「塔」2017年5月号(月詠)

あくまでも比喩であるから落ちついてくびを切つたりお祈りをする

風花よ 声をひかりに遷しつつ見上げてゐたり冬の鉄橋

稀有といふ語彙からとほい日常の朝ごとに飲む白湯のしづまり

ここだけがやけに明るく人生の急所としてのサービスエリア

ごちそうを逃したやうに週末のフェイスブックを舐め渡したり

おだやかに春につひえる愛憎に名前をつけておけば良かつた

しんどいと云はなくなつた頃からが正念場だと、根菜を煮る

(p.98)

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