所沢市下水道マンホール蓋広告を現地調査した

■はじめに

 所沢市上下水道局は平成30(2018)年5月から 下水道マンホール蓋を活用した広告事業 を行っている。これは鉄蓋の中心にポリカーボネート製のカバーをつけて広告を掲載するというもので、所沢駅西口など6つの駅前にあるマンホールについて広告主を募集している。実際の広告掲載は 同年10月から始まり水道局の Facebook でもちょくちょく宣伝されていた。

 これは市政ウォッチャーとしてちゃんとチェックしておかなければ、ということで2019年6月29日、市サイト に掲載されている地図をゲットし、各駅前のマンホール蓋で広告っぽい絵柄になっているものを現地調査した。地図には広告募集対象となっているマンホールの場所が数字で記載されているが、実際には対象外でも広告が掲載されているマンホール蓋が存在した。市サイトに書かれているように「その他、人通りの多い歩道など、ご要望に応じて設置することも可能」ということなのだろう。

 現地調査の結果、13箇所 のマンホール蓋が広告っぽい絵柄になっていることが分かった。以下の各セクションでは駅前ごとに地図と写真で、マンホール蓋広告を現地調査した結果を示す。地図上の赤枠・赤字の数字は募集対象だが広告がついていない地点 (市の地図の表記に準拠)、赤塗り・白字の数字は募集対象であり広告もついている地点、青塗り・白字の英字は市の募集外だが広告がついている地点である。

■所沢駅西口:2箇所に広告

▲所沢駅西口の地図 [市サイト掲載の地図を元に筆者作成 | 掲載ページ | PDF]。募集は1箇所のみだがそこに広告はまだなく、むしろ募集外の2箇所に広告が掲載されていた。

▲所沢駅西口「a」の地点にあるマンホール蓋広告は、韓国ドラマ「マンホール ~不思議な国のピル~」。おそらく市内で最も有名な蓋広告だろう。市サイトで報道発表されたり産経新聞朝日新聞 が報じたり、とこブロさんでも話題になったり している。

▲所沢駅西口「b」には、建設会社「ニシキ建設」の広告。本社は市内の若狭にあるようだ。

■所沢駅東口:3箇所に広告

▲所沢駅東口の地図 [市サイト掲載の地図を元に筆者作成 | 掲載ページ | PDF]。募集11箇所のうち1箇所、その他にも2箇所に広告が掲載されていた。

▲所沢駅東口「a」には西武鉄道のコーポレートメッセージ。このマンホールは西武鉄道ビルの目の前にある。

▲「b」には西武鉄道のロゴ。こちらも西武鉄道ビルの目の前にある。

▲「9」には美容室「FACE DECO」の広告。同駅では東口側と西口側に店舗がある。

■新所沢駅西口:2箇所に広告

▲新所沢駅西口の地図 [市サイト掲載の地図を元に筆者作成 | 掲載ページ | PDF]。5箇所のうち2箇所に広告が掲載されていた。ペケ印の箇所は広告を募集していないことに注意。 

▲新所沢駅西口「1」には、メガネの「ぼんぼん堂」。まさにこの西口に店舗がある。

▲新所沢駅西口「2」には「狭山不動産」。こちらもまさにこの西口側に所沢店がある。

■小手指駅南口:広告は見つけられず

▲小手指駅南口の地図 [掲載ページ | PDF]。ここではマンホール蓋広告を見つけられなかった。市の地図では確保済みのマンホール蓋は示されていなかったので、想定通りと言える。また、同駅北口も少し歩いてみたが、やはりマンホール蓋広告は見つけられなかった。

■狭山ヶ丘駅東口:広告は見つけられず

▲狭山ヶ丘駅東口の地図 [掲載ページ | PDF] 。ここでもマンホール蓋広告を見つけられなかった。同駅南口も同様である。

■航空公園駅東口:6箇所に広告

▲航空公園駅東口の地図 [市サイト掲載の地図を元に筆者作成 | 掲載ページ | PDF]。少し見づらいので補足すると、駅前ロータリー周辺のマンホール蓋で広告が募集されている。広告は募集対象内外の蓋をあわせて6箇所あり、今回調査した駅前の中では最も数が多かった。以下では「a」から時計回り順に記す。

▲「a」には「ニシキ建設」。所沢駅西口にあった絵柄と同じである。

▲「b」には「所沢市管工事業協同組合」。下水道と親和性が高い広告だ。

▲「c」には「タカヤマ」。有機性廃棄物の収集運搬・処理事業者であり、市内の南永井に本社を置く。右下のキャラクターは「めぐる君」というようだ。

▲「3」には「早稲田ゼミナール」。同駅の西口側に 所沢校 がある。

▲「d」にも「早稲田ゼミナール」。絵柄も同じである。

▲「7」には「加藤商事」。一般廃棄物や産業廃棄物の収集運搬・処理事業者であり、市内のけやき台に本社を置く。


 以上、現地調査で発見したマンホール蓋広告である。地元企業の広告が多い点が、地方自治体の事業らしくていいなあ、と思ったのだった。


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 以下はさらにちょっと調べてみたメモ書きである。

■他自治体の先行事例

 類似の先行事例としては、石川県かほく市 の「かほくARストリート」というものがあるようだ。類似というか、マンホール蓋に広告を掲載するという点は所沢市の事業と全く同じに見えるし、さらに専用のスマホアプリでカメラをかざすとAR表示される点はより進歩的に思える。

マンホールふたを活用した官民協働による地域の活性化 (総務省)
かほくARストリート始めます (石川県かほく市)
ARマンホール、国土交通大臣賞を受賞しました (今村興業)

 後発の所沢市は自市の事業を「全国初」とうたっているが、どのポイントが所沢市における全国初なのか、筆者はよく分かっていない。

■所沢市議会の模様

 ともかく、所沢市の「マンホール蓋広告収入」事業は平成30(2018)年度から始まった。事業の予算案が上程された平成30年3月定例会では、広告料収入の見込みや算出根拠について説明や質疑がなされた。

◎中村上下水道事業管理者 それでは、上下水道局所管の議案につきまして御説明申し上げます。
〔…〕
 最後に、主要な事業につきまして御説明いたします。議案資料ナンバー2の216ページをお願いいたします。
 自主財源確保促進事業でございます。
 この事業は、市内各所にございます下水道のマンホールぶたに広告を掲載し、広告料収入を見込むものでございます。平成30年度につきましては、10カ所のマンホールぶたにつきまして収入を見込んでおります。
〔…〕
[所沢市議会 平成30(2018)年3月定例会 02月21日-02号 中村上下水道事業管理者の説明]
◆11番(谷口雅典議員) 次に、項目の3、議案第21号について、「稼げ下水道」というふうに書かせていただきました。
 事業概要調書216ページの右下の金額です。平成31年度以降の金額のうち、広告収入料はどのようになっているかお答えください。

◎玉川上下水道局長 お答えいたします。
 事業概要調書に記載のございます翌年度以降の見込額、これの収入欄でございますけれども、こちらの欄には広告料収入と受託工事収益、これの合計額が記載されております。
 このうち広告料収入についての御質問ですけれども、31年度はマンホールふた20カ所の分の額を、また、32年度は30カ所、33年度は40カ所の額を広告料として計上いたしております。具体的な額でございますけれども、広告料を月額7,500円といたしまして、これを12カ月(1年分)として9万円、それに今申し上げましたそれぞれの設置数を乗じ消費税を加算した額でございまして、金額を申し上げますと、31年度は192万6,000円、32年度は297万円、33年度は396万円を見込んでおります。
 以上でございます。

[所沢市議会 平成30年3月定例会 03月06日-05号 谷口雅典議員の質疑と玉川上下水道局長の答弁] (強調は引用者による)

▲事業概要調書。収入・支出の見込み額を見ると、平成30年度については差し引き464千円の収入ということのようだ。 [平成30年第1回定例会市長提出議案 議案第13号 平成30年度所沢市一般会計予算 議案資料 216ページ | 掲載ページ | PDF]

 そして 所沢市道路占用料徴収条例 の改正案が上程された平成30(2018)年9月定例会では、広告が掲載されたマンホール蓋に関する占有料の徴収の根拠や、占有料の額の根拠が質疑された。

◆26番(村上浩議員) 〔…〕
 では、次に、議案第92号、所沢市道路占用料徴収条例です。議案資料ナンバー2の73ページ、それから、次のページの新旧対照表のところになりますが、今回、上下水道局のほうで広告マンホール蓋をつくったことによって、その占用料を徴収しようという、そういった追加をする議案なんですけれども、その広告マンホール蓋について占用料徴収ができるという、これもともと何の根拠をもってこの広告料を取れるのか ということ。建設部長、よろしくお願いいたします。

◎嶋村建設部長 お答えいたします。
 占用料の徴収につきましては、道路法第39条第1項 の、道路管理者は、道路の占用につき占用料を徴収することができるとの規定を根拠としております。上下水道局が設置するマンホールは、公営企業に係るものとして占用料が免除になっておりますが、マンホール蓋を媒体として利用する営利を目的とした広告事業でありますことから道路占用料を徴収する ものでございます。
 以上です。

◆26番(村上浩議員) 道路法に規定されて、できる規定ですので条例を策定しているということだと思うんですが、所沢市で同じように占用料を広告に関して徴収しているケースについてお伺いしたいと思います。

◎嶋村建設部長 お答えいたします。
 例としまして、電柱やバス停留所標識、こういったものに添架された看板などに対しまして道路占用料を徴収しております。
 以上でございます。

◆26番(村上浩議員) そこで、この新旧対照表の中にも金額が書いてあるんですが、今回のこのマンホール蓋についての占用料ですね、これが 2,200円 ということでなっていますけれども、これのいわゆる求め方、どういう根拠でもってこの金額になったのかをお示しいただきたいと思います。

◎嶋村建設部長 お答えいたします。
 一般的な常設看板、こちらにつきましては、本条例第3条に基づきまして、表示面積1㎡につき1年当たり4,400円の占用料を徴収しております。ただし、先ほどお示ししたバス停留所標識柱に添架された看板につきましては、広告物を加えましても占用面積が増加しないため、2分の1を減免した表示面積1㎡につき1年当たり2,200円を徴収しております。今回のマンホール蓋を利用した広告につきましても、同様のものとして取り扱うものでございます。
 以上でございます。

[所沢市議会 平成30(2018)年9月定例会 09月07日-02号 村上浩議員の質疑と嶋村建設部長の答弁] (強調は引用者による)

所沢市道路占用料徴収条例 の新旧対照表。「マンホール蓋 (広告が表示されているものに限る。以下同じ。)」は「表示面積1平方メートルにつき1年」で「2,200」円の占有料と定められた。[平成30年第3回定例会市長提出議案 議案第92号 所沢市道路占用料徴収条例の一部を改正する条例制定について 議案資料 74ページ | 掲載ページ | PDF]

 実際にどれだけの収支になったのかは、まだ平成30年度決算が出ていないので分からない。決算特別委員会は例年10月に開催されるようなので、そちらをウォッチするのも面白いかもしれない。

■以下は蛇足

(ここまで調べて、[PDF] 所沢市上下水道局マンホール広告の掲載に関する要綱 (掲載ページ) に定められた「広告料」と、所沢市道路占用料徴収条例 に定められた「占用料」の関係が分からなくなってきた。ひとまず両者がイコールだと仮定してみる。マンホール蓋の広告部分は「直径44cmの円形部分」であり、この部分が占有料の対象となる面積だとするならば、占有料は 0.22 [m]×0.22 [m]×3.14×2,200 [円/{年・m^2}]÷12 [月/年]≒ 27.9 [円/月] と計算できるだろう。これは要綱に定められた「掲載載期間1か月につき1か所当たり7,500円」と一致しない。マンホール蓋全体だとしても半径はたかだか2倍だろうから、面積はその2乗で4倍、占有料を再計算すると 27.9×4= 111.6 [円/月] で、やはり一致しない。ということは、両者はイコールでないか、私の計算式が誤っているかのどちらかだろう。ただ、イコールでないと仮定すると、前述の要綱に占有料の納入について書かれていない点が気になる。いずれにせよ、もうちょっとちゃんと調べてみた方がよさそうに思えてきたが、それは未来の自分に譲ることにする。)