未刊歌集『春の遠足』note公開にあたって

未刊歌集『春の遠足』をnoteの有料マガジンとして全篇公開します。


『春の遠足』は、2009年から2014年までの短歌約900首の中から300首を選び、改作を加えた上で2015年7月に第3回現代短歌社賞へ応募し、次席となった、いわゆる「未刊歌集」です。

最初に書誌情報的なものをまとめておくと、まず「現代短歌」2015年12月号に、選考委員(当時)の安田純生さんの手による20首選が掲載。300首全体は、濱松が最初、ホチキス留めの冊子として知人に頒布したり押し付けたりしましたが、その後、龍翔さんと辻聡之さんのお二人のおかげで、文庫本サイズの本を作って頂くことができました。その文庫版もすぐに在庫切れして、最終的に「京都ジャンクション」第10作品集『起点』(2017年1月)に「誌上歌集」として掲載、誌上歌集版も既に頒布終了しました。他に、白石瑞紀さん制作による和綴じ本もあるのですが、これは世界に一冊だけの宝物です。

作品の一部は、下記の「自選30首」から読むことができます。

また、「Ⅲ」に収録した連作「葦毛の時」20首(初出:「穀物」創刊号、2014年11月)に関しては単品で(無料で)読むことができます。『春の遠足』版との異同はありません。


実を言うと、note上での公開は少し前から考えていたことでした。理由は主に2つ。

①Web上でアクセス可能なコンテンツとして自分の作品をまとめてみたかった。

ホチキス留め・文庫・誌上歌集の3つを合わせても発行部数は200いっていないはずです。名刺代わりに自選の歌を、なんてタグが一時期流行りましたが、『春の遠足』は現状、私にとって名刺代わりの作品集です。それだったら、もうちょい誰でも手に届くところに置いといたらどうかね、と思った結果、こういう形を取ることにしました。電子書籍、という手段も一瞬考えましたが、それっぽく編集するための技術がないため断念。ただ、あくまで「コンテンツ」としておきたいため、ブログ等で無料公開にはしたくなかった(活字版を買って読んでくれた人にも示しがつかないし)。noteを選んだのは、「塔」の月詠や過去の評論・エッセイ等をアップしてきたので、ちょっとずつ使い慣れてきた、というのもあります。

②『春の遠足』以降の歌が溜まってきた。

作品管理用のExcelに間違いがなければ、来年早々には『春の遠足』以降の作品が1000首を超えます。未発表のものもほんの少しありますが、「塔」の選歌で落ちた歌は基本的にカウントしていません。『春の遠足』の時もそうでしたが、私は自作を割と平気で捨てるし、徹底して直しを入れて原形を留めなくしてしまうタイプなので、たぶんこの1000首も歌集として編んだら300~400首くらいに落ち着くんだろうな、なんて思っています(ちなみに、タイトルはもう決めています)。そして、その中には『春の遠足』の歌は一首も入らない、ということにふと気づきました。だって、一度まとめちゃったから、作者としては何と言うか、一度ケジメがついちゃったんだもの。それに、『春の遠足』は一冊の中で三年の年月が経過して見えるように、季節に沿って歌を配列をしているため、この配置を崩したくなかった(それ故、作品は必ずしも制作順にはなっていません)。

いわゆる「歌壇」では、自費出版や、ある程度の著者買い取りを前提とした出版がほとんどなので、こうした形での作品公開はひょっとすると、あまり良いものとしては映らないかもしれません。一度、ネット上で公開してしまおうかとTwitterで漏らしたところ、もったいない、という意見を頂いたこともありました。

ですが、名刺代わりと思っている自作のコンテンツを死蔵させておく方が、作者である私にとってはとてももったいないことですし、これ以上、紙の本として歌集を出せない焦りと悔しさで苦しむのも御免だな、とも感じています。評論や時評を書いたところで、著者買い取りをするお金も無い私にとっては一向に、第一歌集というある種のスタートラインに立つことすらできない。

そんな現状が、はっきり言って、だるい。歌集という存在を権威化しそうになる自分のことが何より嫌になる。負のスパイラルに陥って短歌を嫌いになってしまう前に、何とか踏ん切りをつけておきたい。

前例が無いのなら、自分が前例になればいい。それが、今回の作品公開にあたっての私の思いです。今年(2018年)は、合同歌集やアンソロジー的な同人誌が多く見られました。こういうパターンで作品を公開するっていうのも、アリなんではないか、という、これはひとつの試みです。

各章500円で単品でも購入可能ですが、マガジン(1500円)で購入すると、「誌上歌集版のあとがき」、未収録歌篇を集めた「ひまわりの国――『春の遠足』拾遺」、もうひとつのあとがきとも言うべきエッセイ「マサラタウンと松野家」も合わせて読むことができます。

来年で、短歌と出会って10年になります。これからに向かっていくために、私の「これまで」をここに置いておこうと思います。

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濱松哲朗

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