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おかあさんゆび(第7話)

10か月後・・・


ユミ「(ねむい、ねむい、ねむい、ねむい、ねむい・・・)」

あきら「も~、おかあさ~ん、約束したじゃ~ん」

ユミ「(起きちゃダメだ、起きちゃダメだ、起きちゃダメだ・・・)」

あきら「はやく起きてよ~。もう間に合わないよ~。」

ユミ「あ、き、ら、あたしムリ。華に・・・。」

あきら「違うよ~。今日は華ちゃんと3人で行くんじゃん!!」





数日前・・・




華「あの、ユミさん、ちょっとお話が・・・。」

ユミ「どした? 結婚? 妊娠? 出産?」

華「いや、どれも相手がいませんので・・・。」

ユミ「で、なに?」

華「あの~、すいません。実は内緒にしてたことがあって・・・。」


ユミ「あ、お前か!! 大事に取っておいた『ほぼカニ』食ったの!! お前か!!」


華「いや、それはユミさんがおととい酔っぱらって全部食べてましたけど・・・。そうではなくて、」

ユミ「あ、そうなの?じゃあなに?」

華「実は私、絵で賞を頂くことになりまして・・・。」

ユミ「絵で賞? なんか『がんばったで賞』みたいな感じに聞こえるけど?」

華「いえ、実はユミさんから『家で描いていい』と言われてから少しづつ描いていた絵を試しに応募してみたら、それが評価されたみたいで・・・」

ユミ「すごいじゃん。 ん? でもなんでそれが言いにくい話になってるわけ?」

華「あの~、その絵のモデルがですね。」

ユミ「は!! まさか!!」

華「はい、そのまさかでして・・・。 ユミさんとあきら君を・・・。 内緒で描いてしまってすいません!!」

ユミ「はぁぁぁぁぁ。極力人前に出ない隠遁生活を心がけていたのに・・・。これで有名になったら酔っぱらって路上に転がったらすぐネットニュースに・・・・。」

華「いや、それは無いかと・・・。むしろ先日通行人に写真は何枚か・・・。」

ユミ「まじか!! やべぇな。そいつ見つけて抹殺しないと!!」

華「いや、そっちの方がネットニュースになってしまいますので・・・。」

華「すいません話を戻しますが、その表彰式があるので来週あきら君も一緒に来て欲しいんです。ダメですか?」

ユミ「表彰式? なにそれ? あたしも表彰されんの?」

華「いや、一応壇上に上がるのは私だけなんですけど、やっぱり2人のおかげで頂ける賞なので、2人には見て欲しいな・・・と思いまして。」

ユミ「ふ~ん、まあいいや。でも確かに華の絵は上手いと思ってたから、賞をもらってもそんなに驚かないけどさ~。専門学校通ってるやつがよくそんな賞を見つけたよな。」

華「あ、私以前美大に通ってたので、賞の存在は昔から知ってたんですけど、正直ずっと自信が無くて・・・。」

ユミ「へぇ。 なんかあんなに上手くても自信が無いって不思議だな。」

華「でも今回は自信あったんです。2人を書きながら、『これは絶対受賞する!!』って。神のお告げですね!!」

ユミ「(とうとうそっちの世界に行ってしまったか・・・)」

ユミ「まあ分かったよ。んじゃまたその日に言って。」

華「いいんですか? やった、嬉しい♪」




今日に戻る・・・
表彰式会場・・・




あきら「おかあさん凄いね~。いっぱいおじさんとおばさんが集まってるよ。」

ユミ「ほんとだな。じじいとばばあは堪能出来たから帰るか。」

あきら「ダメだよ~。華ちゃん見なきゃ~。」

ユミ「ま、そうだな。でもあたしスゲー寒いんだよ。店長の愛人から借りたドレスペラッペラだからさ~。ちょっとトイレ行ってくる。」

あきら「うん、じゃあ僕ここで待ってる!!」



ユミがトイレに向かう途中、会場の奥に1点の絵画が展示されていた。
距離はあったが、ユミにはそれが自分とあきらの寝顔であることが分かった。


司会「それではこれより、第113回、〇△▽〇~~~ 表彰式を~」


あきら「すごいねおかあさん、音もおっきいし、何言ってるか全然聞こえない!!」

ユミ「やべぇな、こんなに大きな賞だったんだな」

あきら「あ、華ちゃんだ!!」



司会「では、大賞を受賞された渡辺華(ハンナ)様に賞状と目録の授与を・・・」


ユミ「ん?今名前なんつった?ハナだよな?」

あきら「おっきくてわかんないけど、華ちゃんだからハナだよ。」

ユミ「だよな(でもなんか違う感じ・・・)」


司会「目録として賞金100万円と、1年間の海外留学・・・」



ユミ「100万??? 海外留学???」





第8話につづく


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