お盆に纏わる話 「一喝」
友人のM君に聞いた話である。
M君は子供の頃、毎年お盆に父方の祖母の家に家族で帰省していた。お墓参りの為に親戚達も集まるので、普段は遠方に住んでいる年の近い従兄弟達や親戚のお兄さんやお姉さん達に会って一緒に遊べるのが何より嬉しかったのだそうだ。
「あれは小学校の時だったな。年の近い従兄弟達5人とみんなで遊んでいて、家の中で遊ぶのに飽きちゃったから外へ遊びに行こうって話になったんだ」
遊び盛りでやんちゃな小学生の子供達が、玩具や娯楽の少ない祖母の家でじっとしていられるわけがない。
大人達は一部屋に集まってテレビの高校野球を観ながらビールを飲んだり、自分達が子供の頃の思い出話で盛り上がっている。
自宅から持って来たマンガやゲームで遊ぶのも飽きて、貰ったおやつも食べ尽くして暇になった子供達が部屋から出て行こうとしたその途端に、
ガタン! ガタン! ガタン!
と部屋が大きく揺れて、外に出ようとして手を掛けていたドアが突然バタン!と閉まり、
「こりゃーっ!! 外に行くなら部屋を片付けてから行けーっ!!」
と部屋中に響く大声で叱られた。
「その声がね、前の年に死んだじいちゃんの声だったんだよ。だからもう俺らパニックになっちゃってさ。ドアを開けようと思っても開かないし、大声で親や親戚の叔父さん叔母さんとか呼んでも誰も来ないしさ」
部屋に閉じ込められてパニックになり泣き叫ぶ子供達の頭上からまた大きな声がした。
「片付けろと言ってるだろうがっ!! 片付けが終わらないと出してやらんぞっ!!」
子供達は泣きながら自分達が散らかした玩具や本、おやつの袋や包みを片付けだした。
「じいちゃん、ごべんなざい!」
「ごべん! がだずけずるから、だじで~!」
「おじいぢゃん、ごべんなざ~い・・・!」
部屋が綺麗に片付くと、不思議な事に今までどうやっても開かなかったドアが誰も触っていないのに、子供達の見ている前ですうっと静かに開いた。
「その瞬間にまたぎゃ~~~って! 泣き叫びながら大人達のいる部屋にみんなで駆け込んだよ! じいちゃん、普段は優しかったけど、怒るとすっごく怖かったんだよ。今年のお盆もまたみんなで集まった時に、この話が出るんだろうな~!」
M君はそう言って目を細めて笑った。
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