週刊・主観 その29 『雑文 あの感覚』

 自分の中に染み付いているのに、未だ言葉にできていない感覚がある。
 
 例えば夕方の、誰もいない公園。
 立ちんぼの遊具たちから伸びる影。ぐんにゃりと歪んで響く「七つの子」。狂ったようなカラス鳴き声。そんな寂しい、そしてどこか懐かしい景色の中にいるときに感じる、何とも言えない灰色の恐怖心と原色の高揚感。

 あるいは、妙な夢から目覚めた直後。
 夢の内容は覚えていない。しかし、殺人鬼の描いた絵のような色彩と、日常では得られないじっとりとした興奮が、脳裏に焼け焦げだけ残している。
 どんな夢を見たのかなんとか思い出そうとしてみるけれど、指先が狂気の余韻を掠めるだけで、結局は全てただの夢となり、いつも通りの日常に戻っていく。
 そんな朝、「あっち側」に戻ろうと躍起になる自分と、「こっち側」に戻ることができて安堵する自分の間に感じる摩擦。

 自分の中に確かに「これ」とあるにも関わらず、言葉で言い表せないままの、奇妙で気持ち悪くて、しかしどこか幸福な感覚。

 最近、久しぶりに「あの感覚」を覚える作品と出会えたので紹介します。

 伝わりました?????

 最近ハマってしまってほとんど毎日見てます。なんかこう、「オモシロ」要素はいっぱいあるんだけど総合的には全く「オモシロ」になってないというか。毒気が強すぎるというか。石野卓球の顔が"This man"に似てるのもたぶん良くない。ピエール瀧が映ると安心する動画ってなんだよ。あと改めて聴くと曲めっちゃ良いな。ラップしながら歩いてくるところすげぇかっこいい。

 わたしはこのMVに得体の知れない不気味さみたいなのを感じていて、ただそれはかなり好きな類の不気味さなので、常にこういう感覚を求めて生きているところがあります。
 他に例をあげると、現役時代の村西とおる監督がブリーフ1枚でカメラ持ってなんか叫んでる写真。これねぇ、「村西とおる」「ブリーフ1枚」「カメラ」「叫んでる」のロイヤルストレートフラッシュ揃わないとダメなんですよ。1つでも欠けたら何も感じない。あとカメラ目線もNG。他所向いて叫んでてほしい。

 ここまで読むと「お前男の上裸が好きなだけじゃねぇの?」って言われそうですけど、すいませんちょっと正しいかもしれない。別に鍛えられてるわけでもないヌルンとした男性の上裸って、状況や表情にもよるけどけっこう不気味。でも決してそれだけが条件なわけではないです。上にあげたMVでわたしが1番「あの感覚」を感じるの、2分9秒あたりの石野卓球ですから。このとき着衣でしょ?

 あと、初期の大人計画のポスターや宣伝ビジュアルもかなり良い。『ふくすけ』戯曲本の表紙とかね。めちゃ最高。著作権的に画像貼っていいもんかわからんので気になった人は調べてみてください。

 「あの感覚」について未だに言語化できないし、その条件もハッキリとはわからないんですけど、でもなんとなく共感してくれる人いるんじゃないかなぁ。初期のクレヨンしんちゃんの映画ってけっこう悪夢っぽい絵だったり演出多いじゃないですか。アレが好きな人とか。
 
 あなたが「あの感覚」を覚える作品、よかったら教えてください。

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 「いや公演本番の週なのに宣伝ないのかよ!制作失格!犬の糞以下の存在!」って思いました?
 今回は記事の構成上最後に宣伝です。ここまで読んでくれた酔狂な人にこそ、観に来てほしいからね。あと犬の糞以下は言いすぎだよ。

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もりげき八時の芝居小屋 第177回公演
祝・旗揚げ10周年記念!! 劇団ちりぢり第7回公演
午後9時半には外にいたい ~盛岡劇場の退館時間を守れる大人になるための40分~』
作・演出 藤原瑞基

【場所】
盛岡劇場 タウンホール

【日時】
10月 26日(水) 20:00~
  27日(木) 20:00~
  28日(金) 19:30~
※会場は各30分前

【料金】
前売り 1000円
当日  1200円

【キャスト】
藤原瑞基
本田瑶子
盛ゆうじ
平戸謙好(ボーイズドレッシング)
石原黎子(現代時報)

【予約フォーム】
https://www.quartet-online.net/ticket/8siba-177chiri

★ 公演詳細はこちらから
劇団ちりぢりHP : https://chiridiri.web.fc2.com/
劇団ちりぢりTwitter :劇団ちりぢり(@chiridiri)さん / Twitter

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 いよいよ今週水曜日から、3日間上演です。昨日仕込み初日だったんですけど、久しぶりに平台運んだり箱馬運んだりバタバタ動いたら今日ずーっと太股攣ったみたいになってました。バラシ終わるころには引きちぎれちゃってるかも。引きちぎれないようにがんばります。
 猛スピードで変化し続ける世界の只中で、遠くに揺らめく「永遠」の蜃気楼を目を細めて見つめるような、そんな儚さもちりぢりの演劇にわたしは感じています。儚くて図太くて苦くて甘くて、なんか観た後元気が出てる。そんな「アドレナリン浴びせ演劇」観に来てね。

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