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オーストラリアデー

1月26日は、オーストラリアでは祝日だ。その名も、オーストラリア・デー。

建国記念日…と思ってしまう人もいるがそうではなく、1788年のこの日に、イギリスから来た船団がオーストラリアはシドニーにイギリス国旗を掲げ、正式に植民地(というか流刑地)にした日である。
この日は、街中がお祝いムードになり、色々なイベントが催されるが、昨今はこのオーストラリア・デーも、祝祭一辺倒というわけではない。

というのもやはり、この日は、ずっと昔からこの地で生活をしていた先住民にとっては最悪な日であるからだ。

下の記事を参照してもらえば、その経緯が理解できるかと思う。

確かにそうだなあ、と思う反面、最近オーストラリア人になった僕としては、その事実を祝う日があってもいいよなあ、とも思う。

この日をどう捉え、祝うか祝わないか、というのはけっこうオーストラリア国民にとっては悩ましいというか、選択を迫られるものになりつつあり、ひと昔前みたいに、「オーストラリアデー!パーティーターイム!」と馬鹿騒ぎするような単純なものではなくなっている。

で、僕は何をしたかというと…

オーストラリアデー・ランチクルーズなるものに友達と乗ってきました(おい)。

こんなに長い年数オーストラリアに住んでいるが、実はこの日にこういうクルーズに乗るのは今回が初めてだし、しかも2年前に晴れてオーストラリア人になったので、正々堂々と(?)この日を祝うチャンスだし…と色々言い訳をしております。

船のデッキもオーストラリアの国旗で飾り付けられていて、お祭りムードを醸し出している。

ウェルカムドリンクのスパークリングワインをいただき、オーストラリアを代表するお菓子、ラミントンを食べる。

ラミントンは、スポンジケーキの外側にココナッツがまぶされていて、中のふわふわと外のシャキシャキのコントラストがいい感じです。

食べ物は3コースで、それぞれ2種類のチョイスがあった。

食べ物はこういう船内で食べるものとしてはちゃんとしたクオリティで、メインのステーキも美味しく頂いた。

興味深く思ったのは、乗船しているお客さんのほとんどが、いわゆる白人オーストラリア人(最近の移民ではなくて、もう何代もこの地に住んでいて、いわゆるオージー英語を話す人達)だったことだ。普段はこういう場所に乗っていそうな観光客や、アジア系の人はほとんどいなかった。

やっぱり、この日をポジティブに祝いたい人は、こういう人達なんだなあ、というのが可視化できて、「なるほどなあ…」と思った。あ、別に非難しているわけではありませんし、全然アリだと思う。

この人たちや、その親などは、第一次、第二次大戦で実際オーストラリアのために戦ってそうだし、その後のオーストラリアの発展にもこの地で関わってきた人が多いはず。そういう人たちに、「オーストラリアデーを祝うなんて…」と言う権利は、たかだか20何年か前にこの地に来た僕にはないと思う。

シドニー湾は、いつにもまして船が繰り出していて祝祭的な雰囲気が満ち溢れている。

21発の号砲が鳴らされる。

しばらくすると、空の彼方から空軍のジェット機が編隊でやってきて、アクロバット飛行を何回も繰り広げた。

その後も、普段はゆっくりと湾内を行き来しているフェリーが湾内を爆走するレース、帆船のパレードなどがあり、やはりこの日は特別なんだなあと実感した。

というわけで、とても楽しくクルーズを楽しんだのだが(お酒もいっぱい飲めたし)、やはりこの日の扱い、難しいよなあ…。

個人的には、誰もが傷つかないニュートラルな日に変えて祝えないものかなあ、と思うが、そうするオーストラリア・デーを設ける意義がなくなる気もする。

また、経緯はどうあれ、この国は侵略者であるイギリスの統治システムでここまで来たわけで、客観的に見ても、まあ成功しているというか、上手く国としてやってきていると思う。

そのために努力してきた人たちの苦労を考慮に入れないのも失礼だよなあ、とも思う。

いやもう、色々考えさせられて頭が混乱するわ…ホント。

でも、こうやって皆が色々考えるのは悪いことではないし、こういうところも含めてこの国はいいよなあ、と思うのも事実なのである。

だから、能天気に「ハッピーオーストラリアデー!」とは言わないけど、この国の有り様について思索しつつもこの国の一員に加わったことの喜びを感じる日にしよう、と個人的には思う。


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