見出し画像

父の背中2 #台にアニバーサリー #毎週ショートショートnote


断頭台にアニバーサリーの文字が
血痕で書かれている。

乾いた血痕を指でなぞる。
指先を見たが
血痕がつくことはなかった。

恍惚の表情で断頭台を眺める。

研究者として数々の
成果と功績を残した父。

父の研究で救われた命の数は
数しれない。
その反面、父の研究から生まれた
細菌兵器、生物兵器で奪われた命の数を
数える事は難しい。
今尚、増え続ける死者の数。

父は英雄として立った表彰台から
犯罪者として断頭台に立たされた。

表彰台と断頭台。
双方で同じ微笑みを浮かべた父には
何が見えていたのだろう。


私は父の命を断ち切った
この断頭台で同じように
最後を向かえる。


あの時の父よりも年齢を
重ねてしまったが
やっと父に追いつく事ができた。

父以上の兵器で世界を終わらせる。
より小さく、より強く
変化させた兵器。

世界と繋ぐネット環境を使い
同じ思想を持った仲間を
手に入れた。


三日月を描いた口元のまま
半円にくり抜かれた凹みへ首を置く。


多幸感に満たされながら
配信ボタンをタッチした。

【412文字】


#台にアニバーサリー  
#毎週ショートショートnote

サポートありがとうございます。 治療、子育て、罰金返済等に使用させていただきます。