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〜タバコの楽園(2)〜

(1)はこちら

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調べてみたところ、みんな「タバコの楽園だ」ということは口を揃えていうものの、他のことは全く教えてくれない。
外国人にはそれ以外のことをいうなと教育されているかのようだ。

悩みに悩んだ(もちろんタバコをばかばかふかしながら)私は、それではと外国人の仲間に声をかけてみた。
短期滞在している人たちはあまり知らないようだったが、5件目のバーに、長期滞在の観光客が1人いて、色々と教えてくれた。

彼はどうやら、長期滞在していながらもタバコを1本も吸わないようで、禁煙部屋をとっている変わり者らしかった。
彼曰く、この国は、タバコ以外の全てが高い。全てというのは生活必需品を除く、娯楽についてで、音楽は流すだけでも金が取られるし、テレビなんかも生活に必要な情報以外を観ようものなら金が要るという有様らしい。

なんだか、怖くなった私は、この国は楽園ではないのか…??という話を聞こうとした。
ところが、彼は「それ以上は…」という顔をしたあとに無言で立ち去った。

全くもって不思議な話だ。
そのあと、5日くらい滞在した私は、彼以上に情報を提供してくれる人がいないという確信を得たので、帰ることにした。

出国手続きをする際、カードの確認がされた。
どうやら私は、45箱くらいは吸っていたらしい。
(自分の国では3箱の値段で済んだので嬉しいあまりだ。)
そして、出国手数料が表示されたのだが、これがなんと、タバコ90箱分のお金を払うこと(もちろんT国の値段)。
さらに、

これからは少しでもT国の情報を漏らそうものなら、このカードについている盗聴器でそれを確認し、安全保障上の攻撃として、貴国に身柄引き渡しを請求する。カードは一生保有すること(捨てた場合は同上の処遇)。

という誓約書を書かされたのだ。

そして、バーの彼が、あれ以上話さなかったのは。彼自身がカードによる盗聴を見抜いていたこと、およびこの国の制度がタバコによって成り立っていることだったのかと関心をして、今この文を書いているわけだ。

私は、T国のカードが財布から見える愛煙家をみるたびに、一体何箱の請求が彼らにきたのかと考えてやまない… 

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