自称謎の女エージェント

旅の楽しみは食事にあると思わないか?

今日の朝食はホテルレストランのモーニングだ。朝は重すぎず軽すぎず、これくらいがちょうどいい。さあ食べようかと思ったその時だ。

「すみません、相席いいですか?」

俺に声をかけてきたのは若い女だ。周りには誰も座っていないテーブルがいくつもあるが、わざわざ俺と相席したいらしい。

「ああ、別に構わないが」

旅の楽しみは食事以外にもある。以外な出会いとかな。

「ありがとうございます」

そう言うと女は、俺の隣に座りながら、俺のズボンの左ポケットに触れる。女は偶然を装ったつもりだが、明らかにぎこちない不自然な手付きだ。
俺はここらで少し嫌な予感がした。まさかとは思うが……。

「アンタまさか」

俺の質問に、女は自信満々に答えた。

「お察しの通り。私は謎の女エージェント」

「おいおい、またかよ……」

どうやら、今回の仕事も一筋縄ではいかなそうだ。

【続く】

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