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所沢市議会に通年会期制が導入される

 去る所沢市議会2023年12月定例会において、通年会期制の導入のために条例等を改正する3議案が議員提出議案として上程され、いずれも表決に加わった議員全員の賛成によって可決された。これにより、当該条例等の施行日である2025(令和7)年5月1日から通年会期制の所沢市議会が始まることになる。

 通年で開かれている議会への移行は、所沢市議会では2017(平成29)年6月から議論が始まり議会が主導し党派や会派の別なく議員の改選があっても継続的に協議されてきた、議会改革の大きな柱のひとつであった。それがついに実現されることを、私は市民(所沢住民かつ citizen)として嬉しく思う。

 この記事は、私が通年会期制について「調べもの学習」した結果をまとめたものである。所沢市の既存の諸条例や所沢市議会における導入については所沢市例規集や市議会サイトの次のページを参考にしている。また、通年会期制そのものの理解についてはこの記事の最後に参考文献をつけた。記事を読んで興味を持たれた方はこれらの情報源にもあたっていただきたい。

 通年会期制については地方自治法(以下、単に「法」ともいう。)、特に2012年改正の理解もまた不可欠である。この記事では条例や法の関連する条文を引きながら、通年会期制やそもそもの「通年で開かれている議会」について見ていくことにする。法については特記ない限り、施行日が2024年1月1日の条文を参照している。

   ◇

通年で開かれている議会とは何なのか

 まず市議会についてざっとおさらいしておくと、市議会は市の予算や条例などを議決する機関であり、いわば『市の立法府』である。毎年何回か定期的に招集される定例会と臨時に招集される臨時会があり、いずれも開かれている間のみ権能を発揮し、議会で議決した会期末が到来すれば閉じられ、また次の招集を待つことになる。定例会の回数は条例で定めるものと規定されているところ、所沢市議会の定例会は年4回であり、多少前後や伸長はするものの標準的には3月頭、6月頭、9月頭、および12月頭からそれぞれ1か月間を会期として開かれている。

第百二条 普通地方公共団体の議会は、定例会及び臨時会とする。
 定例会は、毎年、条例で定める回数これを招集しなければならない。
 臨時会は、必要がある場合において、その事件に限りこれを招集する。
④・⑤・⑥ (略)
 普通地方公共団体の議会の会期及びその延長並びにその開閉に関する事項は、議会がこれを定める。

地方自治法(抄)

地方自治法(昭和22年法律第67号)第102条第2項の規定による所沢市議会の定例会の回数は、毎年4回とする。

所沢市議会定例会条例(昭和31年9月24日告示第106号)

所沢市議会定例会条例に基く所沢市議会の定例会は、毎年3月・6月・9月及び12月にこれを招集する。但し、都合により繰り上げ、又は繰り下げることができる。

所沢市議会定例会に関する規則(昭和37年6月21日告示第147号)

 通年で開かれている議会とは、定期的に招集される会の回数を1回とし、その会期を1年間またはそれに近い期間として開かれる議会である。年中ほぼいつでも議会の権能を発揮でき、また臨時に招集される会がほぼ不必要になることから、迅速な議決が可能になることなどがメリットとして挙げられる。なお、「通年で開かれている」と言っても毎日のように議事堂に議員や市長が集まっているわけではなく、定期的または必要に応じて実際の会議を開く旨の条例や規則が自治体ごとに定められている。

運用による通年議会(法第102条のハック)

 通年で開かれている議会を実現する方法は2つある。ひとつは、いわゆる運用による通年議会である。これは従前からの法第102条をハックして実現する方法であり、年1回という定例会の回数は同条第2項が規定する条例で定め、また1年間という会期は同条第7項が規定する議会の議決で定めるものである。他市の事例を見ると、埼玉県久喜市議会は2022(令和4)年5月から運用による通年議会を導入している。

地方自治法(昭和22年法律第67号)第102条第2項の規定に基づく久喜市議会の定例会の回数は、年1回とする。ただし、議員の任期満了、議会の解散又は議員が全てなくなったことにより、一般選挙が行われる場合は、この限りでない。

久喜市議会定例会条例(令和4年3月4日条例第17号)
久喜市例規集より)

久喜市議会定例会条例(平成22年久喜市条例第7号)に基づく久喜市議会の定例会は、毎年5月にこれを招集する。ただし、議員の任期満了、議会の解散又は議員が全てなくなったことにより、一般選挙が行われる場合は、この限りでない。

久喜市議会定例会規則(令和4年3月4日規則第11号)
久喜市例規集より)

通年会期制(法第102条の2の規定)

 もうひとつの方法は、所沢市議会も導入する通年会期制である。これは法第102条のハックではなく、法第102条の2(条番号の細かな違いに注意せよ)が規定する条例の制定によって、年1回で1年間という回数および会期を定めるものである。所沢市議会における詳細は次節にて述べる。

第百二条の二 普通地方公共団体の議会は、前条の規定にかかわらず、条例で定めるところにより、定例会及び臨時会とせず、毎年、条例で定める日から翌年の当該日の前日までを会期とすることができる。
②~⑧ (略)

地方自治法(抄)

通年会期制によって何が変わるのか

通年会期と定例日

 所沢市議会の会期が毎年、5月1日から翌年の4月30日までの通年会期となる。そして法第102条の2第2項の規定により、毎年5月1日の到来をもって市長が当該日に議会を招集したものとみなすようになる。条例が具体的に定める「5月1日から~」という通年会期は市議会議員の任期の開始月日を意識しているものと思われる。

 また、通年会期と合わせて、定例日(定期的に会議を開く日)が6月1日、9月1日、12月1日、および2月18日と定められる。条例が具体的に定めるこれらの定例日は現行の定例会の典型的な開会日とおおむね一致する。条例で定例日を定めることは法第102条の2第6項の規定によるものである。

第1条 地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第102条の2第1項の規定に基づき、所沢市議会の会期は、5月1日から翌年の4月30日までとする。
第2条 法第102条の2第6項に規定する定例日は、次のとおりとする。ただし、定例日が所沢市の休日を定める条例(平成元年条例第39号)第1条第1項に規定する市の休日に当たるときは、その日後においてその日に最も近い市の休日でない日を定例日とする。
(1) 6月1日
(2) 9月1日
(3) 12月1日
(4) 2月18日
 (略)

所沢市議会の会期等に関する条例(令和7年5月1日施行)(抄)

第百二条の二 普通地方公共団体の議会は、前条の規定にかかわらず、条例で定めるところにより、定例会及び臨時会とせず、毎年、条例で定める日から翌年の当該日の前日までを会期とすることができる。
 前項の議会は、第四項の規定により招集しなければならないものとされる場合を除き、前項の条例で定める日の到来をもつて、普通地方公共団体の長が当該日にこれを招集したものとみなす。
 (略)
 第一項の議会は、条例で、定期的に会議を開く日(以下「定例日」という。)を定めなければならない。
⑦・⑧ (略)

地方自治法(抄)

「軽易な事項」としての専決処分事項の指定

 通年会期制の導入とあわせて、法第180条第1項の規定が言う「軽易な事項で〔…〕特に指定したもの」として、市長の専決処分事項に次の2つが追加で指定される:

  • 災害または突発的な事故により、緊急に必要な最低限度の経費に係る予算を補正すること。

  • 会計年度末における地方税法等の改正に伴う条例改正を行うこと。ただし、市の裁量の余地がなく、かつ、直ちに施行しなければならないものに限る。

地方自治法(昭和22年法律第67号)第180条第1項の規定により、市長の専決処分事項として、次のとおり指定する。
 法律上市の義務に属する損害賠償額の決定で、その額が100万円以下の額を定めること。ただし、自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第97号)に規定する保険金又は他の損害賠償保険金等により賠償金が補填される事故については、その保険金等の額に100万円を加えた額以下の額とする。
 災害又は突発的な事故により、緊急に必要な最低限度の経費に係る予算を補正すること。
 会計年度末における地方税法(昭和25年法律第226号)等の改正に伴う条例改正を行うこと。ただし、市の裁量の余地がなく、かつ、直ちに施行しなければならないものに限る。

市長の専決処分事項の指定について(令和7年5月1日施行)
(注:については従前の指定(昭和57年3月31日議決)と同内容である。)

第百八十条 普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共団体の長において、これを専決処分にすることができる。
 (略)

地方自治法(抄)

通年会期制の目的は何か

 所沢市議会基本条例も改正され、通年会期制の目的が「市政の課題全般に主体的かつ機動的に対処するため」と明記される。この目的がどのように果たされるのか見ていく。

第2条の2 会期は、市政の課題全般に主体的かつ機動的に対処するため、地方自治法(昭和22年法律第67号)第102条の2第1項の規定による通年の会期とする。
 (略)

所沢市議会基本条例(令和7年5月1日施行)(抄)

機動的(な臨時会議の開会)

 条文の順序とは逆になるが、先に「機動的」をおさえておく。これはざっくり言えば「市議会は常に招集された状態であるため、いつでも臨時会議を開くことができる」ということである。

 市議会は開会に先立って招集される必要がある。現行では通常、定例会であれ臨時会であれ、市長が、原則、開会の7日前までに招集を告示する〔法第101条第1項および第7項〕。言いかえれば、市議会の招集から開会までには少なくとも7日間のタイムラグがある。なお、臨時会については議長も特定の条件下で招集権を持つが〔法第101条第5項〕、招集から開会までのタイムラグは市長が招集する場合と同じであること、また招集に先立つ市長への招集請求の時間も含めるとさらに少なくとも20日間は長くなること〔法第101条第4項〕に注意されたい。

 条例で通年会期制を定めることで、法第102条の2第2項の規定により、解散などの例外的な状況でない限り、通年会期の初日の到来をもって市長が当該日に市議会を招集したものとみなすようになる。あとは議会の権限で、定例日に開く定例会議に限らずいつでも臨時会議を開くことができ、前段落で述べたタイムラグがなくなるというわけだ。

 また、法第102条の2第7項の規定では、通年会期制において市長が臨時会議の開会請求をした場合、議長は7日以内に臨時会議を開かなければならないとされている。このタイムラグも先ほど述べたものと同じかそれより短いものになっており、よりスピーディに議会が開かれるようになることがわかる。

第百二条の二 普通地方公共団体の議会は、前条の規定にかかわらず、条例で定めるところにより、定例会及び臨時会とせず、毎年、条例で定める日から翌年の当該日の前日までを会期とすることができる。
 前項の議会は、第四項の規定により招集しなければならないものとされる場合を除き、前項の条例で定める日の到来をもつて、普通地方公共団体の長が当該日にこれを招集したものとみなす。
③・④・⑤・⑥ (略)
 普通地方公共団体の長は、第一項の議会の議長に対し、会議に付議すべき事件を示して定例日以外の日において会議を開くことを請求することができる。この場合において、議長は、当該請求のあつた日から、都道府県及び市にあつては七日以内、町村にあつては三日以内に会議を開かなければならない。
 (略)

地方自治法(抄)

 他市の事例を見ると、2015(平成27)年から通年会期制を導入した神奈川県厚木市議会は通年会期を1月1日から12月31日までとしており、同年1月6日には臨時会議に相当する最初の会議を開いている。招集から開会までに7日間のタイムラグがあったら実現が難しかった会議だろう。

主体的(な議会の招集)

 法第101条第1項が規定するように、現行の市議会は市長が招集するものである。そして法第102条の2第1項および第2項が規定するとおり、通年会期制の導入後も、みなしとしては、市議会は市長が招集するものであることに変わりはない。しかし通年会期制の導入には条例の制定が必要であり、条例は議会の議決を経て制定されることを鑑みれば、通年会期制は議会の招集権を実質的に長から議会へ移すものと見ることもできるだろう。

 これが「主体的」ということである。すなわち、市長が招集したから集まるのではなく、自らの規律によって集まる市議会への転換である。

法第179条第1項が規定する専決処分との関係

「機動的」や「主体的」についてはまた、(前述した法第180条第1項の規定が言う「軽易な事項で〔…〕特に指定したもの」ではなく、)法第179条第1項が特定の条件下で「できる」規定としている市長の専決処分との関係も見ていく必要がある。その条件のひとつが「普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき」である。これまでの市議会の会議録を見ても「議会を招集する暇(いとま)なく」は当該条件による専決処分の承認の議案における常套句である。

第百七十九条 普通地方公共団体の議会が成立しないとき、第百十三条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき、普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決すべき事件を処分することができる。ただし、第百六十二条の規定による副知事又は副市町村長の選任の同意及び第二百五十二条の二十の二第四項の規定による第二百五十二条の十九第一項に規定する指定都市の総合区長の選任の同意については、この限りでない。
②・③・④ (略)

地方自治法(抄)(強調は引用者による)

 通年会期制の導入後は、議会は(解散などの例外的な状況でない限り)常に招集された状態であるため、前段落で示した条件は成立しない。これにより、市長にとっては法第179条第1項の規定により専決処分できる事件の範囲が狭まる一方で、議会にとってはこれまで市長に専決処分されていたこれらの「議会の議決すべき事件」を、ちゃんと議会で議決できるようになるわけである。

 これは必ずしも一方的に、市長にとってデメリットかつ議会にとってメリットになるわけではない。市長にとって法第179条第1項の規定による専決処分は強い権限であると同時に、議会が不承認とすれば市長に政治的責任が残る重い権限でもある。専決処分するのではなく議会に諮って可決に至れば責任の一端を議会にも負わせることができるわけで、乱暴に言ってしまえば、市長にとって議会は使いようなのだ。それが通年会期制であれば、市長は議会に対して、いわば「いつでも臨時会議を開けるというのなら、さっさと開いてこの事件(予算案、条例案、etc)を議決しろや」的な姿勢で臨むこともできるわけである。

 また、議会にとっては、これまで市長により専決処分されていたような事件の一部も議案として審議「する」ことになる。もちろんそれは議会の本筋ではあるのだが、同時に法第102条の2第7項の規定として、市長から臨時会議の開会請求があった場合には7日以内に臨時会議を開くことにも応じなければならない。さもなくば最悪、法第179条第1項が規定する、前述の条件とは別の(実質的に議会の責任が問われる)条件下での専決処分を市長に許すことにもなりかねない。通年会期制は議会の権限を拡大すると同時に責務を拡大するものでもあるのだ。

通年会期制の導入に対する所感

議会の最高機関性への志向

 ここでいったん筆者の所感を述べたい。私は通年会期制の導入に強く賛成である。その理由は「機動的」よりはむしろ「主体的」による(法第102条の2第2項の規定を用いている)ところが大きい。通年会期制は市における議会を最高機関に近づけるものであり、そして私は議会こそが市の最高機関であるべきだと考えているからだ。

 国家においては日本国憲法第41条が、国会こそが国権の最高機関であることを定めている。しかし自治体の議会については、地方自治法にそのような定めはない。そして法101条第1項が規定するように議会は長が招集するものであること、また法179条第1項が規定するように長は(一定の条件かつ範囲とはいえ)専決処分ができることから、現実的には長が主で議会が従になっている構造が長らく続いてきた。もちろん、国家における議院内閣制に対して、地方自治体における二元代表制(議員だけでなく長もまた公選されること)が、その構造を正当化してきた面もあるだろう。

 しかし議院内閣制であれ二元代表制であれ、議会は立法府であると同時に『言論の府』でもある。人間社会の進歩は言論の蓄積にこそある、と私は信ずるところである。そして市議会は公選された議員も市長も集う場所であるから、市における最高の『言論の府』と言って差し支えないだろう。また、その言論は実際に会議録として蓄積されており、また広く公開されていて市民もアクセスできることから、議員も市民も含めた我ら全員がいわゆる「巨人の肩の上に立つ」ための基礎になっている。かような営みを行う議会こそが、私は市の最高機関であるべきだと考えるのだ。(だからこそ、パブコメにおいて、議会を――我らが寄って立つ礎を――軽んじる意見が散見されたことに、私は同じ市民として本当に悲しみを禁じ得ない。)

公権力の分散による暴走の抑制

 議会の最高機関性への志向と同時に、通年会期制はまた、市長や議会といった公権力を監視する市民の立場としても歓迎したい。前述したように、これまでは長の権限がいささか強かった。議会が責務とともに権限を引き受けることは、公権力を適切な形で分散し、その暴走を抑制する効果がある。長の暴走として私が思い出すのは、2008年からの鹿児島県阿久根市(特に2010年8月25日26日の臨時会がすさまじい)や、最近では2023年の広島県安芸高田市(2023年6月12日の臨時会を参照)の事例である。いずれも専決処分が市長と議会の対立を、そして市政の混乱を生み、今もなお緊張を残し続けている。かような混乱を招くことは市民の不利益とはなっても利益とはならないことから、失敗に学んでその芽を事前に摘んでおくことは、あらゆる地方自治体において正当である。市民にとって通年会期制は手続き的に conservative な公権力を実現するための手段でもあるのだ。

前市長や議員4名に対する苦言

 さて、所感の最後に、私は市民として苦言を2つ述べなければならない。ひとつは執行部、特に前市長に対してである。今回の通年会期制の導入にあたっては2022年12月26日から2023年1月26日にかけてパブリックコメント手続が行われたところ、市の幹部職員(意見No.69)や前市長=当時の市長(No.70)も意見を寄せることとなった。これは「広く一般の意見を求め」ること(行政手続法第39条)が趣旨であるパブコメ制度においては極めて異例であり、あるいはもはや異常である、と市民として言わざるを得ない。

 このパブコメ手続きにおいてはまた、当時の市長が2023年1月22日に自身の Facebook において、所沢市議会の通年会期制の導入に反対する旨の他者の投稿を「転記・シェア」したことも、残念ながら踏まえる必要があるだろう。当該「転記・シェア」はこの記事の公開時点では閲覧できない(他の投稿は今なお閲覧できるにもかかわらず)が、2023年11月30日時点で私が閲覧してローカル保存したものがあるので、正しい議論のために次のとおり共有する。

 私が論じたように、市長にとって議会は使いようである。議決という手続きによる合意形成は市政をより安定的に進める上で、議会だけでなく市長にとっても利がある。市長には通年会期制の趣旨をしっかりと理解した上で、議会とともに市政の諸問題を解決していただきたいものである。

 もうひとつの苦言は議会、特に4名の議員に対してである(この記事ではあえて明記しないが、12月定例会の審議結果を見れば分かる)。記事の冒頭で「表決に加わった」議員全員の賛成とわざわざと書いたのは、直前まで出席していたにもかかわらず、その4名は退出して表決に加わらなかったからである(私はその様子を当日の傍聴席からしっかりと見ていたぞ)。いずれも現在第1期の議員であり、通年会期制の導入についての大半の議論は前の期までに行われていたため実質的に関わっていなかったことは言い訳として考えられるだろうが、第1期の議員は彼/女ら以外にもいることは念頭に置くべきだろう。また、議論に関わっていなかったとしても、これまでの経緯や議論を調べた上で賛否を固めることはできるだろう(例えば私がこの記事で実践したように)。

 まさに議会のことでありながら議員として賛否の表明さえしなかった(賛であれ否であれ表決に加わらず、また討論も行わなかった)4名に対して、私は残念だと言わざるを得ない。通年会期制の導入は議会改革の終わりではなくまさに始まりであり、真の改革は市民の厳しい監視のもとでこそ実現される。そして市民は、市長のことはもちろん、議会や議員のことも監視していることを忘れないでいただきたい。

通年会期制の運用

 最後に、通年会期制の運用を規定する諸条例の改正を見ていこう。

 会議の種類は定例会議および臨時会議となる〔会議規則第4条〕。現行の「~会」と通年会期制での「~会議」の違いに注意されたい。

 定例会条例は廃止となり、閉会中の文書質問の規定〔議会基本条例第14条〕も削除される。定例会議や臨時会議は個々に開閉されるが、議会自体は通年で開かれており、議会の閉会中という概念が(解散などの例外的な状況を除いて)なくなるためである。また、会期の延長および議決による閉会の規定も削除される〔会議規則第5条および6条〕。議会の議決で会期を決めることがなくなり、また通年会期の途中で議会自体が閉会することもなくなるためである。

 開閉、一義不再議、本会議での発言の取消しまたは訂正、および会議録の記載事項は定例会議や臨時会議ごとの運用となる〔会議規則第7条、第14条、第64条、および第83条第1項第1号〕。また、「議会の議員の議員報酬及び費用弁償等に関する条例」は、定例会を定例会議に改める形となる〔同条例第5条第3項〕。このあたりは現在の定例会や臨時会を踏襲するように見える。

 委員会での継続審査は通年会期ごとの運用となる〔会議規則第109条〕。現在は定例会ごとに運用しているため、年数回とはいえ多少の省力化になるか。また、委員会での発言の取消しまたは訂正は「その発言のあった会議中に限り」できることが明記される〔会議規則第121条〕。これは通年会期制がらみというよりは、現行の運用を明文化した改正のように見える。

 前述した法第180条第1項の規定が言う「軽易な事項」として指定された専決処分事項については、一見した限りでは通年会期制でも必要になる事項をできるだけ狭く指定していて妥当に見えるが、「最低限度」や「市の裁量の余地がなく」については個別具体的な事案を見ていく必要があるだろう。特に地方税法の改正にともなう条例改正については、条文を素直に読む限りでは、一定税率のものに限定されると思われる。

 運用の細部については通年会期制の導入までに(あと1年と少しの間に)、執行部とともに詰めていくのだろう。通年会期制を導入する自治体は所沢市が初めてではないわけで、前例の失敗や成功に学べることはたくさんあるはずだ。通年会期制がらみに限らず、議会から執行部に対する「配慮」は現時点でも(私がこれまで市議会を傍聴した日に議場外で事務局職員などの動きを見てきた限りでは)なされているように見えるので、私はそれほど心配していない。

   ◇

 今はまず、通年会期制を「やる」か「やらない」かについて「やる」と舵を切った所沢市議会を、私は素直に評価したい。そして「どう」やるかについて、およびやったことの効果については、引き続き議会を見ていきたいと思うし、他の市民も興味を持って監視してくれれば嬉しく思う。大きな権能と重い責務を引き受けた所沢市議会が、それに恥じない営みをしてくれることを信じて、この記事を終えたいと思う。

参考文献