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香水を組み合わせてみる

 手持ちの香水が増えてきたので(主にサンプル)、気に入ったものに別の香りをプラスしてバリエーションを作るという事をよくしている。一般的にレイヤードという。シングルノート(香りが複雑でなく一貫しているもの)同士であれば組み合わせやすく、好みに合わせて香りを変えていくことが出来る。ちょっと調香師気分になったりして。

 私は気分にムラのあるタイプで、纏う香りもそこに合わせないとしっくり来ない。音楽も気分に合わせたプレイリストを何十個も作っていて、チクショー朝から元気出して行くぞ、とか、落ち込んではないけどなんかイライラモヤモヤするな、とか、すごく悲しいけど励ましてほしいよ、とか…ちょっと面倒なオーダーだよね(笑)。でも根が暗い人間だから人生に暗い時間が多くて、そうなると暗い気分にも種類があって。香水にもそういう細かい違いを求めて組み合わせを模索しているというわけ。

 落ち込んでいたりモヤモヤはっきりしない気分のときにはキィーンとしたシトラスが効くのだが、本当にメンタルがズドンと落っこちているときはその元気について行けない。愛情に飢え優しく甘い包容力を求めているので、イランイランとホワイトムスクのフローラルがいい。体調も悪くなっているときに甘い香りは吐き気に繋がるため、シトラスでもマンダリンやブラッドオレンジは避けたい。気持ちがある程度穏やかでコントロールできそうであれば、がっしり支えてくれる竹やガルバナムなど力強いグリーンがあるといい。どんな気分でも集中力を求めるならミントだ。余裕を持った穏やかさならインセンス、客観的な目を持ちたいなら乾いたウッディ。

 とにかくいろいろ試し中なので、よかった組み合わせを紹介するよ。


●その前にまだ言う事がある

 私は香りを表現しようと想像を膨らませていくうちに彼らを擬人化させる事がある。必ずそうなるわけではなく、光景などイメージだけである方がむしろ多いのだが、お気に入りの香水のその個性、癖や表情などのディテールを見つけるとうんうん、と頷いて認める。そうするといつの間にか彼らは人物として浮かび上がるのである。
 以下、香水の名前はオリジナルの言語表記にするが、カタカナになった時は人物の事である。曖昧なときもある。
 もしかしたら不快に思われるかもしれないが、いくらか彼らの話も交えていく。


Yuzuki + Biblioteca de Babel + Eau Mohéli

 包容力あるフローラルとウッディを求めて。

1. 腹に Yuzuki / EDIT(h)
2. 鳩尾に Biblioteca de Babel / FUEGUIA
3. 胸に Eau Mohéli / DIPTYQUE

 イランイラン(女性)とウッディ(男性)の甘い抱擁。背景をガルバナムと柚子がみしっと覆い隠す。隠れ家での逢い引き。 絶妙。これは傑作でした。
 香りの強さを考慮した順になっている。Yuzukiの青々しさは最高だな。一気にシュンッキリッとする。Bibliotecaと混ざると力強さが引いていって、図書館から窓の外を見ているくらいの距離感に。Eau Mohéliでテーブルに花瓶が置かれ、急に可愛らしさが加わる。
 Bibliotecaのスパイシーなウッディが広く場を征服するのだが、Eau Mohéliが柔らかく漂ってきて彼を宥め、凝り固まった筋肉は緩んでいく。自分よりもずっと小さな彼女の持つ優しさのなんと偉大な事か。ふたりを包むのは清廉な空気、まっすぐ貫かれる、嘘偽りのない気持ち。
 動いたときEau Mohéli越しにBibliotecaが同じ塩梅で香ってきていい。Yuzukiも強めに香るはずだが、Bibliotecaが強めなのもあって混ざり合うのか、あまり草の強烈な匂いはしない。シトラスの方が伝わってくる。その誠実さがまたいい。Bibliotecaのどっしりと伝わってくるウッディの安心感は、どちらかというと無口で不器用な男性の背中のようなのだが、共感力の強い彼女と森の中へ入っていったことで、自然に心を開いたんだろう。言葉も表現も足りないが思いやりはしっかり伝わってくる。
 Eau MohéliがEDTなのもあり、最後はBibliotecaが強く残っていく。レディファーストだ。


Café Chantant + Oud Nude

 凍える寒さにうってつけ、ほかほか甘々の香り。

Café Chantant / NOBILE 1942
Oud Nude / GUERLAIN

 この日は雪だった。ほかほかの甘い香りにしようとCafé ChantantとOud Nudeを重ねると、アニスとウードが混ざりあいキリッと弾けるようなスパイシーに。ふわっとバニラが香るお茶とスパイスの効いたドライフルーツのケーキ。
 全体的にはOud Nudeを補強したような雰囲気で、焼き菓子風のいい香りがふわん。その下に少しアニマリックなウードの重みがズーンといるのだが、ふわっと香る程度だと全然気づかない。しかししっかりとベースを支えているから、甘さがどこかに飛んでいってしまったりしない。暖かい空気が上に向かっても壁にぶつかり循環して降りてくるような。
 Café Chantantの軽やかな甘さが煙のようにぷわぷわと充満してる。ウードヌードお嬢様のお屋敷でパーティーかな?アルコールはなし。暖かい部屋の中でうら若い乙女たちがお茶とお菓子を楽しみ、外では雪が降っていることなどすっかり忘れ、いつまでも談笑している。

(※ゲラン日本公式サイトからウード3種のページが消えていたのでUSサイトのリンクを貼っておく)


Muskara Apis + Luna Roja

 昇天しちゃいそうなほど甘くておいしい。

Muskara Apis / FUEGUIA
Luna Roja / FUEGUIA

 トーストに蜂蜜をかけたらトロトロじゅわぁって滲み出すあの感じ。赤ワインとイチゴのジャムもプルプルとしていて…。贅沢。じゅるり。
 Muskaraが効いてくると、そんなかわいいグルマンも一気にエロくなる。急に肌の匂い、腕を抱きしめ首筋に鼻をこすりつけて吸い込むあなたの匂い。もう赤ワインのMuskaraを出してほしいぐらいにいい組み合わせ。ローズとは違うんだ。この心地よい甘さ…。エディション(Luna Roja: II-XXII)のおかげもあるな。
 Muskara Apisがそもそも蜂蜜の香りでアニマリックだった事もあり、エロに転がり落ちていくのが早い。トーストを食べておいしい!って言っていたはずなのに気づくと二人は全裸になってふざけあっているしもう酔っている、外は夜だし月が「とっぷり」と言っている、キャンドルの明かりがゆらゆら静かに影を作っている…。


Oud Nude + Arancia Rossa

 ウードヌード嬢とアランチア氏の官能的な夜。

Oud Nude / GUERLAIN
Arancia Rossa / LABORATORIO OLFATTIVO

 初めて両者を肌乗せしたのは同じ日。右の手首にArancia Rossa、肘の内側にOud Nude。これが絶妙なコンビネーションだったのだ。それからひと月でふたつとも購入した。これは、本当に!どっちもおすすめ!
 同じLABORATORIO OLFATTIVOの柑橘シリーズ(ジャン=クロード・エレナによる全4種)の中でも、甘い香りのMandarinoと比べてArancia Rossaは飴のような琥珀色と蜂蜜のような粘度、濃厚な甘みがある(Mandarinoは爽やかな甘さでリアルな果物に近い)。そこに加わるOud Nudeの妖しくも上品なさま…。
 ウードヌード嬢、彼女は大人しく自己主張もなく、その立場以上に目立つ要素はこれと言ってない。わざと知性も欲望も隠しているのだ。その方が都合がよく、事を荒立てることなく、誰もが気付かないぐらい自然に、思い通りに動かせる。地味な服装で襟をきっちり上まで留めているが、その知性を湛えた瞳からは老若男女を魅了する妖しさが滲み出している。
 対しアランチア氏は見た目にも華やかで、常にキラキラした何かが四方に飛び散っている。同年代と比べて堂々として落ち着いているが、瞳はいたずらっ子の少年のようだ。社交的で愛嬌があり、頭の回転が速い。伝統を守りながらも次々湧き出す自由な発想にはみなが舌を巻く。彼はみなが気付かないウードヌード嬢の本性をひと目で見抜く。彼女もアランチア氏の本当の狙いが手に取るように解る。飛び抜けた知能を持つ二人にだけは何もかもがお見通し。立場を考え二人きりになったりなどしない、しかしふたりの思考が交差し合い目的への経過が絡み合うたびに、なんとも言えぬエクスタシーを感じるのだ。だってこんな人他にいない。
 一言で言うとドエロくなって官能的な気分になります。(笑)。エロさがムンムンしてきます。むしゃぶりつきたくなるな…。Arancia Rossaは単体なら朝でも昼でも普通に使えるのだが、夜に使うと急にエロさを増す。そしてOud Nudeと目が合った瞬間、二人はドロドロに溶けて…。


La Vénus de Milo + Luna Roja

 森でワインを楽しむ女神とニンフたちの姿。紛れ込む人間。

La Vénus de Milo(ミロのヴィーナス) / OFFICINE UNIVERSELLE BULY
Luna Roja / FUEGUIA

 この2つの香りをご存知の方なら簡単に想像がつくと思う。濃厚むんむんなエロスが爆発してる…これはやばい…め、めちゃくちゃいい匂いする…!ハァハァ
 マンダリン、イランイラン、アンバー、ムスクと、ただでさえうっとりするような甘い女性性満載な香りだったのが、かわいらしい赤ワインが混ざって女神様がより奔放に。肌もあらわに笑顔で甘口ワインをガブ飲みしていらっしゃる。無礼講である。居合わせてしまった人間、あとで人生破滅してもいい、このチャンスを逃すなー!と欲望に歯止めがかからない。乱痴気騒ぎののち、気付くとそこは冷たい野っぱら。誰もいない…女神様は?妖精に騙されたのか…? 夢だったのか…。


Mimosa + La Cautiva

 幼い日々、クリーム色の香り。

Mimosa / LE COUVENT MAISON DE PARFUM
La Cautiva / FUEGUIA

 幼さの残る女の子がちょっと寄り道、ドキドキと誘惑の方へ足を踏み入れる。 キラキラ暖かい陽を浴びた一面のミモザ。甘いカシスの汁が袖を汚す。この世界はまだ夢の延長線上にある。
 LE COUVENTのMimosaは本当にリアルなミモザで、大きな花束を抱えたような、花畑の中を歩くような。風は冷たいが陽は暖かく、まだ世界が未知の可能性に溢れていた頃。自分には無限の選択肢があった頃。否定的な現実よりも肯定的な夢と地続きだった子供時代。
 エレナ自身が調香したシグネチャーシリーズは、彼が監修した他のシリーズとは明らかにクオリティの次元が違う。彼の創る香りって空間そのものを切り取ったようなんだ。「それそのもの」でも「その場所」でもなく、「あの時その場所にいた自分」なんだ。 だからテーマとなる香りだけじゃなく、その場の空気と安らいだ自分の気持ちまで含まれてる。この表現力がすごい。無駄がなくちっともごちゃごちゃしておらず、至極シンプルだったりする。それなのにこのクオリティはどうだ。
 …と褒めちぎっておいて、そのクオリティに別の香りをブッ込むという神をも恐れぬ行為をしてしまう異端信者(私)。
 La Cautivaはミルクの香りにカシス果汁がじゅわっと溢れる優しい香り。この優しさがMimosaの「子供の頃の記憶」っぽさにマッチし、「夢で見た昔の記憶」に変わる。現実の自分の視点と気持ちがうっすら入り混じったあの頃への郷愁、甘酸っぱい思い出。


Oud Andes + Eau Mohéli

 頭で考えるセックスファンタジーと体が求めるセクシャルフィーリング。

Oud Andes / FUEGUIA
Eau Mohéli / DIPTYQUE

 この日Oud Andesのスプレーが霧状にならず水鉄砲のように噴射されたため、ティッシュで肌を拭いながら何度かプッシュしてスプレーの調子を確認していた。そうしたらいつもと香り方が違ってなかなかいい。香りの輪郭がよりはっきり見えてくるというか、甘さがよく伝わってくる。含まれているMuskaraが素早く馴染んだのかもしれない。
 そこに加わるEau Mohéli 。うっとりフローラルで相性は微妙かと思いきや意外にマッチ。Oud Andesはプライベートな意味でのアニマリックさを思わせる甘臭さがあり、対しEau Mohéliはイランイランの溢れんばかりの女性性を強調した慈愛に満ちたフローラルだ。ふたつが誘引しあい、甘さが繋がり、Oud Andesは肉体、Eau Mohéliは精神の、それぞれの性愛表現へと発展した。エロい。


Cactus Azul + Oud Nude

 緊張でこわばった体をほぐす安定剤。

Cactus Azul / FUEGUIA
Oud Nude / GUERLAIN

 この日は神経が疲れていたらしく、夜になって焦燥感、不安感からイライラがつのり、限界にきてワーッと感情が溢れてしまった。一度ストレスで体を壊してからというもの、ちょっとストレスを感じるとすぐ胃痛が起こるようになってしまった。声をあげて何時間も泣きじゃくるような経験をして以来、自分の事を話そうとするとすぐ涙が出てくるようになってしまった。不便な体だ。そんだけ我慢して抑圧してたんだねもう仕方ないね。はい。
 甘さはいらないからシトラスがいい。でも落ち着いた優しさもほしい。ということでこの組み合わせ。ミントのおかげで気分がスーッとしてくる。シトラスのまっすぐ突き抜ける涼しさも気持ちがいい。ウッディとOud Nudeのインセンスが混じり合いじんわりと効いてくる。パウダリーな優しい甘さと落ち着きが絶妙に絡む。これはいい組み合わせを見つけたわ…。めっちゃ効くわコレ…!
 Cactus Azulは一本筋の通ったYuzukiとは違い少し捻くれたようなところがあって、しかし何を言われても自分の信念を貫くような、そういうクセの強さがある。この感性がピタッとはまるときには大変効くが、融通の効かなさがはまらない時はあまり好きじゃない(笑)。
 アスールは愛想はないものの優秀で信頼できる学者だ。いつも眉間に皺が寄って社交的になろうとはしないが、必要なときに必要な事だけ喋り、やる事だけやって、それ以外は愛想もフォローもしない。よく脈絡のない言動をする事がある。それは先を見越して先手を打っているだけなのだが、中間を想像できない者には分からない。あいつは無愛想で意味の分からない事ばかり言ってまともな会話一つできないのだとバカにされる事もしばしば。しかし分かるやつだけ分かればいい、バカは説明しても分かろうとしないと嫌味を言って進んで孤立する。唯一、賢いウードヌード嬢とは安心して話せるためいくらか饒舌になる。愛想はないが。
 ウードヌード嬢は彼の人間性はどうでもよく、知識だけ享受しに行く。例え皮肉を言われたとしても、日頃の行いを鑑みれば自分に不利な事などない。彼もただ言うだけで本気ではないのだから真面目に受け取るようなものではない。わかっているからこそ彼女も安心して彼と話せる。


Mimosa + Yuzuki

 朝露を輝かせる陽の香り。

胸に Mimosa / LE COUVENT MAISON DE PARFUM
腹に Yuzuki /EDIT(h)

 MimosaとYuzukiの黄色い組み合わせ。両者ともにリアルな植物の香りで、胸いっぱいのミモザと青々と茂る草の匂い。土の匂いはしないのできっと私は室内から外を見ている。活けたミモザの香り、窓から溢れてくる力強い青い匂い。柚子がやる気スイッチを押してくれる。元気いっぱいじゃないけど、よし、やるか!
 こういう透き通るような雑味のない香りは本当にいいもので、朝ムエットに吹き付けてクローゼットなどに吊るしておくと、着替えや化粧をしている間に大変よく効く。もちろん自身につけて出社すると、朝ですよー!無理せず笑顔でいきましょう!という気分になれる。優しい応援。Yuzukiは少し香りが強いのでもっと遠いところに付けてもいい。近いとよりキリッとしてくる。


Oud Nude + Luna Roja

 タイプの違うふたりの女子会。

Oud Nude / GUERLAIN
Luna Roja / FUEGUIA

 Luna Rojaの持つ甘いガーリーな雰囲気にはなったが、キャッキャとはしゃぐ様子はない。恋バナはしているが、静かにしている。ルナロハちゃんはウードヌード嬢からいろいろ聞き出したいようだが、嬢は態度を崩しきらず詳らかにもせず。やっぱりウードヌード嬢の方が圧倒的に上手だった。そりゃあそうか…。
 と思ったのだが、少し経つと両者とも酔いが回って、官能的な雰囲気へ。話題が下ネタになったというより、二人の間にセクシーな雰囲気が起き始めた。こうなると二人が溶け合うのは早い。ベリーのような甘く透明感ある濃いピンク色とパウダリーな甘さが漂うサンダルウッド、妖しくもガーリーな可愛らしさは保たれ、我を忘れるような激しさもなく、睦み合っている。
 ウードヌード嬢が攻めですかね。


Muskara Phero J. + Mimosa

 オリジナルムスカラシリーズ、ムスカラミモザ。

Muskara Phero J. / FUEGUIA
Mimosa / LE COUVENT MAISON DE PARFUM

 今晩の気分は…甘ったるいのはいや、植物の香りがいい、あんまり酸味もいらない…とコレクションのムエットを嗅いでMimosaを選択。Muskaraも足し、寝香水に合うよう爽やかすぎない雰囲気を狙った。
 時間が経つとMuskaraが効いてマロマロとしてきて、一面ミモザが咲き誇っていた風景が夢のようにとろとろ溶けていく。植物臭さが肌に馴染んでいく。あの爽やかさ、花そのものの良い香りはありつつも…ほっと落ち着く自分の匂い。とてもいい。自然な軽い甘さがいい。
 こうやってオリジナルムスカラシリーズをどんどん作りたいですね。


Luna Roja + Café Chantant

 夜のおたのしみ。今日はチートデイ。

Luna Roja / FUEGUIA
Café Chantant / NOBILE 1942

 甘くて美味しい!お酒がたっぷり染み込んだビスキュイにイチゴとベリーのコンポート、バニラをふんだんに使ったクリーム。
 Luna Rojaが赤ワインの香りなので、これは夜向け。甘く飲みやすい口当たり。Café Chantantはバニラにチェリーとアニスが効いたあまーい外国の焼き菓子。酒飲んでケーキも食べちゃう。金曜の夜だもん。
 合わさるとワインとチェリーを表していたローズの香りが、煮詰めたイチゴのようなベリーのようなイメージに変わる。お酒はバニラを合わさってケーキの生地にたっぷり染みていく。もうこれ本当にかわいくておいしいです。ただどう考えても冬向け。暖かい時期にはちょっと胸焼けしそうだな。


Oud Nude + Oud Andes

 ふたりのウード嬢、アクの強い最強コンビ。

Oud Nude / GUERLAIN
Oud Andes / FUEGUIA

 FUEGUIAのウードシリーズは圧倒的にアニマリックなウードで、シンプルに言って臭い。それがいい。それに比べたらGUERLAINのウードは中東の香り文化におけるいろいろな香りが混ざったウードで、どちらかといえばインセンス。
 同じ名前を持つ異国の留学生の登場によって、地味めに装いスンと澄ましていたウードヌード嬢の本性が露わになる。アンデス嬢はヌード嬢のお屋敷に招かれパーティーに参加、アンデス嬢は考えながらゆっくりと英語を話し、しかし淀みなく受け答えをする。丁寧に優等生ぶりを披露しながら、ちらりとキレの良い言葉を放ち周囲をドキッとさせるが、これは正しい言葉か、違う言い方があるか、と続くのでみなホッとして会話が続く。彼女の賢さをヌード嬢はすでに見抜いているが、アンデス嬢自身は自覚がない。実は彼女は天然ボケだった。
 アニマリックさマシマシ。Oud Andesの靴や鞄のような革製品の鈍い煙たさにバナナの皮のような濃い体臭、そこにOud Nudeの伝統が染み付いた重たいカーテンや家具の匂いと上品なパウダーの甘さが乗り、二人はなんとも良いコンビになった。このまま二人で難事件をバッサバッサと解決していきそうだな。なんの話だ。ヌード嬢のお屋敷の中に、突如現れる高湿度の密林ジャングル、ときに乾燥し冷たい風が吹きすさぶ…。周りの人にはこれが幻覚なのか夢なのかわからない。二人のペースに乗せられ操られているだけなのだ。
 さらにOud AndesにはMuskara Phero J.が入っているので、これが効いてくるといよいよ何度も嗅ぎたくなる馴染みのある甘臭さになるのだが、Oud Nudeが被さるからいつもよりグッとラグジュアリーでハイクラスな雰囲気になる。エロよりも社会的な意味で上級者感が強い。私がつけていいの…?



 以上です。おいしいかエロいの2パターンばかりでしたね。これが私の本性か。
 書いている間にも増え続けてキリがないので、ひとまずこの辺で。溜まったらまた紹介します。

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