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なんかもう色々キャパオーバー

*集英社は大手出版社である。集英社コミックと一言で言っても、わかりやすいジャンプコミックス以外に、少女マンガのマーガレットやりぼん、青年コミックのヤンジャンなど多岐に渡る。それらを見極めて忘れずにマグネットを配らなければならない。

*女性向け雑誌全てではなく「特定の5誌」だったりするのでまずそれを覚えなければならない。更に「それ以外の女性雑誌のこの3誌にはこの化粧サンプルが付く」が被った日には悲劇。あと買った雑誌よりノベルティの方が大きかったり重かったりする。

しかも、高級化粧ブランドのサンプルだったりすると、一般のお客様以外にも、転売ヤーや海外の爆買い層から発売前から問い合わせと予約が殺到しサービスコーナー担当者が震えだす。買占めで一般のお客様の手に渡らない事が起きないように、一度に予約できる上限数を決めても、別名で買いに来るので阻止しようがなくて途方に暮れる。(ただ、その店の店長の方針によっては「転売だろうが売れればいい」と上限数を決めない店もある)


*文庫担当の一年の山場。文庫担当は夏に一度死ぬ。レジを打つ人は、まず角川、集英、新潮の文庫を見分け、更に夏フェア対象帯が付いている文庫にそれぞれしおりやカバーを選んで頂かないといけない。

たまに補充注文をしたら帯のついていない夏文庫が入荷する事があり、担当者は気絶する。この場合「この文庫、夏文庫フェアの帯がついてないけど、夏文庫フェアの対象の文庫です」というトラップが発動し、担当者しか把握できない無理ゲーが発生する。担当者のせいではないけど本当に申し訳ない気持ちになる。

ちなみに、ノベルティは毎年必ず人気の柄が偏り、それが品切れないように補充を頼むと、また同じ柄がなくなり、人気のないカバーが大量に余るので柄を指定して補充できればいいのに…と思うが、営業さん曰く「(人とかお金とか)色々足らないんですよ…」という事らしい。なのでお目当てのノベルティがある人は夏の初めに買っておいた方が吉。

余談だが、何年か前の某社のフェアで「文庫ごとに異なる著名人のコメント帯が付く」年があり(「夏目漱石のこころには読書芸人の〇〇さんの推薦文」とか。普通はどの文庫にどれをつけてもいいように共通のものにする)「この文庫の、この帯を下さい」という書店からの注文に追われた営業さんが、帯が大量に置かれた倉庫で一日中帯を探し続ける事態となり、当時の担当だった営業さんはメンタルをやられて退職した。出版社の闇の深さに震えた。

*実用書は割とトリッキーなノベルティが付きやすい。シュリンク(ビニールがけ)で同梱できるものはなんとかするけれど、本より大きくてまとめられなかったり、食べ物はいたずらされたらいけないのでそれもできない。(あと配布期間が過ぎたのに担当者が代わっていたりで回収を忘れられて、ついているのを知らずに賞味期限が大昔の食品を何年後かに販売しちゃった、なんてとんでもないことが起きる可能性が生まれる)というか、それ以前にノベルティだけ抜き取られたり、ノベルティ目当てに本ごと持っていかれたりする。本末転倒。

*出版社と書店に間に挟まる「取次」さんという会社があり(日〇、トー〇ンなど)割とややこしい企画を定期的に放り込んでくる。ちなみに↑の例だと

「ただいま、1000円以上お買い上げのお客様に抽選で温泉旅行の当たるチケットをお渡ししております。必要事項をご記入の上、そちらのボックスに投函して頂くとご応募頂けます。レジ横ボックス前に筆記用具と机がございますので宜しければご利用くださいませ」

という長台詞を1000円以上のお会計のお客様に毎回毎回言わなければならない。更に書店が入っているビルのキャンペーンもあり「1500円以上お買い上げの方にくじびき券配布」が被ったりするとレジ時間で喉をやられる。

恐ろしい話なんですが、これらのキャンペーンがいっぺんに重なることもあるのです…とにかく一人一人のレジ対応が長くなるのでレジが混みやすくなる上に、渡し忘れがあってはならないというプレッシャー…

私は書店で働いて長い上に、本もコミックも読むので気づかなかったのですが、本を全く読まない店員からすると「まず文庫やコミックのレーベルを見分けるのがしんどい」らしく…売り場を担当するのはもちろん、レジも大変です、という話でした。

愛猫と日常を記したり、本をオススメしたりしています。