見出し画像

【著作権】写真は著作物?どこからがパクリ? part1/2

ざっくりした結論


⑴ 撮影者の個性が現れていれば著作物にもあたり得る。
⑵ 著作物と認められるかどうかについては微妙な判断だが、裁判例から相場観は掴める。

そもそも著作物って?

著作権法上、著作物は以下のように定義されています。

【著作権法2条1項1号】
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

このうち重要なのは、「思想または感情を創作的に表現したもの」(=創作性)という要件です。ざっくりいうと、創作者(著作者)の「何らかの個性が現れている」といったイメージですね。

自分の著作物の著作権を侵害されると(パクられると)、侵害者(パクった人)に対して損害賠償請求(民法709条)や差止請求(著作権法112条)をすることができます。

写真の場合はどうなの?

写真に撮影者の個性が現れていれば、著作権が発生し得ます。そこで気になるのが、写真の個性って何?って話です。

裁判例では、次のように言われていたりします。

「写真は、被写体の選択・組合わせ・配置、構図・カメラアングルの設定、シャッターチャンスの捕捉、被写体と光線との関係(順行、逆光、斜光等)、陰影の付け方、色彩の配合、部分の強調・省略、背景等の諸要素を総合してなる一つの表現である。」

知財高判平成18.3.29 判タ1234号295頁(スメルゲット事件)

ここで言及されているような、構図やアングル、シャッターチャンス等について、撮影者の何らかの個性が表れていれば、写真も著作物たり得るのです。

例えば、「お城が迫力あるものとして映るように、地面に近いところからカメラを構えて下から撮影した」という写真であれば、構図やアングルに個性が表れていると言えそうですよね。また、「上流から流れて来る船がちょうど中心に来るようにタイミングをうかがってシャッターを押した」という写真であれば、シャッターチャンスの捕捉に個性が表れていると言えそうです。

なお、この裁判例(スメルゲット事件)は、著作物性が争いになった写真について、「創作性の程度は極めて低いものであって、著作物性を肯定し得る限界事例に近いものといわざるを得ない」とまで判示しています。
どういった写真の著作物性が争われたかというと、「ホームページで商品を広告販売するために撮影された写真」です。商品を紹介するような写真ですので、商品のありのままの姿を撮影するものにすぎず、個性が表れにくい類型なのかも知れません。

逆に、著作物とはいえない写真はあるの?

著作物の要件たる「創作性」とは、「何らかの個性の表れ」であって、高度の独創性が要求されるものではありません(「子供が描いた絵」にも創作性が認められ得ます。)。

そうだとすれば、逆に、個性が表れていない、著作物とはいえない写真なんてあるの?という疑問が生まれます。

写真に限らず、何らかの「個性」とは、「選択の幅」と説明されたりもします。逆にいうと、以下のように選択の幅が少ない類型の場合、著作物とは認められにくいです。

【設計図】
「作図上の表現方法については、一般に建築設計図面は、建物の建築を施工する工務店等が設計者の意図したとおり施工できるように建物の具体的な構造を通常の製図法によって表現したものであって、建築に関する基本的な知識を有する施工担当者であれば誰でも理解できる共通のルールに従って表現されているのが通常であり,作図上の表現方法の選択の幅はほとんどないといわざるを得ない」

知財高判平成27.5.25(メゾンA事件)

【裁判の傍聴記(インターネット上で公開したもの)】
「原告傍聴記における証言内容を記述した部分・・・は、証人が実際に証言した内容を原 告が聴取したとおり記述したか、又は仮に要約したものであったとしても ごくありふれた方法で要約したものであるから、原告の個性が表れている部分はなく、創作性を認めることはできない。」
「原告の主張する創意工夫については、経歴部分の表現は事実の伝達にすぎず、表現の選択の幅が狭いので創作性が認められないのは前記のとおりであるし、実際の実際の証言の順序を入れ替えたり,固有名詞を省略したことが、原告の個性の発揮と評価できるほどの選択又は配列上の工夫ということはできない。」

知財高判平成20.7.17(ライブドア裁判傍聴記事件 ※発信者情報開示請求事件)

写真でいうと、平面の物を撮影した写真については、真正面から撮影するしか選択の幅がないことが多いため、著作物とは認められにくいです。
逆に、立体物を写した写真については、画角やシャッターチャンス、光線と被写体の関係等に個性(選択の幅)が認められることがほとんどなので、著作物と認められることが多いです。

裁判例から相場観を掴む

ここまで述べたような著作物性の基準を踏まえても、ある写真が著作物といえるのか(個性が表れているのか)という判断は難しいです。
この記事で紹介したもの以外にも、写真の著作物性が争われた事案は多々ありますので、そういった裁判例を参考にすることで、ある程度見立てがつく場合もあります。
弁護士に依頼すれば、裁判例調査も含め、専門的な意見を受けることができます。

ここまでのまとめ

写真については、立体の物を被写体にしているのであれば、余程選択の余地が乏しい場合でない限り、著作物と認められる可能性が高いです。
本記事のPart2では、写真に著作物性が認められたとして、それがパクリになるか(複製権侵害、翻案権侵害になるか)について書きたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?