石川 宏

映画の極北、または壮大な虚しさ

「レベナント / 蘇りし者」 映画の極北、または壮大な虚しさ。

 エマニュアル・ルベツキ。初めて出会ったのは「ゼロ・グラビティ」であった。どこまでも透徹した宇宙空間は、デジタル時代とは言え誰もが成し得るものではなく、その名を脳裏に刻み込むこととなった。

 そして、本作。室内でできる撮影の極北を「厚田雄春 / 小津安二郎」が目指したとすれば、室外(自然)でできる撮影の極北を「ルベツキ / イニャ

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黒沢清「岸辺の旅」はホラー映画である。

ホラー映画とは、そもそも生者と死者が交わる映画のことではなかったか。死者が生者の世界に現れ、思いを果たそうとする映画ではなかったか。その方法において生者が竦むような強引さがあるか、または生者の悔恨に寄り添い、応えようとするのかの違いはある。後者であるこの映画は、その意味では広義のホラー映画なのである。黒沢清は、一貫して生者が死や死者と向き合うホラー映画を作り続けてきた。死者が生者に訴えかける思念を

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「人生スイッチ」が面白くない人間はいないはず!

「人生スイッチ」(ダミアン・ジフロン監督)

「太鼓判」です!「抱腹絶倒」間違いなしなんですよ、これが。面白くなかった人は、あなたの街まで、レンタル代返しに伺います! パッケージデザインが最低で、ちょっと不安になるけど、大丈夫ですよ!プロデューサーの「ペドロ・アルモドバル」は、私が愛し、尊敬し、拝んで止まないスペインの監督です。もしプロデューサーが「リュック・ベッソン」なら、「エクサイティング・ノ

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ある週末、彼もしくは家族が出かけて一人の夜に、「映画でも見よう」と思い立ったら・・・。

ある冬の土曜日の夜、あなたは特に予定もなく一人なので映画のDVDでも見ようと思う。でもスターウォーズ過去作はすべて出払って、ミッションインポッシブル2もブルーレイしかない。テッド2は来週リリース。昔の名画とかを見るほど元気もない。何か、肩肘のはらず、かと言ってストーリーはしっかり練られてて、主人公に共感できて、意外性もあって、自分の部屋でグリーンラベルを飲み、ドリトスナチョチーズ味をボリボリ食べな

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ピース又吉「火花」・・・「芸」を巡る思弁小説かつビルドゥングスロマン

皆様、今年読んだ本のベスト3はなんですか? 「火花」は読みましたか? 「芸人が書いた本」として興味本位で読み始めると、意外と難しいことにびっくりされるはず。芸事の世界は小説にするのが難しく、なかなかこういう本はありません。私は「文学界」の増刷で読んで面白かったのでFBに載せました。過去のFBの投稿ですが、読んでくだされば幸いです。

■ピース又吉「火花」・・・「芸」を巡る思弁小説かつビルドゥングス

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原節子の華

あまり誰も言わない事だけど、原節子は決して日本人っぽくない顔立ちである。彫りが深く、目鼻立ちが整い、何と言っても大きな口。そもそも顔が大きいので、スクリーン中ではまるで小振りの花の後ろに大輪の百合の花が咲いているようだった。しかしながら、不思議と目立ちすぎることはなかった。そこが、原節子の秘密だと思う。

彼女はいつも、目立つ面貌をはにかむように控え、大柄な体躯を折っていそいそと立ち振る舞った。彼

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