「塔」2017年8月号(月詠)

意味深なこゑを残して居なくなる人が五月になると増え出す

此処にゐる私はわたしではなくて幾らでも言ふ御礼くらゐは

あんな奴を信じた俺が馬鹿だつたと言ひ聞かせつつ三田線に乗る

吊り革に酔つ払ひ吊られゐたりしがふと抵抗をやめてしまへり

都市といふことばの虚ろ 人混みに身体を預け慣れてあなたは

寝るために帰る部屋にて積みあがる本と埃とわづかに光

(p.106)

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