にじむラ

毎日必ず1000文字くらいの短編作品を書く男。 扉絵はAIが担当。ときどき自分で撮った…

にじむラ

毎日必ず1000文字くらいの短編作品を書く男。 扉絵はAIが担当。ときどき自分で撮ったやつ。 金周りの悪さにPV屋から遠ざかり、最果タヒで詩を諦めた元詩人。

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  • 波打ち際ブンガク

    波打ち際ブンガク1年目が500円で読み放題! 360本くらいのオリジナル短編小説(1000字前後)がいっぱい。しかも読みきりばかり。 扉絵はAI出力!これはお得だ!

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【小説】さよなら、チャタロウ

 ブゥゥーーン、と鈍く低い音が鳴って、チャタロウは目を覚ました。  血の匂いとその温度がチャタロウの中で広がっていく。  その中でチャタロウは思い出していた。  チャタロウは世界の形を知らない。だからキリコの輪郭も曖昧なままだ。  チャタロウがキリコの為にできるのはキリコが飽きるまで一緒に生きる事とか、もしくは今すぐにキリコと別れて死ぬことくらいだ。……または殺すとか。その他の全てがエゴでしかない。全てがチャタロウの個人的なエゴだ。  チャタロウは笑った。  チャタロウは思

    • クロスカブのマフラーをヨシムラ(機械曲マグナム云々)からモリワキのメガホンに替えた。ステップを外さないでやると知恵の輪みたいになるしマフラーに擦り傷つくるので、そういうの気になる人は外してね。

      • Re: 【小説】ババアthe読経(no脳know)

        「こちらになります」  スーツの男はおれを振り向きもせずに、ガスメーターに引っ掛けてあるキーボックスの中からディンプル式の鍵を取り出すとドアを開けた。  狭い玄関の右手にシューズラック、左手には洗濯物置き場がある。  短い廊下にはユニットバスとキッチンがあり、その奥には8畳ほどの部屋があった。  東に向いた窓には残置のカーテンが下がっている。  一人暮らしをするには十分な部屋だろう。  駅から徒歩15分、近くにコンビニやスーパーは無し。  住宅街のど真ん中。  極端に日当た

        • Re:【短編小説】メーター

           旧型のバイクに乗っていくつかのメーターを横目に走る。  どいつもこいつも調子が悪そうだ。  かく言うおれの旧型バイクもスピードメーターの中にあるオイルランプが点灯している。  今日はさっさと帰って寝たかったが仕方ない。そのまま近くのバイクショップに寄ってエンジンオイルを足してもらうことにした。  修理工事は連休前の整備待ちバイクがずらりと並んでいる。 「いらっしゃいませ」  様々な油で汚れたツナギを着た従業員は愛想よく頭を下げた。  ワタシはよろしくと言って煙草に火を点け

        • 固定された記事

        【小説】さよなら、チャタロウ

        • クロスカブのマフラーをヨシムラ(機械曲マグナム云々)からモリワキのメガホンに替えた。ステップを外さないでやると知恵の輪みたいになるしマフラーに擦り傷つくるので、そういうの気になる人は外してね。

        • Re: 【小説】ババアthe読経(no脳know)

        • Re:【短編小説】メーター

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          Re: 【短編小説】ピジョン老人ピース

           スマートフォンのアラームが鳴る数秒前に 目を覚ました。 「少しは眠れたか?」  不機嫌そうな猫が訊く。 「緊張。よく眠れない」  おれは働かない頭で返す。  事務所のソファは柔らかいが、革の所為で妙な汗をかいている。  伸びをして足元の観葉植物を蹴り倒しそうになった。掛布団かわりにしていた寝袋をどけてコップ一杯だけ水を飲み、大きなため息をつく。 「おれの朝メシは?」  猫が鼻を鳴らす。  おまえはいつから喋れたんだ?皿に温めたミルクを出してやるが、当たり前のように振る舞う

          Re: 【短編小説】ピジョン老人ピース

          Re: 【短編小説】弱塩基遊離

           雨の匂いがした。  そう思ってテレビゲームが映っている画面から目を離すと、リビングのドアが開いて疲れた顔の母が帰宅した。 「何かあったの」  立ち上がって手伝うか迷っているうちに、母は食卓の椅子を引いて腰かけると、大きなため息を吐いた。 「イオンがね、隣町にとられちゃったんだってさ」  やれやれ、だよ。  そう言って母は腰をさすった。  机の上には様々なビニール袋が並んでいる。 「え?じゃあそれって全部ちがうお店で買ったってこと?」  隣町にイオンを奪われたと言う事はこの街

          Re: 【短編小説】弱塩基遊離

          Re: 【小説】いままでありがとうございました

           公園の入り口に掲げられた張り紙にはそう書かれていた。  芝生には誰もおらず、ブランコは揺れず、シーソーは傾いたまま、滑り台にもジャングルジムにも誰も登っていない。 「これで良かったのかい」  わたしは頷いた。 「あぁ、これでよかったのじゃよ」  虚な公園を見て呟いた。  聴こえてか聴こえずか、横に並んだ婆さんはそうかいそうかいと微笑んで頷いた。  そう、公園は虚だった。  子どもはもちろん、ゲートボールの老人たちもいないし、野良犬や野良猫もいない。  晴れ渡った空が逆に寒

          Re: 【小説】いままでありがとうございました

          Re: 【短編小説】ROSE陸奥

          「判定の結果2-1で勝者、ローズ陸奥」  レフェリーが掴んで挙げたきみの腕が光り輝いて見えたのは気のせいじゃないと思う。  きっと油のせいだ。  1R120秒を闘いぬいて僅差の判定勝ち。  KOなんてのは程遠いギリギリの勝利。  砂色をした君の肌は、油ボウズと言うよりは砂ぼうずだ。  ヘッドギアの奥で照れくさそう笑う顔が可愛らしく見える。  昨日までは目にあんな生気が無かったのにね。  思い出すだけで愛おしさが込み上げてくるし、あの匂いも甦ってくる。  さっき、リングに向かう

          Re: 【短編小説】ROSE陸奥

          Re: 【短編小説】いっしょに

           朝の光はすべて敵。  おれたちは資本主義の走狗で時間の奴隷だ。ほど遠いスローライフ。チャッカンガルー。しぶしぶ起き上がる。  濃いめの珈琲を淹れるつもりで沸かしたお湯はまだ温く、あまり美味しくないと思いながらせっかちな自分を恨む。 「チョヤ」  そう言ったところで「ペルモ」と返ってくることはない。全くスプルーァだ。  普段は買わない少し高い豆を買ってみたのに、もったいないことをした。 「買うか?コレ」  ネット通販の買い物カゴに長らく入ったままの温度管理が出来る電子ケトル。

          Re: 【短編小説】いっしょに

          Re: 【小説】いい肉を食べに

           首元の伸び切ったパイセンのTシャツには三島由紀夫と右翼芸人がプリントされていて、何となくそれを眺めていると唐突に 「一番良い肉ってのは何か知ってるか」  パイセンがおれたちに訊いた。  おれは酔って収縮したパイセンの瞳孔を見ながら何かボケて返そうと思っていると、脊髄反射で「A5ランクの和牛っすか」と返した奴がいた。  パイセンは鼻で笑い  「そんなんじゃねぇよ」  と被せ気味に一蹴して、傾けた缶の底に残ったビールの水滴を舐めた。  ボケを遮られたおれはそれを見て誰も何も言

          Re: 【小説】いい肉を食べに

          Re: 【超短編小説】AGWP検定準2級

           ドアが開き、中から番号札を胸につけた女性が出ていく。その顔は不安げだった。 「次の方、どうぞ」  やたらにタイトなスーツを着た巨乳の係員が私に声をかけた。  オーバルレンズの細い縁が光った気がした。 「はい、ありがとうございます」  その光は私の希望となり得るか。  今すぐその巨乳に埋もれて窒息したいと思いながら、私は大きく息を吸ってからドアを三回ノックした。 「失礼します」  声の張り方に細心の注意を払いながら中に入ると、広々とした会議室の長机に濃い灰色のスーツを着た面接

          Re: 【超短編小説】AGWP検定準2級

          Re: 【小説】嗤ってBABY黄色い煙草の鳩は飛ばず

           写真のデータを確認していると妙な事に気づいた。  一見すると何の変哲もない集合写真だが、生徒たちが全員同じ表情をしている。  現場にいた時は全員が両手でピースをしている様に見えた。  どんなに時代が移ろっても、変化しないものだってあるのだ、といつも微笑ましい気分になる。  しかし今こうして画像データを確認してみると、少し違っていたのだ。  どのクラスの生徒も同じように両手でピースをしながら、奇妙な表情を作っている写真が一枚だけあった。  生徒たちの間で流行なのだろうか。

          Re: 【小説】嗤ってBABY黄色い煙草の鳩は飛ばず

          Re: 【短編小説】募金ロマキャンダッシュ

           その日はとても良く晴れていて、春が終わったことを太陽が告げていたのを覚えている。  もうすぐ夏を告げる雨が降る。  トムヤムトーは血塗れの拳をコートの裾で拭うと、財布から千円札を一枚抜いて黒い箱に投げ入れた。  暇そうな大学生が虚ろな目でそれを見ていた。  首輪のない犬が鼻を鳴らした気がする。  だがトムヤムトーは気にしない。  黒い箱に入れた金はきっと赤くなる。 「それの何が問題なんだい?」  トムヤムトーは黒い箱の後ろに立っている学生風の男に訊いた。男は愛想笑いをして小

          Re: 【短編小説】募金ロマキャンダッシュ

          Re: 【短編小説】虚無の祭壇

          「喰わないのか」  タリビットが訊ねる。  たるんだ頬はシームレスに顎へと繋がり、その膨らみはかつて首と呼ばれた部位を通過して胸部へと接続されている。 「好きにしろよ」  オレはやっとの事で答えた。  タリビットは馬鹿にしたように鼻で笑うと、わざとらしく音を立ててハンバーガーを齧り炭酸飲料を吸い込んだ。  その音を聞きながらオレは机の上に並んだ虚無を見つめている。  今から金を払って食卓に並べられた虚無を食べる。  金を、払って、虚無を。  ゼロカロリー。  糖質オフ。

          Re: 【短編小説】虚無の祭壇

          Re: 【短編小説】月の季節

           どこに行ける訳でもなかったんだ。  自転車、車、オートバイ。  オンナ、パィオ、ヴァヂャィイヌァ。  どれに乗ったところで、ここではないどこにでも行ける訳では無いからね。 「だいたい、二本の手足すらまともに使えない奴が自転車だのバイクだのに乗ったところでどう変わると言うんだ?」  鏡の中でジュベルバーヌしながら嗤う時があるだろ?  ぶら下げた首輪がそれを物語っているんだ。  見えないリードがあって、そのゲルトリッツ範囲の中でしか動けない。  それに遠くまで行ったとしても、そ

          Re: 【短編小説】月の季節

          Re:【短編小説】嗤うヤマザキ(未来はお前の手の中)

          「今日、カワイが死んだよ。俺もそろそろ限界かも知れない」  留守電は切れた。  記録は今日の午後五時過ぎ。  時計を見る。  いまは午後十一時を少し回った頃だ。  もうウンノは死んでいるだろう。  俺は携帯を机に放り投げた。 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎  「がんばれよヤマザキ、お前の未来は俺たちの手の中だぜ」  手を叩いて囃し立てると、ヤマザキは表情を無くした顔で立ち上がった。  フェンスを乗り越えると、指でしがみつきながら背後に広がる校庭を見ていた。 「ひとつ!」  ウンノが

          Re:【短編小説】嗤うヤマザキ(未来はお前の手の中)