所沢市議会でLGBT請願が採択された

 所沢市議会 の 平成31年第1回定例会 において、請願「所沢市におけるパートナーシップの公的認証と性的少数者に関する諸問題への取組に関する請願」が全会一致で採択された[1]。レインボーさいたまの会によれば、同様の請願・陳情について「埼玉県はこれで10自治体が採択」とのこと。

 所沢市議会は本会議のライブ中継や録画中継が ウェブで公開されており、平成31年第1回定例会の録画中継も既に公開されている。話題の請願に関する録画中継は以下から見られる。

▶ [02:08-] 総務経済常任委員長報告 請願第1号 (平成31年第1回定例会 ー 03月28日 常任委員長報告・質疑)
▶ [33:38-] 採決 請願第1号 (平成31年第1回定例会 ー 03月29日 討論・採決)

 録画中継の委員長報告では、請願者による請願の趣旨についての意見が要約なしで報告されている。委員会の議事録[2]に記されている内容と同じだが、話し言葉で聞くと請願者がこれまで置かれてきた状況が真に迫ってくる。また採決では、他の議案と比べて、議長の声に力が入っているように聞こえた。

他の9自治体についても調べてみた

 所沢市は埼玉県内で10自治体目の採択ということで、所沢市より前に採択した9自治体 (毛呂山町、飯能市、川越市、さいたま市、和光市、坂戸市、狭山市、富士見市、蕨市) についても調べてみた。通しで見てみると、自治体によって討論があったりなかったり、党派が同じでも自治体によって賛否が異なることがあったりと、なかなか興味深い。

 私の目をひいたのは3つの自治体だ。まず毛呂山町。平成30年6月定例会において請願を起立多数 (賛成7、反対5、退席1) により採択している。10自治体の中では最初の採択であり、また全国の町村会議でも初の採択とのことだが、賛否は他の9自治体と比べて大きく分かれている。本会議では 反対討論が1件、賛成討論が3件 あった。賛否の詳細と討論の概要は『もろやま議会だより 101号』[3]にて報告されている。

 次に坂戸市。平成30年9月定例会において請願を 異議なしにより採択 しているが、平成30年6月定例会では類似の前請願を 起立少数 (賛成6名) により不採択 としていた。6月と9月の相違点について、9月定例会の委員会 では「請願の内容を一点に絞らせていただいた」という質疑がなされている。その結果か、6月定例会では 委員会 でも 本会議 でもなされた「現時点では本請願は不採択とすべき」との反対討論が、9月定例会ではなされなかった。

 最後に狭山市。平成30年9月定例会において請願[4]を 起立総員により採択 している。特筆すべきは紹介議員。全6会派と無会派からひとりずつ、合計7名が紹介議員になっている。

改めて所沢市議会を見てみると

 さて、他の自治体を調べていて感じたことは、所沢市議会の委員長報告は極めて画期的ではなかろうか、ということ。請願者による請願の趣旨についての意見が要約なしで報告された議会は、他の9自治体の中には見つけられなかったのだ (そもそも請願者を参考人として招致した議会もわずかだった)。また、過去の所沢市議会においても、私が 会議録検索システム で平成21年から平成30年までの議事録をキーワード「要約」で検索した限り、請願や陳情において同様の要約なしの報告は見つけられなかった。

 これは、切々とした言葉が人を、そして議会を動かしたことのあらわれなのかもしれない。あるいは「理は情のみによって立つべからず」が真であると同時に「情なくば理は立たず」もまた真である、ということか。いずれにせよ、これは天下に誇るべき合意形成であると感じた。請願はゴールではなくスタートである。誰もが生きやすい社会が現実のものとなるよう、引き続き所沢市政をウォッチしていきたい。

資料リンク

・[1] [XLS] 所沢市議会 請願・陳情の審議結果 平成31年第1回定例会 (掲載ページ)
・[2] [PDF] 所沢市議会 総務経済常任委員会会議記録 平成31年3月14日 (掲載ページ)
・[3] [PDF] もろやま議会だより 101号 (掲載ページ)
・[4] [PDF] 狭山市におけるパートナーシップの公的認証と性的少数者に関する諸問題への取り組みに関する請願 (掲載ページ)