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九頭竜大社(京都・八瀬)【日本弁天巡礼】

日本で広く信仰されている女神・弁財天(インド名:サラスヴァティ)。日本各地の弁財天信仰の軌跡をたどるこのシリーズ、【日本弁天巡礼】。

今回は、京都・八瀬エリア――比叡山麓の高野川沿いに建つ神社、九頭竜大社をリポートする。

一般的に、神社というと数百年の歴史があると考えがちではないだろうか。この九頭竜大社の発祥は、昭和、しかも戦後である。この点、本シリーズで過去に取り上げた東京都内の「漆坊弁財天」を想起させるものがある。

同神社のホームページ(引用元Webページはこちら)によれば、ことの起こりは昭和29年(西暦1954年)11月24日。御祭神である九頭竜弁財天大神が、大社の開祖・大西正治朗(故人)の夢枕に立ち、「汝の身を社にする。無限に人を救う。奇蹟を以て即座に守護を与える。神は人を救って神界に上る」との神託を受け、京都・八瀬の地に小さな祠を建てたという。

御祭神・九頭竜弁財天大神は、「諸竜神の中でも別格の存在である『九頭竜』のとてつもなく大きなお力を持たれた弁財天様」であるとする。

■独自のお参りのスタイルが面白い

九頭竜大社の本殿。写真の手前右に見えるパネルに、独特のお参りの作法が説明されている

神社境内の裏側には林があり、滝が流れ、この土地ならではの自然の豊かさが感じられる。小ぶりな本殿ではあるが、豊かな自然をバックに眺めると実際の大きさ以上の存在感がある。

この九頭竜大社の最大の特徴は、その独特のお参りの作法である。「本殿を時計回りに9回まわり巡拝する」という方法が発祥当時から伝わっている(巡拝の作法はこちらの公式ページの動画で確認できる)。

九頭竜大社に参拝する人々の層は幅広く、例えば経済界ではニデック(日本電産)の創業者、永守重信氏がこちらの信者相談役となっているそうだ。九頭竜大社の公式ページに転載されている同氏のブログによれば、創業間もなくの重要な投資判断の機会、あるいは経営危機の際に、「大社を開いた教祖さん(ママ、おそらく大西正治朗氏)」を通じて受け取った啓示により助けられた、とのことである。

現役の経営者で、自身の霊的な体験をここまであからさまに打ち明けるケースは、かなり珍しいといえる。それほどに同氏がこの神社に対して抱いている感謝の気持ちは強いのであろう。

永守氏だけでなく、ロックミュージシャンや、近年カウンセラーや作家として活躍している人物もここを参拝し、作品を奉納している。なお、隣接する雅楽殿には、近年奉納されたという白竜の絵が飾られている。迫力ある作品だ。

当たり前のことだが、功徳は神頼みだけでは得られない。心から「これをやろう」と志せる仕事をしている中でやってくるはず。筆者も自らの仕事に励もうと決めた次第である。

■氏名入りの限定お守りも

ちなみに筆者が九頭竜大社を訪問した時期は、「特別御守」という期間限定のお守りを販売している時期だった。

こちらのお守りは、自身の名前を墨で書いて入れていただける。価格は800円。毎年11月24日に行われる「秋季大祭」の後から授けられる。筆者は遠方在住なので、申し込んだ後に送付していただいた(郵送料は別途)。

こちらは特別御守用のカバー(九頭竜大社にて別売、300円)。中には氏名が墨書きされた特別御守が入っている

この九頭竜大社が放つ雰囲気は独特なものがある。人によっては、参拝作法も含めて、少し戸惑うところがあるかもしれない。

他方、筆者が訪問した時、女性のグループが「初めて来た。こんな神社さんがあるなんて知らなかったが、何だか気になって」と社務所の担当者に話しているのを耳にした。

おそらく、この九頭竜大社の魅力は、近年のパワースポットブームの勢い以上に、人が心の奥底に持っている、普遍的な偉大なるものへの信仰心が形成しているのではないか。

そうした普遍的な偉大なるものへの尊敬・畏敬の思いが持てること、もしかしたらそれそのものが、九頭竜弁財天が人々にもたらす愛なのかもしれない。

【データ】
九頭竜大社、〒601-1253 京都市左京区八瀬近衛町681

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