「塔」2019年2月号(月詠)

それぞれの靴の終はりに紛れ込む海岸線とわづかな小石

目録に記されてゐる感情のひとつかと思ふわが憎しみも

雨音のわづかに耳にくもる時われはカーテンのうちがはにをりぬ

まだ光つてゐるのか夜景 豆乳をあたためて飲む時のしづまり

いつよりかわが内に潜みふくらめる毛糸玉つひに糸を吐き出す

全身に目玉のひらく感触のまひるせはしき新宿駅は

靴音はわれに形を与へつつ附いて来るなり家のまへまで

(p.22-23)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?