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おかあさんゆび(第9話)

いよいよユミとあきら、華の3人はドイツに向けて出発。


~中略~


帰国1週間前の夜・・・


華「ユミさん、家族会議いいですか?」

ユミ「え~、まじか~。これからトーマスが店早く閉めるって言うからタダ酒飲もうと思ってたのによ~。」

華「またですか? ユミさん結局ドイツ語喋れなかったのに、なんでそんなに仲良くなってるんですか?」

ユミ「何でだろ? 日本でもそうだったんだけど、あたしの周りって超が付くぐらいのドM男が集まってくんだよね。 トーマスもさ~、名前が機関車じゃん。 一応あたしもバイトの身分だけど、初日にあいつ客に絡まれてモジモジしてたから、思いっきりケツにミドルかまして一喝してやったのさ。そしたら客もドン引きして出てったんだけど、そこからあたしをアマゾネスって呼ぶようになってさ~・・・。」


華「あ、だいたい予想通りですが・・・」


ユミ「でもトマースさ、あたしの最後の試合見たらしいんだよ。相手が世界前哨戦のドイツ人で結構人気の奴だったんだけどさ、あたしは噛ませ犬的扱いだったから瞬殺されると思われてたわけ。でもそんな簡単にあたしが負ける訳ないじゃん。膝と肋骨は持ってったんだけど、いいの一発もらっちゃってさ…」


華「(前に聞いたやつだ…)」


ユミ「でさ、トーマスが言うには『アノシアイカラユミノファンデス!』って言うからさ。まあファンには優しくしないとな。」


華「そうなんですね…。 あれ? ユミさんドイツ語話せませんよね?」


ユミ「話せないよ。でもそんな感じの顔してたからあってんじゃない?」


華「じゃあそうしておきますか…。あ、でユミさんに話さなきゃいけないことがありまして…」


ユミ「何だ?小林尊に弟子入りが決まったか?」


華「違います。その方も知りませんし…。」


華「日本に帰ってからの事なんですけど、ユミさんはどうする予定ですか?」


ユミ「あぁ、それな。あたしも少し考えてることある。華はなんかあんの?」


華「はい、実はしばらくこっちに残ろうかと…。」


ユミ「ふーん、なんかやりたい事見つかった?」


華「はい。留学中の報告で一度日本には戻りますが、こっちで絵画の修復の勉強をしたいと思ってるんです。日本で勉強するには環境的に難しくて…。」


華「今回ユミさんとあきら君の絵で賞を貰えたのは本当に嬉しかったんですけど、それは2人の魅力な訳で…。私以前から写生画は得意だったんですけど、それ以外『個性が無い』って言われ続けて自信喪失してたんです…。」


華「でもユミさんと一緒にいたら、個性って努力して身に付けるものじゃないんだなって改めて思ったんです。だったら、自分の出来ることをもっと伸ばす方がいいなと思い始めて・・・。」


ユミ「それってあたし褒められてんの?」


華「もちろん褒めてますよ‼︎ でもそれに気づいたら開き直れたって言うんでしょうか。私にも出来る事ないかなって考え始めた時、絵画修復しの存在に気付いて、素晴らしいものをそのまま残すって素敵な仕事だなって。私に出来るかはまだ分かりませんが…。」


ユミ「出来るよ。」


華「え?」


ユミ「華なら出来るよ。あたしには分かるね。出来なかったらどうしてくれようか♪ ヒッヒッヒ。」


華「あぁ、ありがとうございます。うれしぃ、で、す。」


ユミ「泣くなよ。せっかくあたしが魔法使いのばーちゃん演じてるんだから。」


華「すいません…。 でもユミさん、きっとそう言ってくれると思ってたから…。」

ユミ「前にも言ったよな? やりたい事がある奴はやらなきゃダメなんだよ。」

華「ありがとうございます。 でも、ユミさんとあきら君は日本に帰りますよね?」

ユミ「あぁ、それな。1回釧路に帰るよ。」

華「え?釧路ですか? また店に戻るんじゃなくて?」

ユミ「1回じーちゃんの所に戻ろうかと思ってさ。実は華に言ってない事あるんだけど・・・。」



第11話に続く





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