10行日記:枕草子「水晶のかけら散る」

家事の合間、バスの待ち時間中にも、隙あらば電子書籍で「枕草子」を読む。
電子図書館という便利なものがあって、スマートフォンから貸出申請をすれば、期限内はいつでも書籍にアクセスできるのだ。
ひょんなことがあって、「枕草子」から特に好きなくだりの一つを紹介したい。
第二百十八段に(拙訳で恐縮だが、)こうある。

「月のとても明るい夜に、牛車で川を渡ると、牛の歩みごとに、水晶が砕けるように水飛沫が散るのはなんとも素敵だ」

「枕草子」第二百十八段

時々行くカフェで軽食を取っていたら、後ろの方の席のお客さんがグラスを落としてしまったようだ。
ガラスが粉々に割れる涼やかな音を聞いて、青みを帯びた水飛沫が四方に散るイメージが目に浮かぶ。
――水晶が砕ける時は、こんな音がするだろうか。
ごめんなさい、ごめんなさい、と恐縮しきりのお客さんと、お怪我はありませんか、と駆け寄る店主の声を聞きながら思った。
そのカフェでは紙の書籍の源氏物語の現代語訳を開いていた。現在、頭の中はとにかく平安文学でいっぱいだ。

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