煉獄の変奏、あるいは一切の希望を捨てよ(下)


 人肉料理を一緒に食べてから、鞠端はあっさりと俊月への警戒心を解いた。最初は逃げ出さないかと見張っていたはずなのに、殆ど無罪放免だった。
「外出ていいからさ、買い物とかも自分で行けよ。俺料理とかよくわかんないし」
 鞠端があっさりとそう言うのを聞いて、いよいよ戻れないところまで来たな、とすら思った。鞠端の頭の中にはもう、俊月が警察に駆け込む心配なんて欠片もないのだろう。人を食べた人間が警察に駆け込むことなんて想像もつかない。
 勿論、俊月の側もそうだった。警察に駆け込むことなど考えられない。ある意味でこれは新しい一線であり、そこを踏み越えた俊月は司法の網からすっぽり抜け落ちて然るべきだった。

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