……それから何年がたっただろうか。

「ハッ!あのときの小童が、なかなか立派になったものだ」「そうだろうさ。ハドスン夫人に山ほどしごかれたからなあ!」壮年の怪盗に、青年は答える。

「では、その腕を見せてもらおうか?」怪盗が手を広げ、手袋から魔法陣が展開される。「目にもの見せてやる!いくぞワトスン!」ローブを翻し杖を構えるホームズ青年!「ナォーン!」ワトスンと呼ばれた使い魔の猫が月に吠える!今、因縁の戦いの火蓋が切って落とされたのだ!

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ここで話は再び数年前に遡る。

魔法都市ロンドン、ベーカー・ストリートの下宿宿『シーブ』の門を叩いたのは、一人の少年だった。彼の名はホームズ。モリアーティにすべてを”盗まれた”ものだ。

「あのー……」恐る恐る声を上げるホームズ少年に答えて、ズガンと勢い良く扉が開く。「ほう!ずいぶんとカワイイ子供がキたじゃあないか!ええ!?」ハキハキとした声とともに現れたのは、”いかにも”といった出で立ちのババアだ。

「ギャッ!」ホームズ少年はいきなりのことに驚いた。「フン、これくらいで驚いてんじゃないよ!さあ、入んな。アンタも訳ありなんだろ?」ババアは笑った、「は、はい……」恐る恐る『シーブ』に入るホームズ少年。

ホームズがババアについていくと、そこは暖炉と安楽椅子がある部屋だった。ババアの私室だろう。ババアは安楽椅子に腰掛けると、ホームズ少年を見て言った。「ほいでアンタ、ここに来たってことは、魔法が習いたいんだろう?」

「ああ、僕は、魔法が知りたい」「ヘッへッへェー、どうしてさ?」「僕は、盗まれたものを取り返したい。モリアーティから」

「モリアーティ!?ヘッヒャッヒャァッ!」ババアは高らかに笑い、更に続けた。「よりにもよってモリアーティかい!?そいつは大事さね!本気かい?」「本気だ」ホームズ少年は即答した。その目には覚悟があった。

「モリアーティの強さを知ってもかね?あいつはロンドン最高の魔法使いにして怪盗。盗めぬものはなし、捕まることもなしときた。それを捕まえて取り返すだって!?」「うん」ホームズ少年は間髪入れずに答える。

「フーム……」ババアは安楽椅子から立ち上がり、片手杖を古いながら呪文を唱えた。「”心、真偽、眼、真実”」杖から光がでて、ホームズ少年の瞳に直撃した!「うわっ!」驚くホームズ少年!「安心しな。ちいとびっくりするだけだよ」その言葉の通り、ちょっと眩しいだけでなんともなかった。

ホームズ少年の瞳は青く光った。青は叡智の色であり真実の色。つまり言葉に偽りはない。「よーし、あんたの言葉はわかった。いいだろう。アタシが魔法を教えてやるよ」「本当ですか?」「ああ、ただしタダってわけには行かないね」

「……しもべになるんですか?」「ッハ!そんなことしないさ!第一、自分のことは魔法で大概ナントカできるんだから。お前には、アタシの仕事を代わりにやってもらう。魔法探偵さ」「魔法探偵……?」

「アタシはこれでも有名な魔法使いでね。いや、それくらいはお前も知ってるだろう。そうじゃなきゃここには来ないはずだ」「ま、まあそうです……」「そんなわけで、ここにはいろんな依頼が来るんだよ。魔法関連のね。そいつをお前が代わりに解決するのさ」

「そ、そんなこと、急に言われても」「なあに、全部一人でやれってわけじゃあないよ。ワトスン!おいで!」ババアが呼ぶと、一匹の猫が現れた。

「ナーオ」ワトスンが鳴いた。「見た目はぐうたらな猫だけど、これでも優秀な使い魔さ。アンタを助けてくれる」「は、はあ……」ワトスンがホームズ少年の前で座り込む。ホームズ少年がしゃがんで猫に話しかける。「ぼく、ホームズ。よろしく、ワトスン」ホームズ少年が撫でてやると、ワトスンは心地よさそうに鳴き声で答えた。「ナーオ」

「よーし、これで契約成立だ。それじゃあ、早速魔法のレッスンといこうか?ああ、そうそう、自己紹介が遅れたね。アタシはハドスン夫人って呼ばれてる。これからアンタの師匠だよ」「はい、よろしくお願いします!師匠!」ホームズ少年は深くお辞儀した。

「ンニャゥッ!」ワトスンが驚いて鳴いた。

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