「塔」2018年2月号(月詠)

まつさらな感情ばかり失つて汽水のうへを夕闇の這ふ

やりたいと思ふことよりやりたくはないことばかり 特急通過

満たされてみたかつただけ 抱擁は身体を門の形になして

かなしみが遠くへ凪いでゆくやうに朝のラジオにクラヴサン消ゆ

どの男も先の尖つた革靴を履いてゐて、恥づかしくないのか

上向きの蛇口に口をすすぎつつ冬の日向の公園にゐる

(p.59)

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