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働ける障害者、働けない障害者、それから健常な人たちと、夜が明らむ前に。

 障害者の分際でこんなことを言うと匿名SNSなんかではすごく怒られるのだけれど、僕にだって欲しいものはあった。都心のタワマンなんて言わないし、イタリアのスポーツカーなんて言わない。ただ、住宅ローンを組んで家を建ててみたかったし、家族だって欲しかった。もちろん、僕らの生まれた時代はすごく不景気だったからこれが「人並み」なんて言わない。健常者でもこの水準に辿り着けない人がたくさんいるわけで。もちろんそれはわかっているのだけれど、「ふつうの生活」に対する憧れは僕の中にずっとあって、だから本を二冊書いた。結局妻と籍を入れなかったのは吉と出たし、僕みたいな人間がそんなことを望むべきではなかったんだろうな、と思う。

「発達障害者でも、なんとか健常者の中に混じって働いていくため」の本。ある意味で、僕の果たせざる願望を詰め込んだノウハウ書。この季節になると、毎年「あなたの本を読んで頑張ったら上手く行きました」みたいな報告をいただく。とてもうれしい。高校を中退して絶望していたところにたまたま僕の本を読んで、高認を取って大学に入り院を出て、新卒で志望企業に就職出来た。これはもちろん、僕の「おかげ」なんかじゃない。99.99%は本人の努力で、僕の本にぶつからなくても別の場所から必要な知識を得て、同じ結果に辿り着けていたと思う。ただ、0.001%くらい役に立てていたなら、本当にうれしい。頑張った甲斐があったな、と思う。ありがとうございます。

 一方そんな本を書いた僕はといえば、「2冊目を書き上げた時点で活動を止めて、マトモな仕事を探すのが正解だったかもしれない」なんてことを考えるくらいには弱っていて、もう六日眠れていない。なんだっけ、youtubeで最近流行った曲があったよね。六日寝ていないし、三日食ってない。小袋に入った半透明の埃(何のメタファなんだろう? ぜんぜんわからないな)のせいで、20年ほど狭い部屋に座って人生を考える機会を得たことに心から感謝する歌。なかなか胸に迫るものがあるけれど、「自業自得」ってのは結構救いのある話で、もちろん僕の現状は僕の人生から見て100%僕の責任(人生に対する責任を自分以外の誰がとってくれるというのだろう?)であって、それ以外ではない。六日眠っていない人間の形相は、大体薬物中毒者と同じ感じになるらしくて、道を歩いていると職務質問に合う頻度が増えた。というか、この三日で4回のスコアが出た。きちんと仕事をしている警察官もいるんだなぁ、と思う。薬物中毒者を捕まえるといい成績になると聞くし、がっかりさせて申し訳ない。僕はただのひどい不眠症と鬱を抱えて、足を引きずって歩き回ってる障害者なんです。ごめんなさい。

 それはそれとして、障害をクローズにして働く障害者は個人情報を盾に取られたら反撃出来ないだろう(大体の人はそうだと思うよ、実際)という戦略に加えて、こちらが肚を括って反撃に出たら今度は「個人情報をぶちまける」という素晴らしい戦略を展開してくれた御仁には心から感謝している。そうでもしてもらわないと、ここまで腹を括ることは出来なかった。身体が動くうちは「いざとなればまた石膏ボードを担げばいい」なんて思っていたけれど、病気もやってしまったので最早ドカタ働きも出来やしない。文章の仕事が出来ないとなれば、とりあえず破産することにはなる。

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発達障害ライフハックのような実用文章ではなく、僕がライフワークとして書きたい散文、あるいは詩に寄っていくような文章を書いております。いろいろあって、「善い文章」を目指して書くようになりました。ご興味ありましたら是非。

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