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シティーライツ

 昔、お店を経営していたとき、店の目の前には馬鹿馬鹿しくなるほど値段の高い高層マンションがあった。明け方にゴミを捨てに出ると、いつも見下ろされている気がしていた。あの部屋を一つ買うために俺は一体何杯の酒を注がねばならないのだ、というようなことを考え始めると気持ちが暗くなるので、そういうときはいつも店のカウンターに戻ってコーヒーを飲んだ。仕事の後に酒は呑まない主義だった。酒を売る仕事をしていても自分の酒は呑む気にならないし、仕事帰りに六本木あたりで呑んでいるといつも辛い気持ちになった。路上で何かを商う黒人が「欲しいものはないか」と声をかけてくる。金が欲しいと言えばいなくなる感じのいい黒人だ。

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発達障害ライフハックのような実用文章ではなく、僕がライフワークとして書きたい散文、あるいは詩に寄っていくような文章を書いております。いろいろあって、「善い文章」を目指して書くようになりました。ご興味ありましたら是非。

玉雑記

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